相続放棄前の遺品整理はどこまでできる 単純承認を避ける確認点

相続放棄前の遺品整理はどこまでできる 単純承認を避ける確認点のイメージ

相続放棄を考えているときの遺品整理は、単に部屋を片付ける作業では済まないことがあります。価値のある物を売る、持ち帰るといった行為が相続財産の処分に当たると、相続を承認したものと扱われるおそれがあるためです。

一方、財産を調べることや、腐敗・汚損を防ぐ保存のための作業まで一律に禁じられるわけではありません。まず物の内容と必要な作業を分け、処分する前に写真と記録を残して確認します。

この記事でわかること
  • 相続放棄の前後に注意する遺品の売却や廃棄
  • 賃貸住宅の明渡しを求められたときの確認順序
  • 現に占有している財産の保存と引継ぎの方法
目次

遺品の処分は物の価値と目的で判断が変わる

遺品の処分は物の価値と目的で判断が変わるに関する資料のイメージ

民法第921条は、相続財産の全部又は一部を処分した場合などに、単純承認したものとみなすと定めています。相続放棄のつもりだったという気持ちだけで、処分の問題を解消することはできません。

売却や持ち帰りは財産処分に当たるおそれ

宝石、時計、美術品、車などは、中古品でも価値がある場合があります。形見として受け取る、売却代金を自分の口座に入れるという行為は、単なる片付けとは区別します。

写真や使い古した衣類など、経済的価値が乏しい物の取扱いは、具体的な内容や事情により判断が変わります。何円以下なら絶対に問題ない、という一律の基準は置けません。

保存に必要な作業とは区別する

腐敗する食品を取り除く、雨漏りで書類がぬれない場所へ移すなど、財産の状態を保つための作業と、自分の判断で換価や分配をすることは違います。必要な範囲と目的を説明できるようにします。

放棄が受理された後でも、財産を隠したり私的に消費したりしてよいわけではありません。受理されたら何でも捨てられるという説明に従わず、引継ぎまでの対応を確認してください。

片付ける前に財産と作業の記録を残す

片付ける前に財産と作業の記録を残すに関する資料のイメージ

片付けに着手する前に、何がどこにあるかを残します。売却や廃棄をしてからでは、価値や所有者を確かめられないことがあります。

現金や権利資料と貴重品を分けて保管する

現金、通帳、保険証券、登記の資料、借用書、督促状などを探し、相続財産の調査に必要な物として整理します。現金を見つけても生活費や未払金に充てず、金額と発見場所を記録します。

自分の所有物が混在している場合は、購入資料や持ち込んだ経緯を確認します。親の物ではないと言い切れない物を、まとめて持ち帰ることは避けてください。

写真と一覧や費用の支払者を記録する

部屋全体と個々の物を撮影し、日付、品名、移動先、実施した作業を残します。保存のために業者を呼ぶ場合も、作業範囲と依頼者、支払原資を契約書や領収書で確認できるようにします。

自分のお金で業者に払ったことだけで、財産の処分まで問題がなくなるわけではありません。費用の原資と、実際に行う行為をそれぞれ確認します。

賃貸住宅の明渡しを急がれても契約の整理を先にする

賃貸住宅の明渡しを急がれても契約の整理を先にするに関する資料のイメージ

家主から退去を急がれる場合も、賃貸借契約、室内の財産、清掃費用をひとまとめにしないことが大切です。誰がどの立場で依頼するかを確認します。

解約と遺品処分をひとまとめに依頼しない

故人の賃貸借契約を相続人として解約する行為や、残置物を一括廃棄する合意には、相続放棄との関係で注意が必要です。署名を求められた書類をその場で出さず、写しをもらって弁護士へ確認します。

貸主が独断で全て処分してよいという意味でもありません。鍵の保管、危険な物への応急対応、退去までの連絡方法を整理し、法的に権限のある人による対応を検討します。

相続した立場と個人の保証責任を分ける

自分が親の賃貸借の連帯保証人になっている場合、その保証責任は相続放棄で消えるものではありません。請求書が来たら、相続した借金としての請求か、自分の保証契約による請求かを確認します。

遺品整理や清掃を自分の名義で依頼すれば、その契約による支払義務が別に生じることもあります。相続放棄で全ての請求を断れると考えて、新たな契約をしないでください。

放棄時に占有している財産は引渡しまで保存する

放棄時に占有している財産は引渡しまで保存するに関する資料のイメージ

2023年4月施行の改正後は、相続放棄時に相続財産を現に占有している人に、その財産の保存義務が残ります。放棄した全員が、遠方の全ての財産を無期限に管理するという規定ではありません。

常に全員が管理義務を負うわけではない

義務の対象は、放棄時に現に占有している財産です。親と同居していた場合や、実際に物を預かっている場合などは、占有の有無を具体的な事情から確認します。

必要なのは、自己の財産と同じ注意をもって保存することです。保存義務があるからといって、売却や分配をする権限を当然に持つわけではありません。

清算人などへの引継ぎを検討する

保存義務は、相続人又は相続財産清算人へ財産を引き渡すまで続きます。引渡しの相手、日付、物の一覧を記録し、誰へ鍵を渡せばよいかも確認します。

相続人全員が放棄した場合は、清算人の選任を検討することがあります。申立ての費用や予納金が必要な場合もあるため、家主や債権者とも、立場を分けて対応を相談します。

すでに処分した場合は内容と金額を整理して相談する

すでに処分した場合は内容と金額を整理して相談するに関する資料のイメージ

すでに整理してしまっても、一つの行為だけで相続放棄が絶対にできないと決めないでください。処分した物、価値、代金、使途、処分日、当時知っていた財産や借金をまとめます。

写真、業者の見積書と作業明細、振込記録、家主との連絡を保存し、追加の処分を止めて弁護士へ相談します。経緯を隠して申述すると、その後に債権者との間で効力が争われるおそれがあります。

相談や片付けに時間がかかっても、相続放棄の原則3か月の熟慮期間は進みます。財産調査が終わらない場合は、期限内に期間伸長が必要かを確認してください。

財産と借金の資料を探す順序は、親の財産の調べ方で整理しています。室内の物を処分する作業と、相続するかを決めるための調査を分けて進めてください。

よくある質問

よくある質問に関する資料のイメージ

遺品整理を少しでもすると相続放棄できませんか

全ての作業が直ちに単純承認になるわけではありません。保存に必要な作業か、価値のある財産の処分かを内容と目的から確認します。

相続放棄が受理されたら全部捨ててよいですか

受理後も勝手な消費や隠匿等は避けてください。現に占有する財産は、相続人や清算人へ引き渡すまで保存義務が残る場合があります。

すでに業者へ処分を依頼した場合はどうしますか

物の内容と価値、作業と支払いの記録をそろえ、追加処分を止めて弁護士へ相談します。申述の期限も合わせて確認してください。

相続対策について問い合わせる
目次