個人版事業承継税制とは 対象資産と納税猶予の条件や手続き

個人版事業承継税制は、個人事業の土地、建物、一定の設備などを引き継ぐ後継者について、その資産に対応する贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。会社の株式を対象とする法人版とは、資産の範囲も確認する条件も異なります。
事業用の土地だけなら、小規模宅地等の特例を使う案との比較も必要です。税額の大きさに加えて、後継者が今後も事業を続けるか、対象資産をどこまで引き継げるかから検討します。
- 現金やすべての事業財産が一律に猶予対象になるわけではない
- 土地400平方メートルと建物800平方メートルや設備の対象範囲を確認する
- 事業用の土地特例との併用制限と将来の事業継続負担を比べる
個人版事業承継税制は事業用資産の税金を猶予する

100%は対象資産に対応する税額の納税猶予
青色申告で一定の事業をしていた親から、認定を受けた後継者が対象の事業用資産を引き継ぐ場合に利用を検討します。所定の対象資産はすべて取得することが原則で、好きな設備だけ選んで猶予を受ける仕組みではありません。
対象に対応する税額が猶予されても、取得した預金や自宅など、ほかの財産の税金までゼロになるわけではありません。猶予は免除とも異なり、一定の事由が生じるまで事業継続などの要件を満たす必要があります。
途中で事業用に使わなくなると納税が必要な場合がある
対象資産の処分や事業廃止等で条件を満たさなくなると、税額の全部又は一部と利子税の納付が必要になることがあります。後継者の死亡等の免除事由と、途中終了の扱いを区別します。
承継時に資金が足りない事情だけでなく、近い将来に廃業や設備売却を予定していないかも、最初の検討事項になります。
土地と建物や設備は対象範囲と上限を確認する

前年の青色申告書と資産台帳で対象を特定する
相続の場合は原則として、死亡した年の前年分の事業所得の青色申告書の貸借対照表に計上され、先代事業者の事業用だった一定の資産が対象です。贈与の場合も贈与前年の資料を確認します。
| 資産の種類 | 対象範囲の基本 |
|---|---|
| 宅地等 | 400平方メートルまで |
| 建物 | 床面積800平方メートルまで |
| 一定の減価償却資産 | 固定資産税対象資産や一定の事業用車両等 |
| 預金や売掛金など | この制度の特定事業用資産に当然には含まれない |
後継者が複数なら、面積の上限は各人に別々に400平方メートルずつあるのではなく、各人の取得面積を合計して判定します。
自宅と店舗を兼ねる建物は用途を分ける
店舗兼住宅なら、事業用の部分を資料から区分します。土地の名義が親、建物の名義が配偶者などの場合も、名義と生計関係、事業利用から対象を調べる必要があります。
帳簿価額と相続税評価額は同じではありません。帳簿へ載っているかという対象判定と、税額計算に使う評価の作業を別に進めます。
面積の上限と承継する資産のまとまりを分けて判断する
たとえば店舗の敷地が500平方メートルあっても、制度の土地の限度は原則400平方メートルです。対象になる面積の選択と評価は、どの部分を事業に使い、どの権利を取得するかから確認します。
建物の800平方メートルも敷地面積ではなく床面積の上限です。敷地、建物、設備を一枚の見取図と資産台帳で照合すると、面積の種類や所有者の取り違えを防げます。
後継者と青色申告や事業継続の条件を確認する

不動産貸付業などは一般の商店や製造業と同じに扱わない
不動産貸付業等は対象事業から除かれています。賃貸アパートを親から引き継ぐからという理由だけで、この個人版税制を使えるわけではありません。資産の保有や運用が中心となる事業についても条件を確認します。
青色申告は正規の簿記の原則によるものが求められます。親の申告方式、後継者の事業従事や継続の状況を、その年のチェックシートへ当てはめます。
相続と贈与で後継者に必要な条件を確かめる
生前贈与と死亡後の相続では、取得時期、後継者の年齢、事業従事歴等の条件や認定申請の区分が異なります。「親の事業を手伝っていた」だけで認定されるわけではありません。
過去の年の解説には旧要件が残ることがあるため、現在の様式と一次資料を使います。対象者の条件が一つでも不明なら、計画提出前に都道府県の窓口へ確認してください。
小規模宅地等の特例と比較して計画と申告を進める

事業用宅地の80%減と100%の猶予は単純に大小比較しない
小規模宅地等の特例は、所定の土地の課税価格を減額する制度です。個人版事業承継税制の100%は、土地等に対応する税額を猶予するもので、土地価格の100%を永久に差し引くという意味ではありません。
同じ被相続人から相続した特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例を受ける人がいると、その相続の個人版事業承継税制を利用できない制限があります。家族が別々の資産を取れば自由に併用できるとは限りません。
居住用や貸付用の土地は区分別に調整する
居住用宅地等の特例だけを使う場合と、貸付事業用宅地等の特例も使う場合では制限が異なります。自宅と店舗、貸家が混在する家庭は、土地の区分ごとに面積と取得者を整理してから比較します。
将来の廃業や資産処分も含め、猶予を使う案と土地の減額を使う案の税額・継続条件を並べます。住宅の特例を調べる際も、別居の子が取得する自宅の土地の要件のように取得者ごとの条件を区別してください。
計画の確認と財産を引き継ぐ期限は別になる
2026年10月17日時点の国税庁案内では、個人事業承継計画の提出期間は2028年9月30日まで、対象となる贈与・相続等は2028年12月31日までです。法人版の2027年の期限を個人版へ当てはめないでください。
計画確認のほか、都道府県知事の認定、担保提供、期限内の贈与税又は相続税申告が必要です。計画を出しただけで納税猶予が始まるわけではありません。
資産一覧と承継後の使い方を一緒に相談する
前年の青色申告決算書、固定資産台帳、不動産の登記、資産の配置と用途、後継者の従事状況をそろえます。ほかの相続人が取得する自宅や貸家も、併用制限の判断へ関わります。
猶予を選んだ後は原則3年ごとの継続届出なども続くため、税額試算だけでなく管理担当を決めます。最初に行う作業は、資産台帳へ「誰が引き継ぎ、今後何に使うか」を書き込むことです。
遺産全体の課税価格が分からない場合は、相続税の計算手順で対象資産以外も含めて確認し、猶予を使わない場合の納税額を試算します。
よくある質問

個人事業の預金も納税猶予の対象ですか
すべての事業財産が対象ではありません。所定の宅地、建物、一定の減価償却資産などを、前年の青色申告書と資産台帳で確認します。
小規模宅地等の特例と必ず併用できますか
必ずではありません。特定事業用宅地等の適用者がいる場合などの制限があり、居住用や貸付用の土地も区分ごとに確認します。
個人事業承継計画の提出期限はいつですか
2026年10月17日時点の国税庁案内では2028年9月30日です。贈与や相続等の適用期限2028年12月31日とは分けて管理します。