定期預金の相続税評価 既経過利息と中途解約額を確かめる

親の定期預金を相続税の財産一覧へ載せるときは、死亡日の元本だけでなく、その日に解約したと仮定した利息も確認します。実際に解約した日や、満期に受け取れる予定額とは違います。
残高証明と利息の資料を並べ、元本、税引前の利息、税相当額、税引後利息を一行ずつ確かめましょう。ここでは通常の円建て定期預金を例に、金融機関の計算を評価額へつなげます。
- 死亡日の仮解約利息を元本へ加えて評価する
- 税引前後の表示と税相当額の二重控除を防ぐ
- 後日の払戻しと死亡時の評価資料を区別する
死亡日に解約するとした場合の利息を調べる

財産評価基本通達203は、課税時期の預入高と、その時に解約するとした場合の既経過利息から源泉所得税相当額を控除した額との合計で、預貯金を評価すると定めています。相続では、死亡日が基準です。
「既経過」は、預け始めてからすでに過ぎた期間を意味します。死亡日までの経過期間について、その日で中途解約するなら金融機関が支払う利息を調べるのであり、死亡後の解約日までの利息を先に申告するものではありません。
小額利息を省略する定めは定期預金に広げない
通達203の注は、定期預金等以外の預貯金で既経過利息が少額なら、預入高だけによる評価を認めています。この対象を定期預金へ広げ、「残高が少ない」「利息が数百円しかない」という理由だけで利息を省略しないようにします。
金融機関へは、死亡日を明示し、元本残高に加え、その日時点での既経過利息を確認したいと伝えます。残高証明に利息の記載があるか、別の計算書になるかは発行形式によるため、書類名だけで取得済みと判断しません。
元本と税引前利息と税相当額を一行に並べる

次の二件は、金融機関が死亡日時点の金額を証明したと仮定する例です。Aは税引前利息と税相当額が分かり、Bは税引後利息が確認できたものとします。証明書からどの数字を使ったかが分かるように残します。
| 通常の円建定期の例 | 死亡日元本 | 利息資料で確認した金額 | 相続税評価額 |
|---|---|---|---|
| A銀行の定期 | 5,000,000円 | 税引前10,000円、税相当額2,031円、税引後7,969円 | 5,007,969円 |
| B銀行の定期 | 3,000,000円 | 税引後2,000円。内訳の資料も保管 | 3,002,000円 |
| 二件の合計 | 8,000,000円 | 税引後利息計9,969円 | 8,009,969円 |
Aの計算は500万円+1万円−2,031円です。税引後7,969円から、さらに税相当額を引くことはしません。また、残高証明の金額に利息が含まれていれば、別の計算書の利息をもう一度足さないようにします。
中途解約利率を満期の表示金利と取り違えない
預入時の広告金利や、満期まで持った場合の利率だけで、上の1万円を作ることはできません。預入日、自動継続日、死亡日と商品条件によって中途解約利率が変わるため、金融機関の計算根拠へ対応させます。
この例の税相当額2,031円は、金融機関が計算したとする仮定です。税率の掛け算を相続人が一括でやり直すと、税の内訳や端数処理、商品・課税条件によって証明額とずれることがあります。実際の申告では各証明の金額を確認します。
相続税の評価額と後日の払戻額を別々に残す

相続手続きの完了が数か月後であれば、その時の払戻明細と死亡日の評価額が違うことがあります。Aを満期まで保有した場合でも、死亡日に仮定した解約利息を調べるという相続税の基準が、後から満期利息へ変わるわけではありません。
国税不服審判所の昭和55年12月12日裁決要旨も、相続人が期限前に解約したか満期まで継続したかにかかわらず、相続開始時の期限前解約利率によるとしています。古い裁決の税率を現在へ流用するのではなく、評価時点を区別する根拠として読みます。
外貨や仕組預金へ普通定期の表を流用しない
本稿の表は通常の円建て定期預金です。外貨であれば円換算の基準、仕組預金等であれば解約条件や商品固有の権利を別に確認します。「定期」と名前が似ているだけで、同じ中途解約計算ができるとは限りません。
その後の実際の利息に関する所得税等の扱いと、死亡時の相続税評価も別制度です。評価に加えた利息を、自分で後の利息から差し引いてよいとはせず、死亡日評価資料と実払戻明細を税務担当へ渡します。
利息資料の基準日と合計を財産一覧へ引き継ぐ

財産一覧には、銀行・支店、口座又は証書番号、預金の種類、死亡日の元本、税引前利息、税相当額、税引後利息、採用した評価額を残します。いずれも同じ基準日の資料かを最後に照合してください。
複数口座の合算では証明の単位をそろえる
一つの口座に複数の預入分がある場合、残高証明は合計、利息計算は預入番号別ということもあります。元本の合計と利息の対象が対応しているかを確認し、一部の利息を漏らしたり、口座の合計と預入別の利息を重ねたりしないようにします。
不足があれば「この口座のうち、どの預入分の、死亡日時点の、税引前又は税引後の金額が分からないか」と具体的に尋ねます。証明の取得、相続税への計上、後日の解約・承継は別の欄にすると、書類が届いた後も作業の残りを追えます。
相続の資料をそろえる際は、相続税申告に必要な書類 財産別の一覧と集め方や不足時の対応も参考に、今回の判断と全体の申告準備をつなげてください。
ご家族の資料や未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

満期になっていない定期預金も利息を加えますか
死亡日に解約した場合に支払いを受けられる既経過利息から税相当額を差し引き、元本へ加算するのが原則です。満期までの将来利息を全て加えるものではありません。
定期預金の利息が少額なら省略できますか
財産評価基本通達203の少額利息に関する簡便な取扱いは、定期預金等以外の預貯金が対象です。定期預金へそのまま広げません。
実際の払戻額が死亡日評価より多ければ申告を直しますか
後日の払戻額と死亡日の仮解約による評価額は、基準日が異なります。増えた理由を利息明細で確認し、死亡時の計算に誤りがあったかと分けて判断します。