事業承継の除外合意を進めるには 対象株式と二つの申請期限

会社の株式を子へ贈与しても、将来の遺留分の計算から自動的に外れるわけではありません。経営承継円滑化法の除外合意を利用するなら、対象となる株式と合意する人を確定し、公的な確認と許可まで進める必要があります。
会社向けの特例について、株主名簿から合意書、二段階の申請へつなぐ順序を説明します。家族の署名を集める前に、議決権と必要資料を確かめましょう。
- 贈与済み株式と対象外の議決権を区別できる
- 全員の合意と必須措置を準備できる
- 二つの一か月と成立後の点検事項がわかる
贈与済み株式と後継者の議決権を資料で特定する

最初に、会社、旧代表者、後継者が特例の対象となるかを確かめます。会社向け制度では、中小企業者の範囲に該当し、原則として3年以上事業を継続している非上場の会社であることなどが必要です。
ここでいう後継者は、旧代表者から対象会社の株式等の贈与を受けた人などで、会社の議決権の過半数を持ち、代表者である人です。「いずれ社長になる予定」や「遺言で株を取得する予定」だけで、この入口条件を満たしたことにはなりません。
株数と議決権数を同じ数字にしない
種類株式があれば、株数と議決権数は一致しない場合があります。この法律の株式等には、株主総会の全事項について議決権を行使できない株式を含めない定義があるため、定款と株主名簿の両方を確認します。
さらに、後継者の保有分から合意対象株式の議決権を除いた数が、会社全体の議決権の50%以下かを調べます。後継者が過半数を持つという条件とは、別の判定です。
| 架空例の議決権総数100 | 後継者保有 | 合意対象 | 対象外保有 | 確認結果 |
|---|---|---|---|---|
| 案A | 70 | 50 | 20 | 対象外20は全体の50%以下 |
| 案B | 70 | 10 | 60 | 対象外60は50%超のためこの案では不可 |
これは対象外議決権の確認だけを示した例です。案Aでも、株式の取得経路、会社の要件、合意内容などの確認は残ります。
合意する人と後継者が外れた場合の措置を決める

旧代表者の推定相続人と後継者の全員が、書面で合意する必要があります。例えば、父の推定相続人が妻と子二人なら、後継者の子ともう一人の子だけで進めることはできません。
戸籍等で家族関係を確認し、合意当事者の氏名、住所、続柄を一覧にします。この特例の「推定相続人」からは兄弟姉妹とその子が除かれるため、日常語の相続人一覧をそのまま転記しないでください。
合意書には対象株式だけでなく、後継者がその株式を処分した場合と、旧代表者の生存中に代表者として経営に従事しなくなった場合に、非後継者が取れる措置も定めます。
措置の内容は個別の協議事項です。金銭の支払いや合意解除等の扱いを、当事者が理解できる形で専門家と検討します。家族間の公平のため別の財産を渡すなら、その約束と税務も併せて確認しましょう。
合意日と確認日から別々に一か月を管理する

合意書に署名した後は、後継者が経済産業大臣の確認を申請します。申請は合意日から1か月以内です。確認を受けたら、その確認日から1か月以内に家庭裁判所へ許可を申し立てます。
二つの期限は起算点が違います。確認申請の提出日を、家庭裁判所への申立ての起算日として扱わないようにします。
| 順序 | 台帳に残す日付 | 確認すること |
|---|---|---|
| 家族の書面合意 | 合意日 | 全員の意思と対象株式・措置 |
| 大臣確認の申請 | 提出日と受領記録 | 合意日から1か月以内 |
| 大臣確認 | 確認を受けた日 | 確認書類を保管 |
| 家裁への申立て | 申立日 | 確認日から1か月以内 |
| 許可の審判 | 確定の確認日 | 確定までを追って保管 |
合意は家庭裁判所の許可審判が確定して効力を生じます。署名済み、大臣へ申請済み、許可申立て済みという途中段階と、効力が生じた段階を区別してください。
申請添付資料や家裁用の確認証明書等は現行の案内でそろえます。家裁から追加資料を求められる可能性もあるため、提出日だけでなく不足資料の担当も記録します。
後継者や推定相続人が変わったら合意を点検する

成立後も、家族と後継者の状況が変わったときは確認が必要です。法律は、確認の取消しや、旧代表者の生存中の後継者死亡等、新たな推定相続人の発生などについて、合意が効力を失う場合を定めています。
対象株式の処分や代表者を退く行為については、先に定めた措置との対応を確認します。これらが起きれば全て自動的に失効する、と一括りにはできません。
また、除外合意は家族全員の遺留分を丸ごと放棄させるものではありません。合意の対象外の財産や当事者以外との関係、相続税・贈与税の扱いは別に検討します。
相談には、最新の戸籍、定款、株主名簿、贈与の資料、議決権表、合意案と申請日程を持参します。分からない取得経路や株数は、推測で埋めず未確認欄に残しておくと、調査すべき点が伝わります。
関連する資料の準備は、遺留分の計算方法 家族別の割合と生前贈与を含む侵害額の求め方も参考にしてください。
よくある質問

これから贈与する予定の株式だけで除外合意を進められますか
会社向けの特例は旧代表者から贈与等により取得した株式と後継者の法定要件を確認します。贈与予定だけで要件を満たしたことにはなりません。
合意書に家族全員が署名すれば効力が生じますか
署名だけでは完了しません。大臣の確認と家庭裁判所の許可を受け、許可審判の確定まで確認します。
合意後に後継者が亡くなっても効力は続きますか
旧代表者の生存中に後継者が死亡した場合など、法律上の失効事由があります。死亡の時期と家族関係を示して専門家へ確認してください。