親から借りたお金と贈与税 借用書と返済の注意点

親からお金を借りても、実際に返す貸借であると認められれば、借りた元本そのものは贈与になりません。判断されるのは借用書の有無だけでなく、子の返済能力と実際の返済状況です。
契約書を作っても返済がなければ、税務上の説明は難しくなります。借りる段階で金額と期限を現実的に決め、親の死亡や返済の中断が起きたときにも経緯を確認できる形にしておきます。
- 本当の借入れと実質的な贈与を分ける判断材料
- 借用書に記載する条件と返済記録の残し方
- 無利息や債務免除や親の死亡時の確認点
借用書だけでなく返済できる計画と実績が必要になる

金銭の貸借と認められるかは、資金の受渡し、約束した返済、子の収入、残っている借入れなどから確認します。形式を整えても、初めから返すつもりがないお金は貸付けとして扱われません。
子の収入と家計から毎月の返済額を決める
例えば600万円を10年間で返すなら、元本だけでも毎月5万円が必要です。家賃や住宅ローン、生活費を払った後にその返済を続けられるかを見積もり、賞与だけに依存する計画は収入が減ったときも考えます。
親の年齢が高い場合に極端に長い返済期間を置くと、実際の回収を見込んだ貸付けなのかという説明も必要です。年齢だけで一律に贈与と決まるわけではありませんが、期間と金額に無理がないか確認します。
出世払いや催促しない約束と区別する
「お金ができたら返せばよい」「返せないならそのままでよい」という実態では、元本自体が贈与とされる場合があります。家族だからこその曖昧な約束を、後から書類だけで補うことはできません。
借入れではなく渡したいお金なら、贈与として税負担と制度を確認します。返済の見込みがないのに借入れという名前を付けることを、節税の方法にしないでください。
契約書には返す条件を具体的に書く

金銭消費貸借契約書には、貸主と借主、借入日と金額、返済期限、返済日と金額、利率、返済口座等を記載します。双方が内容に合意したことを示し、契約書と実際の資金移動を対応させます。
返済予定表で残高まで確認できるようにする
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 借入れ | いつ誰からいくら受け取ったか |
| 返済条件 | 何日までに何回でいくら返すか |
| 利息 | 利率と計算方法や支払時期 |
| 履行記録 | 振込日と元本返済額と残高 |
金額だけを書いた借用書より、月々の元本と利息、残高が分かる予定表がある方が、返済の実行を確かめやすくなります。将来の家族にも説明できるよう、親子それぞれが控えを保存します。
後から過去の日付の契約書を作って済ませない
既に入金を受けている場合は、当時の約束と資金移動を確認します。後から作成した書類を当時作ったもののように扱わず、作成日と経緯を正確に残してください。
紙の契約書に必要な収入印紙など、税務上の書類の扱いも確認します。契約の方式を整えることと、本当に返済することの両方が必要です。
返済は振込みで残し中断時には条件を見直す

毎月の返済は、子の資金から親の指定口座へ振り込むと経過を確認しやすくなります。現金で返す場合は受領記録が必要ですが、後で事実を説明できるかまで考えて方法を選びます。
親から返済用のお金を受け取る場合は別の贈与を確認する
子が返した直後に親が同額を戻している場合などは、返済の実態と別の贈与をそれぞれ確認する必要があります。帳簿上だけ残高を減らす方法では、真の貸借を説明できません。
親からの贈与が別にあるなら、ほかの人から受けた贈与も含む年間合計で贈与税を判断します。年110万円の基礎控除は、返済をしたという外形を保証する制度ではありません。
失業等で返済できなくなったら経緯を記録する
収入が減って返済が止まったら、支払猶予や返済額の変更について親子で協議し、その日付と理由、新しい予定を残します。何年も放置して最後にまとめて説明するより、変更時の事情が必要です。
債務を免除してもらう場合は、免除された利益について贈与税の問題が生じ得ます。債務者の資力喪失などによる例外もあるため、単なる返済不要の合意と同じにせず税理士へ確認します。
無利息なら元本と利息相当の利益を分ける

本当の貸付けでも無利息等の場合には、利息に相当する利益が贈与として扱われる場合があります。無利息というだけで元本全額が必ず贈与になる、と説明するものではありません。
どの利率でもよいという一律の安全基準は置かない
親子間の借入れに、国税庁が一律にこの利率なら安全と定める目安を当てはめることはできません。金額、期間、取引条件から利率を考え、利益相当額の税務を確認します。
少額の利益や課税上の弊害がない場合の通達上の取扱いもあります。ただし、これを理由にどんな高額な貸付けでも無利息で問題ないと判断しないでください。
親が受け取る利息にも所得税の確認がある
利息を支払う契約にするなら、子の贈与税だけでなく、親が受け取った利息の所得税も確認します。利息を決めたことで家族全体の税務がなくなるわけではありません。
住宅購入のための借入れでは、親から借りた資金が通常の住宅ローン控除の対象になると考えないことも必要です。借入先の要件等を別に確かめます。
親が亡くなったら残っている貸付金も相続財産になる

返済途中で親が亡くなれば、原則として未返済の貸付金債権が親の財産として相続の対象になります。父に借りたのだから父の死亡で返さなくてよい、と当然に消えるものではありません。
借りた子以外の相続人への影響も確認する
きょうだいなどほかの相続人がいれば、貸付金を誰が取得し、以後誰へ返すのかを検討します。借りた子がその債権を取得する場合も、他の遺産との分け方や債権債務の帰属を整理する必要があります。
相続税の財産一覧へは、死亡日現在の残高と契約書、返済履歴を添えます。生前に免除された分があるなら、免除日と贈与税の扱いも伝えてください。
借りる前に収支表と返済予定を用意する
親に相談する前に、必要な金額、使途、月々の返済可能額、返済を終える時期を一枚にします。親の手元資金が足りるかも確認し、貸したお金をすぐ戻してほしい状況を避けます。
既に受け取っているお金の扱いに迷う場合は、事実と資料をそのまま税理士に示してください。都合のよい契約名を後から選ぶのでなく、実際の合意と返済から適切な申告を確認します。
よくある質問

借用書があれば贈与税はかかりませんか
借用書だけでは判断できません。返済能力や返済状況などから本当の貸借かを確認し、実質的な贈与なら元本が贈与として扱われます。
親から無利息で借りると全額が贈与ですか
本当の貸付けなら元本と利息相当の利益を分けて判断します。無利息等による利益が贈与として扱われる場合があるため、金額や条件を確認してください。
親が亡くなったら返済しなくてよいですか
当然に返済不要にはなりません。残る貸付金債権は原則として相続財産になり、誰が取得して以後の返済をどうするかを整理します。