不動産を安く買うと贈与税はかかるか 個人間の価格判断

親の不動産を安く買っても、売買契約があるという理由だけで贈与税の問題がなくなるわけではありません。個人から著しく低い対価で取得した場合、時価と支払額の差が贈与とみなされることがあります。
その判定では、相続税評価額で買えば安全、時価の半分以上なら安全、とは一律にいえません。通常の取引価額3,000万円、相続税評価額1,800万円という仮例から、契約前に比べる金額を整理します。
- 個人間売買の低額譲受と無償贈与を分ける
- 相続税評価額と通常の取引価額を区別する
- 半額という安全基準を作らず価格の根拠を残す
個人間の安い売買でも差額が贈与とみなされる場合がある

相続税法7条は、個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合、時価と対価との差額を贈与で取得したものとみなします。現金を贈る契約がなくても、安い取得によって利益が移転することに着目する制度です。
対象を最初に分けましょう。本稿は個人が個人へ不動産を売る場合を中心にします。無償の贈与、債務を引き受ける負担付贈与、法人が売主又は買主となる取引では、別の課税関係も検討します。
時価の半分以上という安全基準はない
国税庁は、著しく低い対価かどうかは個々の具体的事案に基づいて判定すると説明しています。個人から法人への移転に関する所得税の「時価の2分の1に満たない」という基準とは異なります。
したがって、60%なら必ず課税、半額以上なら必ず非課税、と割合だけで結論を出せません。相手が親族かだけでなく、対象財産、価額の根拠、取引の事情を示して判断します。
土地建物の時価は通常の取引価額で比べる

低額譲受における時価は、土地や借地権、家屋や構築物などの場合、通常の取引価額に相当する金額です。相続税申告のための路線価評価や固定資産税評価額を、そのまま通常取引価額と同一にしないようにします。
次の数字は説明用の仮定です。この取引が「著しく低い対価」に当たると個別に判断される場合には、みなし贈与の対象となる差額は、3,000万円−1,800万円=1,200万円です。売値が時価の60%だから自動的に該当するという例ではありません。
| 比べる金額 | 説明用の数値 | 使う目的 |
|---|---|---|
| 通常の取引価額 | 3,000万円 | 不動産の時価として比べる金額 |
| 相続税評価額 | 1,800万円 | 相続税の評価用。売買の安全価格という意味ではない |
| 実際の売買代金 | 1,800万円 | 契約と支払いで確認する対価 |
| みなし贈与の差額 | 1,200万円 | 著しく低い対価と判断されるという仮定での対象額 |
価格を下げる事情は資料で具体化する
建物に大きな損傷がある、権利上の制約があるといった事情は、価格資料に具体的に反映させます。「古いから半額」と家族の感覚だけで決めるのではなく、状態、修繕の必要、取引事例などを対応させます。
仲介会社の査定、公示価格や近隣の取引事例、必要に応じた不動産鑑定などの根拠を比べます。一つの査定書があれば全件問題ないという保証ではなく、その物件にその価格が妥当である理由を説明するためです。
代金の実払いと売主側の税金も別に確かめる

契約書に書いた価格だけでなく、実際にどの資金から誰へ支払うかも調べます。代金が未払いのまま、後で支払義務を免除した場合や、売主から受け取った資金で支払う場合には、その行為の課税も別に検討します。
分割払いなら、支払日、支払済み額、残額、利息や担保の条件を残します。所有権の名義変更と代金の送金を対応させ、同じ金額を贈与と売買代金の両方として曖昧に扱わないことが大切です。
売主には譲渡所得税、取得者には登記や不動産取得等の費用の検討もあります。買主の贈与税が生じるかという問いだけで、家族全体の税金や必要資金を計算し終えないようにします。
返済に充てる低額譲受の例外は対象が限られる
7条には、譲受人が資力を喪失し弁済困難な場合に、その弁済に充てるため扶養義務者から低額で譲り受けた財産について、弁済困難な部分を対象外とする条件があります。家族の住宅購入を安くする一般的な優遇ではありません。
債務免除の例外とは、行為も条文の条件も同じではありません。単に購入資金が少ないことを理由に使えるとせず、適用を検討する場合は資産債務と取得の目的を具体的に示します。
契約前に価格資料と資金計画をそろえる

相談時には、不動産の登記と現況、通常の取引価額の根拠、相続税評価額、予定の売買価格、支払原資と時期をそろえます。この三つの価格が異なる理由と、安く売る事情を説明できるようにします。
価格を決めて登記と送金を済ませてから安全だったかを尋ねるより、契約前に確認した方が条件を整理しやすくなります。税務担当には「相続税評価額でよいか」だけでなく、具体的な価格資料と契約内容を渡してください。
負担付贈与の計算を売買へそのまま移さない
不動産に借入金がある場合も、借入残高を売買価格から自由に差し引けるわけではありません。誰が返済義務を負うか、債権者が承諾するか、実際にどの取引をするかを確かめ、同じ債務を二重に引かないようにします。
一律の安全割合を探すより、個人間の売買なのか、何を時価として比べるのか、実際の対価はいくらかの三点を先に確定させることが、今回の判断の出発点になります。
借入金を引き受ける形も検討している場合は、負担付贈与の税金と注意点を、個人間売買とは異なる取引として確認してください。
個別の契約や評価の相談先は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

相続税評価額で不動産を買えば贈与税はかかりませんか
一律にはいえません。不動産の低額譲受では通常の取引価額を時価として比較します。相続税評価額で売買することだけで、贈与税が生じない保証にはなりません。
時価の2分の1以上なら贈与税はかかりませんか
そのような安全基準ではありません。個人間の贈与税では個々の事情で著しく低いかを判断し、法人への移転に関する所得税の2分の1基準とは区別します。
親子間の不動産売買だけが対象ですか
親子だけではありません。個人から著しく低い対価で財産を譲り受けた場合が対象です。当事者と財産の種類、価格の根拠を確認します。