相続した不動産の共有を解消する方法 協議と共有物分割請求

相続した家の共有を解消したいときは、まず遺産分割が終わっているかを確かめます。まだ遺産を分けていない場合と、分割協議で共有と決めた場合とでは、話し合いが難航したときに利用する裁判の手続きが異なります。
すでに共有になっていても、一人が買い取る、物件全体を売るなどの合意で解消できることがあります。裁判を選ぶ前に、誰がいくらで取得できるのかを資料で比較すると、解決案の現実性を判断しやすくなります。
- 遺産分割と共有物分割請求の使い分けがわかる
- 買取りや全体売却を協議する際の条件を整理できる
- 裁判の分割方法と費用に必要な準備がわかる
遺産分割が終わっているかで解消の手続きが変わる

登記簿だけで分割完了を判断しない
父の遺産をまだ分けていないなら、原則として遺産分割協議を行い、まとまらなければ家庭裁判所の遺産分割調停や審判を検討します。登記に相続人の持分が載っていても、法定相続分で先に登記しただけなら分割が終わっていないことがあります。
一方、遺産分割協議で兄妹が各2分の1ずつ取得すると決めた後なら、通常の共有関係を解消する手続きが問題になります。協議が調わなければ、民法258条の共有物分割請求訴訟が選択肢になります。
相続から10年の特則は通常共有との併存が前提
通常の共有と遺産の共有が併存する場合には、相続開始から10年を経過すると、遺産共有の持分についても共有物分割の裁判で処理できる特則があります。ただし遺産分割の請求と所定期間内の異議申出があると、扱いが変わります。
すべての未分割遺産が10年たてば自由に共有物分割訴訟へ移れる、という制度ではありません。相続の経緯と第三者の持分の有無を示して、どの手続きが使えるか弁護士に確認してください。
売却か持分の買取りで合意できるか話し合う

共有者全員で物件を売り、費用を差し引いて代金を分ける方法なら、共有そのものを残さずに済みます。家に住み続けたい人がいれば、その人がほかの持分を買い取る案と比較します。
取得希望者の支払能力と評価基準を合わせる
兄が家を取得したい場合でも、妹の持分に見合う代金を払えなければ合意は実行できません。不動産会社の査定や必要に応じた鑑定を基に価格を協議し、自己資金や借入れで支払えるかを確認します。
固定資産税評価額、相続税評価額、市場での査定額は目的が違います。どの価格で話し合うかを決めずに、それぞれ都合のよい数字を持ち寄ると議論が止まりやすくなります。
合意した内容を登記と代金支払いへつなげる
合意書では、取得者、対象不動産、持分、代金、支払日、登記費用の分担を明確にします。過去の修繕費や固定資産税の立替えを精算するなら、取得代金と混ぜずに項目を分けます。
持分を移す方法によって税務上の扱いが異なり、安すぎる価格では贈与税が問題になる場合もあります。実行前に司法書士と税理士へ確認し、代金の支払いと登記の手続きを調整してください。
協議が難しい場合は共有物分割の裁判を検討する

共有物分割の裁判は、当事者の一方の提案をそのまま認める手続きではありません。共有物の性質や利用状況、取得希望者の支払能力などを踏まえ、裁判所が分割方法を判断します。
| 方法 | 主な確認点 |
|---|---|
| 現物で分ける | 物理的に分割でき利用価値を大きく失わないか |
| 一人が取得して金銭で調整する | 適正な価格と支払能力があるか |
| 競売して代金を分ける | ほかの方法が難しく売却価格や費用の負担を受け入れられるか |
競売での換価も想定して比較する
自分は家を残したくても、金銭による調整ができず現物分割も適切でなければ、競売となる可能性があります。競売の価格が通常の仲介売却と同じになる保証はありません。
訴訟による解決の見通しが分かると、任意売却や買取りの協議を見直せることもあります。相手が反対しているから必ず競売になる、と決めつけず、双方が実行できる条件を比べます。
全共有者の特定と相続関係をそろえる
共有者が亡くなっていれば、その持分を引き継いだ人を調べる必要があります。連絡先が不明な人や、判断能力に問題がある人がいれば、代理や所在不明共有者に関する制度などの検討も必要です。
全員の権利関係を把握しないまま一部の人とだけ話を進めても、物件全体を処理できないおそれがあります。古い登記に気付いた時点で戸籍等の調査を始める意味があります。
弁護士費用以外の鑑定と登記の負担も見積もる

負担する可能性があるのは、弁護士の着手金と報酬、裁判所へ納める手数料や郵便料、不動産の鑑定費用などです。競売となれば、その手続きの予納金も加わります。単一の相場額で総費用を決められません。
相手の持分を取得する資金も必要になる
自分が不動産を取得する解決を目指すなら、専門家への費用とは別に、相手へ支払う金銭が必要です。取得後の税、登記費用、修繕費も含めて資金を見積もっておきます。
弁護士費用は裁判上の訴訟費用と別で、勝てば当然に相手が全額払うものではありません。見積もりでは経済的利益の算定方法、調停から訴訟へ進んだ場合の追加額、鑑定や出張等の実費を確認してください。
登記と取得経緯と希望条件をそろえて相談する

相談の際は、登記事項証明書、遺産分割協議書や遺言、相続関係が分かる資料をそろえます。家の利用者、賃料収入、借入れ、固定資産税と修繕費の支払記録も、解決条件に関わる資料です。
行方不明や判断能力の問題は別の制度も確認する
返事をしない人と所在がわからない人は、同じ対応にはなりません。連絡が取れるなら協議や法的手続きで意向を確認し、所在不明なら調査や裁判所の制度を検討します。本人が判断できない場合に、家族が勝手に署名することもできません。
最初に、不動産を残したいのか、現金化して離れたいのかと、支払える額を書いてください。取得の経緯と希望条件がそろうと、遺産分割か共有物分割かを選び、協議で提案する内容まで具体化できます。
関連する準備は、同居する兄弟がいる実家の相続も参考にしてください。
よくある質問

相続した家ならすぐ共有物分割請求できますか
遺産分割が未了なら原則として遺産分割手続きによります。分割で共有と決めた後なのか、通常共有との併存等の特則があるのかを確認します。
裁判をすれば自分が希望する方法で分けられますか
希望どおりになる保証はありません。裁判所が物件の性質や利用状況、支払能力などを踏まえ、現物分割や金銭調整、競売等を判断します。
弁護士費用は相手に全部払ってもらえますか
当然に相手負担になるわけではありません。弁護士費用と裁判上の訴訟費用は異なるため、負担の見通しを依頼時に確認してください。