相続した賃貸物件の更新料 死亡日と契約効力日を分ける

親が亡くなった後に更新料が振り込まれても、すべてが相続人の新しい収入になるとは限りません。更新の契約がいつ効力を生じるかを、死亡日と比べる必要があります。
毎月の家賃と一時に受け取る更新料には、収入を計上する時期の異なるルールがあります。管理会社からの送金合計を分け、父の準確定申告と相続後の申告へつなげましょう。
- 家賃と更新料と返還する敷金の計上を分ける
- 更新契約の効力日と死亡日を二つの例で比較する
- 未分割の配分と相続税の未収債権を別に引き継ぐ
家賃と更新料と敷金を別の行へ分ける

不動産所得の総収入には、家賃のほか更新料等も含まれます。ただし、返還すべき敷金は預り金であり、受け取った全額がそのまま収入になるものではありません。返還を要しない部分があれば、その確定時期を調べます。
架空例として、同じ入居者から家賃10万円、更新料10万円、返還する敷金10万円がまとめて送金されたとします。通帳の30万円を一行の家賃収入にせず、賃貸借契約書と更新合意書で三つに分けます。
| 入金の内訳 | 確認する時期等 | 照合する資料 |
|---|---|---|
| 毎月の家賃 | 原則は契約等の支払日 | 賃料の支払条項 |
| 一時の更新料 | 引渡しを要しない場合は更新契約の効力発生日 | 更新合意の効力条項 |
| 返還する敷金 | 受領時は原則として収入にしない | 返還条件と預り明細 |
本稿は通常の収入計上による個人の賃貸を前提にします。適法に現金主義の特例を使っていた場合などは、従来の申告方法も担当者へ示してください。
更新料は署名日と効力発生日を読み分ける

所得税基本通達36−6は、契約更新を含む貸付けに伴い一時に受け取る更新料等について、引渡しが必要なら引渡日、不要なら契約の効力発生日としています。すでに入居している部屋の更新で引渡しを要しないなら、効力発生日を確認します。
契約に署名した日が、そのまま更新の効力日とは限りません。次の二室は、父が9月20日に死亡し、合意書上、新しい期間の開始日に更新の効力が生じることが明確な架空例です。
| 更新した部屋 | 署名日・効力日・入金日 | 通常の計上の確認先 |
|---|---|---|
| 一つ目の部屋 | 署名9月1日/効力9月15日/入金9月25日 | 死亡前に効力発生。父の所得へ対応 |
| 二つ目の部屋 | 署名9月1日/効力10月1日/入金9月10日 | 死亡後に効力発生。前受条件と相続後の帰属を確認 |
二つ目は、効力発生前に更新が成立しない場合には受領金を返す契約という前提です。先に入金されたことだけで父の所得としません。別の条項で署名時から権利義務が確定する契約なら、同じ結論を当てはめず、全文を税務担当へ見せます。
また、一時の更新料を、新しい契約が2年だから2年に分けると自分で決めることも避けます。月々の家賃について認められる期間対応の処理と同じとは限りません。
父の準確定と相続後の所得を分けて申告へ渡す

死亡前に父へ帰属する所得は、父の準確定申告の対象として確認します。申告が必要なら、原則として相続開始を知った日の翌日から4か月以内が期限です。更新料の入金を待って期限を延ばせるものではありません。
代表口座への入金だけで一人の所得にしない
遺言等による取得の指定がなく、物件が未分割であれば、そこから生じる所得は共同相続人の法定相続分に応じて帰属します。母と子2人なら、相続後の更新料12万円と確認した一件を、母6万円、子各3万円へ対応させる例が考えられます。これは経費控除前の収入の配分です。
後に長女が物件を取得しても、その分割だけを理由に未分割期間の所得全部を長女へ遡らせません。反対に、遺言で当初から取得者が決まっている場合などは、この未分割の仮定と分けます。
相続税の債権と後日の入金も対応させる

準確定申告は父の所得税、相続税は死亡時の財産を調べる制度です。父の所得に計上したから、死亡時に残る未収債権を相続財産から外すという処理にはなりません。
一つ目の部屋の更新料が死亡日に未入金なら、契約から生じた請求権の内容、支払期日、未収額と後日の回収を残します。更新料10万円の回収を相続人の口座へ受けても、それだけで新しい更新料収入をもう一度立てるものではありません。
二つ目のように先に受領した金銭は、死亡日の実際の預金残高に含まれるか、返還義務がどの条件で残るかを調べます。前受と書かれた金額を、根拠なく全額の債務控除へ移すことも避けてください。
管理会社の送金明細を更新合意書へつなぐ

管理会社の明細は、部屋、更新対象期間、更新料総額、差し引かれた更新事務手数料、実入金に分けて残します。差額の振込額だけを見れば、どの人のどの収入か、手数料を誰が負担したかが分からなくなるためです。
更新料の受取人が大家なのか、別契約に基づく事務手数料を管理会社が受け取るのかも照合します。管理会社が控除したという共通点だけで、すべて同じ人の経費としません。
最終的に、更新合意書の効力条項、父の死亡日、入金明細、物件の取得根拠を一組にします。成立日が不明な合意や返還条件が争われる金銭は、その不明点を残したまま申告担当へ共有してください。
関連する基本事項は、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類も参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

死亡後に入金した更新料は子の所得ですか
入金日だけでは決まりません。引渡しを要しない更新料は契約の効力発生日を確認し、死亡前後の帰属を分けます。
物件を取得した人へ未分割期間の更新料も全部移しますか
後の遺産分割だけで未分割期間の所得の帰属は遡りません。遺言等で当初から取得者が決まる場合と分けて判断します。
準確定申告へ入れた未収更新料は相続税で外しますか
所得税の計上と死亡時の財産の評価は別です。死亡時にある請求権と未収額を確認し、後日の回収を対応させます。