相続した非上場株式が売れないとき 納税資金の不足を整理する

非上場株式を相続しても、希望する時期に希望額で売れるとは限りません。一方、売却の交渉が続いていることだけで、相続税の申告や納付の期限が延びるわけでもありません。
納付予定額と確保できた現金を先に比べ、未成立の売却代金を分けて管理します。税理士等の試算を受けた後、会社や金融機関へ何を確認するかを一つの資金表で整理しましょう。
- 売れない株式の税評価と現金不足を分けられる
- 売却見込みを確保済み資金へ数えず管理できる
- 借入や延納等を期限前に相談する資料がわかる
売れない株式と相続税の評価を分けて考える

「売れない」と「価値がない」は同じではありません。非上場株式の相続税評価は、取得する株主の区分や会社の規模、資産・利益等に応じて行うため、市場で換金できないことだけを理由にゼロとはできません。
例えば、自分は経営に参加していないから配当還元方式だと決めるのも早計です。本人と同族関係者の保有状況など、評価方式の判定に必要な資料を確認します。
まず税理士等へ株主名簿、定款、決算書、取得株数を渡し、相続税全体の見込みを出します。株式自体の評価額と、自分が納める相続税額は別の数字です。
以下は、本人の納付見込みを仮に400万円とした架空例です。基礎控除、他の遺産、債務、税額軽減等の計算を済ませたものではなく、資金確認の方法だけを示します。
確定した現金と未成立の売却代金を分ける

納付に使える資金は、税の納期限までに自分が適法に使えることと、実際に入金することを確かめます。買ってほしい金額や交渉相手の口頭の感触を、確保済み資金へ足さないようにします。
| 項目 | 仮の金額 | 確定状況 | 資金表での扱い |
|---|---|---|---|
| 本人の納付見込み | 400万円 | 税理士等へ試算を依頼 | 必要額として記載 |
| 納付に使える現金 | 100万円 | 使用権限と残高を確認済みという前提 | 確保済み |
| 自社株の売却見込み | 500万円 | 買い手・契約・入金日が未確定 | 見込み欄へ分離 |
| 現時点の不足 | 300万円 | 400万円-100万円 | 先に手当てを検討 |
売却見込み500万円があっても、この段階で不足は解消していません。実際の売却代金が決まった後も、譲渡に関する税金や費用を踏まえて、納付に回せる額を見直します。
入金予定日と税の納期限を同じ表に置く
相続税の申告・納付は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。売却の入金がその後なら、代金の多寡とは別に、期限までの資金が不足します。
予定日が不明な行は空欄にせず「未確定」と書きます。担当者、次の回答予定日、成立に必要な条件を加えると、催促や別の手当てを始める時点が見えます。
買取交渉と借入相談を期限から逆算する

発行会社への任意の買取相談は選択肢ですが、相続人から頼めば必ず買う仕組みではありません。会社側の意思、必要な機関決定、分配可能額等の制約と、実際の支払資金を確認します。
第三者へ譲渡する場合も、譲渡制限や承認手続等を調べます。売却先が見つかったことと、会社の承認や契約が整ったことを、同じ段階として扱わないでください。
借入れを検討するなら、仮審査、正式承認、担保の設定、融資実行を分けて日程を聞きます。申込みが受け付けられただけでは、300万円の不足を埋めたことにはなりません。
| 相談先 | 尋ねる内容 | 表へ反映する結果 |
|---|---|---|
| 発行会社 | 買取の可否・手続・支払日 | 契約等の確定条件と入金予定 |
| 売却支援の専門家 | 譲渡制限・買い手・税費用 | 手取り額と成立までの条件 |
| 金融機関 | 返済原資・担保・実行日 | 借入可能額と期限前の実行可否 |
| 税理士等 | 税額試算の前提と変更点 | 必要額の更新と代替手段 |
売却契約の手順を検討している間も、この表は更新します。一つの交渉の回答が出るまで何もしない状態を避け、期限前の選択肢を並行して確かめましょう。
延納や物納は要件と申請期限を先に確認する

金銭での一括納付が難しい場合は、延納や物納の要件を早めに確認します。株が売れない事情だけで、どちらも自動的に認められるわけではありません。
延納は、相続税額が10万円を超え、金銭納付が困難な金額の範囲であることなどが条件です。原則として担保と利子税が必要で、延納税額100万円以下かつ期間3年以下なら担保不要という例外があります。
物納は、延納によっても金銭納付が困難な事情や、物納に充てる財産の種類・状態等の条件を別に確認します。特に譲渡制限株式は、物納に不適格な財産として挙げられています。「この非上場株をそのまま渡せばよい」とは判断できません。
いずれも、希望するだけでは足りず申請と許可が必要です。期限内申告の場合は原則として申告期限までの申請となるため、現金不足300万円の表と売却・借入れの状況を、期限が迫る前に税務署や税理士へ示してください。
関連する資料の準備は、土地の相続税が払えないときの対処法 売却と延納物納の判断基準も参考にしてください。
よくある質問

買い手がいない非上場株式はゼロで相続税を計算できますか
売れないことだけではゼロになりません。取得者の株主区分や会社の状況等に応じた評価を確認します。
売却予定額が納税額を超えていれば安心ですか
未成立の売却は確保済み資金に含めません。契約、承認、支払日と税費用を確認し、納期限までの不足を別に出します。
株が売れない場合は必ず延納できますか
必ずではありません。金銭納付困難額、担保等の要件と申請期限を確認し、税務署や税理士へ早めに相談します。