特許権の相続税評価 将来の実施料と残存期間から計算する

親の特許から実施料が入っていた場合、相続税では、すでに発生した未収金と、今後の実施料を生む権利の価値を分けて調べます。過去に開発へ使った費用や、登録の費用が、そのまま特許権の評価額になるわけではありません。
登録の名義、誰が発明を実施するか、契約の残りの期間と収入の見込みを順に整理しましょう。将来の年額を現在の価値へ直す計算例を使い、申告担当へ渡す資料を具体化します。
- 特許の所有者と取得者の実施状況を分ける
- 将来実施料と残存期間から現在価値を計算する
- 補償金合計50万円未満という例外を正しく判定する
個人の特許と会社の特許を登録と契約で区別する

まず、特許原簿や登録事項、ライセンス契約から、故人が特許権を所有していたかを確かめます。発明者の欄に親の名前があっても、権利を会社へ移転済みであれば、親個人の特許権を相続したとは限りません。会社の株式と会社所有の特許権を、個人の遺産として二重に計上しないことが出発点です。
契約では、権利者、実施する相手、対象の特許、対価、期間を読みます。親が所有して他社へ使わせていたのか、取得者自身の事業で実施するのかによって、評価方法の確認先が分かれます。
自ら実施する権利は営業権との関係を確認する
財産評価基本通達145は、特許権又は実施権の取得者が自ら発明を実施している場合、その者の営業権の価額に含めて評価すると定めています。権利を取得する子自身の事業と、親が経営していた別法人の事業を同じものとして読まないでください。
営業権に含める経路であれば、同じ収益を特許権単独の評価と営業権へ重ねないようにします。以下は、その経路ではなく、将来受ける補償金を基に権利を評価する場合の例です。
将来の補償金を各年の見込みへ分ける

通達140の補償金は、その特許権に基づいて将来受ける対価です。契約で定額と定まっていればその条件を確認し、売上連動などで未確定なら、過去の経常的な収入を基に需要や持続性を踏まえて推算します。
たまたま受け取った一度限りの解決金や、別の技術支援の報酬まで、毎年の実施料として繰り返す見込みに入れないようにします。売上の減少や契約終了の見込みがある場合は、その根拠も評価担当へ示してください。
| 確認する資料 | 金額や期間の読み方 | 未確認として残すこと |
|---|---|---|
| ライセンス契約と変更合意 | 定額・歩合、対象特許、支払条件、終了条項 | 更新が未合意なら継続を確定扱いしない |
| 過去の実施料明細 | 通常の実施料と一時金、税控除、対象期間 | 通帳の手取だけで年額を確定しない |
| 実施先の回答や事業資料 | 需要、利用予定、今後の収入の見通し | 希望額と相手が示した見込みを区分 |
| 特許原簿等 | 権利者、残る存続期間、登録の状態 | 発明者と権利者を混同しない |
すでに確定した未収実施料と将来の権利を重ねない
死亡前の利用に対応する実施料が、翌月に入金する契約もあります。死亡時に存在する未収債権と、死亡後の期間に見込む対価を契約・明細で切り分け、同じ金額を両方へ入れないようにします。
残る存続期間の範囲で各年の額を現在価値へ直す

通達143の計算期間は、課税時期から特許の存続期間が終わるまでの年数の範囲内で推算します。残存期間に1年未満の端数があるときは切り捨てるため、残り5年6か月なら、その範囲は5年です。ただし、5年間ずっと収入が続くことまで自動で決まるわけではありません。
たとえば2026年9月の相続で、他社への実施許諾から、今後1年目60万円、2年目40万円、3年目20万円だけを受け取る見込みに合理的な根拠があると仮定します。権利の存続期間はこれより長く、ほかの収入は見込まない例です。
| 将来の年 | 補償金の仮定 | 令和8年9月分の複利現価率 | 現在価値 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 60万円 | 0.985 | 59.10万円 |
| 2年目 | 40万円 | 0.971 | 38.84万円 |
| 3年目 | 20万円 | 0.942 | 18.84万円 |
| 合計 | 120万円 | 各年を別に計算 | 116.78万円 |
計算は60×0.985+40×0.971+20×0.942=116.78万円です。将来の120万円をそのまま足すのでも、3年分の年金現価率を異なる年額へ一括して掛けるのでもありません。ここで使った率は令和8年9月分であり、実際には死亡月と各年数に対応する国税庁の表を確認します。
補償金の合計50万円未満と評価額を区別する
通達144が評価しないとするのは、課税時期後に取得すると見込まれる補償金の合計が50万円未満と認められる権利です。「年額が50万円未満」「割引後の評価額が50万円未満」という条件ではありません。将来合計がちょうど50万円なら、50万円未満の扱いには入りません。
見込みの根拠と評価入力を一緒に申告担当へ渡す

申告担当には、計算結果だけでなく、何を根拠にその年額と期間を見込んだかを一緒に渡します。登録の資料、契約原本と変更合意、過去の通常収入、実施先への確認内容、存続期間、採用した複利表をまとめてください。
実施者と契約の変更があるときは前提を残す
親の死亡後に子が別の使い方へ変える予定なら、死亡時の契約と、取得者自身の実施状況や変更予定を分けて説明します。会社が使っているから個人の権利も当然に会社の営業権へ入る、と省略しないようにします。
見込みがまだ取れない部分は、金額をゼロで確定せず、不足する回答と相談事項を残します。また、権利の移転登録や契約の連絡先変更は、税評価とは別の作業です。評価を計算したことだけで、今後の実施料の受取手続きまで終わったとは扱いません。
相続の資料をそろえる際は、相続税申告に必要な書類 財産別の一覧と集め方や不足時の対応も参考に、今回の判断と全体の申告準備をつなげてください。
ご家族の資料や未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

特許を自分の事業で使う場合も同じ計算ですか
取得者が自ら特許発明を実施する場合は、その者の営業権の価額に含めて評価する取扱いがあります。第三者への実施許諾料による評価と区別します。
年間の実施料が50万円未満なら評価しませんか
年額だけでは判断しません。少額の取扱いは、課税時期後に取得すると見込まれる補償金の合計額が50万円に満たないと認められる場合です。
特許の存続期間が残っていれば全期間の収入を計上しますか
存続期間終了までの年数の範囲内で、需要や持続性等から収入期間を推算します。残存期間の1年未満の端数は切り捨てる規定があります。