借金を免除してもらったときの贈与税 返済猶予との違い

個人からの借金を「もう返さなくてよい」と免除してもらうと、現金を受け取らなくても贈与税の問題が生じます。一方、返済をしばらく待ってもらうことと、債務そのものが消えることは違います。
まず何が免除されたのか、その日はいつか、残りの返済はどうなるかを確認します。借入600万円から一部を返し、その後300万円の免除を受ける仮例で、対象額と資力喪失の例外を整理します。
- 免除と返済期限の延長を区別する
- 免除された日と消えた残高を対応させる
- 資力喪失の例外は返済困難な部分で判定する
返済を待つ約束と借金をなくす免除は違う

相続税法8条は、無償又は著しく低い対価で債務の免除等による利益を受ける場合、その利益を贈与で取得したものとみなします。本人の預金が増えなくても、返す義務がなくなれば経済的な利益になるためです。
ただし、「今月は待つ」「支払日を来年にする」といった期限の延長と、「元本のうち300万円を返さなくてよい」という免除は別です。連絡や催促がないことだけで、免除が成立したとは決めません。
誰が誰の債務を消したのかを確かめる
本稿の中心は、個人である債権者本人が、借主に対する債権を免除する場合です。親が子の銀行ローンを肩代わりした場合には、銀行との債務と親子間の求償など、別の関係を調べます。
法人から免除を受ける場合は、贈与税ではなく所得税の対象となります。相手が個人か会社かを確かめ、個人間の免除の説明を法人の免除へそのまま使わないでください。
免除日と消滅額を返済の記録へ対応させる

借入の当初総額ではなく、免除時点でどの債務が残り、そのうち何が消えるかを調べます。元の借用書と返済の入出金、免除の意思表示を並べると、借金の残高と贈与の対象額を分けやすくなります。
次は利息を別途整理済みとする、元本だけの説明用の仮例です。2026年9月の免除は、残る500万円のうち300万円を確定的に免除し、残200万円の返済義務は続くものとします。
| 出来事 | 残る元本 | 贈与税で調べる点 |
|---|---|---|
| 当初の借入600万円 | 600万円 | 真実の貸付として成立しているか |
| 免除前に100万円を実返済 | 500万円 | 返済済み100万円を免除額へ含めない |
| 2026年9月に300万円を無償で免除 | 200万円 | 原則としてこの免除による300万円の利益 |
| 2027年1月に残200万円を実返済 | 0円 | 残債の返済であり、前年の免除300万円と別 |
もし2026年9月にしたことが返済期限の延長だけなら、元本500万円は残ったままです。税務上は真実の貸付かなども問題となるため、口座の動きと合意の内容を対応させます。
残った200万円の返済は免除と別に管理する
残債200万円を返したことだけで、既に免除された300万円の扱いも自動的に消えるわけではありません。免除を撤回・変更したという事情があれば、当初の効果とその後の法律関係を個別に確認します。
資力喪失の例外は返済が困難な部分だけに及ぶ

債務者が資力を喪失し、債務を弁済することが困難な場合には、免除等の利益のうち、弁済困難な部分は贈与で取得したものとみなされません。収入が一時的に減ったことや、本人が苦しいと言っていることだけで、免除の全額を対象外とはできません。
免除時点の預金、不動産や有価証券等の資産、ほかの債務、収入や生活の状況などを調べ、どの範囲で弁済が困難なのかを説明します。例の300万円の全額が例外に当たるかは、仮例の残高だけでは判断できません。
第三者の引受けや弁済の例外と混ぜない
8条ただし書は、債権者本人から免除を受ける場合と、扶養義務者に債務を引き受け又は弁済してもらう場合を分けています。債権者本人の免除へ、扶養義務者でなければ例外を使えないという条件を一律に加えないでください。
反対に、第三者が支払った場合の条件を省き、誰が払っても困窮していれば全額が非課税と考えるのも適切ではありません。行われた行為と、その行為に対応する条件を確認します。
免除の書面と資金状況をそろえて年の贈与を集計する

免除の記録には、対象となる契約、免除する元本等の額、意思表示の日と相手への伝達、残る債務の扱いを残します。古い会話しかない場合は、現在確認できた経緯として整理し、当時の日付の書面が存在したかのように作らないようにします。
申告を検討するときは、免除による利益だけでなく、その年にほかから受けた贈与と適用する課税制度も確かめます。300万円の免除があったから税金も300万円、あるいは毎年の基礎控除を複数年分まとめて使える、という計算ではありません。
贈与税と貸主側の貸倒れは別の判断になる
貸主が帳簿上の貸付金を損失にしたことだけで、借主に対する免除が成立したり、借主が資力喪失と認められたりするわけではありません。貸主側の処理と借主の贈与税を区別して相談します。
持参するのは元の契約、返済一覧と通帳、免除の書面や連絡、残債の返済計画、例外を検討する場合の資産債務資料です。未確定の点を残したまま申告不要と決めず、免除日と対象額から確認してください。
免除前の貸付関係を確かめるときは、親から借りたお金と贈与税も参考に、借用書だけでなく実際の返済を整理してください。
個別の契約や評価の相談先は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

返済期限を延ばしただけで贈与税はかかりますか
元本の返済期限を延ばしただけなら、元本を免除した場合とは異なります。ただし、真実の貸付か、どの債務を免除したのかを契約と返済実態から確認します。
債務免除は親から受けた場合だけ贈与税がかかりますか
親に限りません。個人から対価なく又は著しく低い対価で債務免除等の利益を受けた場合が対象です。法人からの免除は所得税の検討となります。
生活が苦しければ免除額はすべて課税されませんか
一律に全額が対象外にはなりません。資力を喪失して弁済困難な場合の、その困難な部分について判定するため、免除時点の資産や債務等を確認します。