共有物の管理者を選ぶとき 持分の決定と任せる権限を整理する

相続後に共有となったアパートで、家賃や修繕の連絡先を一人にまとめたい場合、民法の「共有物の管理者」を選ぶ方法があります。ただし、管理会社へ業務を頼むことと、法律上の管理者を選任することは同じではありません。
ここでは遺産分割が済み、母と二人の子が持分を持つ不動産を例にします。選ぶ人の決定、任せる行為、共有者への報告を分けて、管理を始める際の書面を整理します。
- 人数ではなく持分で過半数を確かめる方法
- 管理者の権限と共有者が決めた方針との関係
- 契約名義と収支報告や交代時の引継ぎ
登記と協議書から持分を読み選任の賛成割合を計算する

共有物の管理者の選任・解任は、民法252条の管理に関する事項に含まれ、各共有者の持分の価格の過半数で決めます。共有者の人数が多い方で決める制度ではありません。
| 説明用の持分例 | 合計 | 過半数か |
|---|---|---|
| 母2分の1、長男3分の1、長女6分の1 | 全体で1 | 共有者と持分を原資料へ対応 |
| 長男と長女が賛成 | 3分の1+6分の1=2分の1 | ちょうど半分で、過半数ではない |
| 母と長男が賛成 | 2分の1+3分の1=6分の5 | 過半数を超える |
最新の登記事項証明書と遺産分割協議書等を突き合わせ、誰が持分を持つか、変更がないかを確かめます。相続の前に作った家族メモや、連絡担当者の一覧だけで賛成割合を決めないでください。
選任対象は共有者に限られず、共有者以外の人を選ぶことも考えられます。候補者が引き受ける仕事、報酬や実費を話し合い、決定内容とその賛成を示せる記録を残します。
管理会社への委託と共有物の管理者の選任を分ける

清掃や集金を管理会社に委託していても、その会社を民法252条の2の管理者として選任しているとは限りません。契約の当事者、委託業務、共有者の決定を別々に確認します。
| 書面にする内容 | 書く目的 |
|---|---|
| 共有者による選任の決定 | 誰を管理者に選び、いつから任せるかを示す |
| 候補者との業務・報酬の合意 | 受ける仕事、実費、報告方法、期間等を具体化 |
| 賃貸や工事等の個別契約 | 誰の名義で誰が署名し、どの権限で発注するかを示す |
| 共有者間の管理方針 | 賃料、修繕、支出の上限等について決定を残す |
たとえば長男を管理者とし、清掃は従来の管理会社へ委託するなら、長男が点検する役割と、会社が実行する業務を整理します。逆に会社を管理者とする場合も、通常の管理委託の契約書へ署名しただけで全て整ったと考えないようにします。
管理者に選ばれたことだけで、共有者全員を名義人とする契約の代理権まで全て付くとは限りません。賃貸借や工事の契約では、管理者自身の名義で行うのか、共有者を代理するのか、必要な代理権等を別途確認してください。
任せる権限と共有者が決める事項を一緒に書く

管理者は共有物の管理に関する行為をできますが、形状や効用の著しい変更を伴う変更には、原則として共有者全員の同意が必要です。「管理者になったので家を自由に建て替えられる」とはなりません。
また、共有者が管理事項を決めた場合、管理者はその決定に従って職務を行います。修繕の連絡窓口を一本化することと、共有者の決定権をなくすことは別です。工事の金額の大小だけで、管理か変更かを分類しないようにします。
| 管理案の項目 | 決定と実行をつなぐ書き方 |
|---|---|
| 日常の連絡 | 入居者や業者の連絡窓口と記録先 |
| 修繕 | 内容・緊急性・権限分類、見積と発注の流れ |
| 賃貸条件 | 共有者が決めた条件と個別契約の署名権限 |
| 特別の影響がある利用変更 | 現に使用する共有者への影響と承諾の要否 |
| 大きな変更 | 全員同意や別の裁判手続き等の検討を先に行う |
共有者の決定に反した管理者の行為は、共有者に対して効力を生じないとする一方、そのことを善意の第三者へ対抗できない規定があります。内部で禁止を書いたから取引先にも必ず無効を主張できる、と放置せず、必要な方針を発注前に共有することが大切です。
収支の報告と交代時の引継ぎを始める前に決める

管理を一人にまとめた後も、各共有者が収支を追えるようにします。家賃の受領額、管理費や工事の支出、預り金、共有者へ渡す金額を分け、通帳や請求・領収書へ対応させて報告します。
どの口座を使い、誰が引き出せるかは金融機関の取扱いも含めて確認します。管理者という肩書だけで、既存の共有者名義口座を自由に操作できると扱わないでください。税務上の家賃等の帰属も、振込口座の名義だけで決めるものではありません。
委任として業務を引き受ける契約では、善管注意や報告に関する規定も確認します。報告を毎月にする、工事の証拠を共有するなどの運用は、管理財産に合わせて具体的に合意します。
交代するときは、共有者による解任・新選任と、業務契約の終了、金融機関や入居者への変更連絡を別々に整理します。鍵、契約書、預金残高、未払請求、預り敷金の資料を後任へ渡し、解任の決定だけで引継ぎも終わったとしないようにします。
関連する基本事項は、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類も参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

二人が賛成すれば共有物の管理者を選べますか
人数だけでは決まりません。持分の価格の過半数が必要です。たとえば3分の1と6分の1の二人の賛成は合計2分の1で、過半数に届きません。
管理会社と契約すると自動で共有物の管理者になりますか
必ずしも同じではありません。民法上の選任の決定と、会社への委託業務・契約権限を区別して書面を確認します。
管理者なら共有者の決定に反して契約してもよいですか
管理者は共有者が決めた管理事項に従う必要があります。違反行為と善意の第三者との関係には特則があるため、決定内容と発注権限を先に明確にします。