アパート建築で相続税はどう変わるか 現金保有と借入後を同条件で比べる

アパート建築で相続税の評価額が下がる場合がありますが、借りたこと自体で財産の純額が減るわけではありません。借入金が増えると同額の資金も増え、建築後は現金と建物、残債を一緒に見る必要があります。
判断したいのは、税額だけでなく家族に残る財産です。同じ現金と土地から始める三つの案を比べ、貸付けの実態、家賃収支、返済、売却後の手取りまで確認します。
- 借入金と残った現金を両方入れた同条件の比較
- 貸家・敷地の評価と小規模宅地等の特例の条件
- 税評価と売却手取りや賃貸経営の収支の違い
借りたことだけで相続財産の純額は減らない

親が1億円を借り、まだ何にも使わず預金しているなら、現金が1億円増える一方で借金も1億円増えます。他の条件が同じなら、借入だけによる相殺で課税される純額が減ることにはなりません。
建築費と評価額の差を分ける
建築後に評価額が変わるのは、現金が建物へ変わり、家屋の評価方法や貸付けによる権利の制約が反映されるためです。建築費と固定資産税評価額は同額ではなく、貸家に該当するか、空室があるか等でも変わります。
現金保有と自己資金建築と借入建築を同じ表で比べる

説明用に、親が現金2億円と同じ土地を持ち、建築費1億円のアパートを建てる場合を考えます。土地の価額は各案でいったん同じとして表から省き、税の基礎控除等も適用する前の、現金・建物・債務だけを比較します。
税額差と評価額差を混同しない
完成後の建物の固定資産税評価額が仮に5,000万円、借家権割合30%、全体を実際に賃貸しているとします。この場合の貸家評価額は5,000万円×(1−30%)=3,500万円です。建築費の半額が必ず固定資産税評価額になる、という前提ではありません。
| 同じ出発点からの案 | 現金 | 建物評価 | 借入残高 | 表の範囲の差引額 |
|---|---|---|---|---|
| 現金のまま保有 | 2億円 | なし | なし | 2億円 |
| 自己資金1億円で建築 | 1億円 | 3,500万円 | なし | 1億3,500万円 |
| 1億円借りて建築、元の現金は保有 | 2億円 | 3,500万円 | 1億円 | 1億3,500万円 |
借入案で、元の現金2億円を計算から落とすと、効果を大きく見せてしまいます。この例の6,500万円の差は税額の減少額ではなく、限った財産の評価差です。税額は土地や他の遺産、相続人、控除等を加えて別に計算します。
貸家建付地と小規模宅地の減額には実態と時期の条件がある

現実には、建築により土地が貸家建付地に該当するかも確認します。契約書の名称だけでなく、建物が実際に賃貸されている範囲等が関係し、建築予定や募集開始だけで必ず満室と同じ評価になるものではありません。
評価通達だけで必ず認められるとは限らない
貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例にも、面積、継続保有・貸付け、申告等の要件があります。相続開始前3年以内に新たに貸付事業へ使った宅地等は原則として対象から除かれ、一定の例外もあるため、建築時期と事業歴を示して判定します。
通達による評価が著しく不適当と認められる財産の扱いもあり、個別事情によって評価が争われる場合があります。借入額や年齢など一つの条件で適否を断定せず、取引の目的、取得・賃貸の実態、税評価と取引価額の関係を専門家へ示します。
2027年の見直し案を現行計算へ先取りしない
上の表は2026年10月30日に確認した現行の評価を前提とする試算です。同日に確認した国税庁の通達案には、課税時期前5年以内に対価を伴って取得・新築した一定の貸付用不動産について評価を見直し、2027年1月1日以後の相続等による取得へ適用する案が示されています。経過措置の案もありますが、確認した資料は通達案で、確定した条件として今の試算へ先取りするものではありません。
これから建築する場合は、現在の評価差が将来も同じになると決めず、契約前に確定内容、適用時期、経過措置を税理士と確認してください。
家族に残る財産は返済と空室と売却費用まで含めて考える

建築後には、家賃収入から管理料、固定資産税、保険、修繕、利息等を払います。借入元金の返済は経費と同じ意味ではありませんが、手元資金を減らす支出なので、返済後に残る現金を月別・年別に確認します。
税が減っても損失を埋められるとは限らない
例として、売却代金8,000万円、残債6,500万円、売却費用400万円、売却に伴う税100万円を仮定すれば、手元に残る額は1,000万円です。相続税の建物評価3,500万円という数字から、売却後の手取りを読み取ることはできません。
家賃が下がる、空室が続く、修繕が前倒しになる、金利が上がる場合も試算します。相続税が減る見込みでも、建築や運営で失う額が大きければ、家族の財産は増えません。まず現金保有・自己資金建築・借入建築の三案に、返済後収支と売却時の手取りを添えて比較してください。
関連する確認:不動産の相続税評価額はどう調べる 土地と建物の計算方法や必要資料。
よくある質問

借金を増やせば相続税は下がりますか
借入金と同額の現金等が増えるため、借りるだけでは純額は減りません。建築後も残った現金、建物、債務を合わせて比較します。
自己資金で建てるより借入の方が必ず節税できますか
必ず有利とはいえません。同じ建物・土地・出発資金なら、借入案で残る現金も含める必要があり、返済や金利の条件も別に比較します。
評価額が下がれば家族に残る財産は増えますか
評価額の低下と経済的な手残りは別です。税額に加え、建築費、空室、修繕、返済、売却費用と残債まで確認して判断します。