合同会社の社員が亡くなったら 定款と持分承継を調べる

合同会社の社員だった父が亡くなったら、最初に見るのは死亡時の定款です。相続人へ持分を承継する条項があるかによって、子が社員になる経路と、会社に持分の払戻しを求める経路が分かれます。
会社の登記だけでは、全社員の人数や相続条項は分かりません。定款と登記、遺言と戸籍を合わせ、会社を続ける判断と個人の相続を分けて進めます。
- 定款の相続条項で社員資格と払戻請求を分ける方法
- 全社員と業務執行や代表の役割を照合する資料
- 一人会社の解散と変更登記や払戻しの準備
定款の出資者と登記の業務執行や代表の役割を分ける

合同会社の「社員」は、働いている従業員ではなく、会社に出資する人です。父が社員だったとしても、子が株式会社の株式を受け取る場合と同じように、当然に社員になれるわけではありません。最初に、父が亡くなった時点で有効だった定款の全文を会社から確認します。
定款では全社員の情報や、業務執行・代表の定めを読みます。一方、合同会社の登記には業務を執行する社員や代表する社員等が記載されます。登記に父の名しか見えないから「出資者は父一人」と決めず、定款の全社員と突き合わせてください。
| 資料 | 読む事項 | この資料だけでは決まらないこと |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 父の業務執行や代表の地位、本店、資本金 | 登記に現れない社員を含む全社員の人数 |
| 死亡時の定款 | 全社員、相続による持分承継、業務執行・代表の定め | 実際の相続人と遺言の効力 |
| 遺言と戸籍等 | 持分や払戻請求権の指定、相続人の関係 | 定款にない承継条項が当然に追加されるわけではない |
社員になること、業務を行うこと、会社を代表して契約することは、関連していても同じ資格ではありません。父が代表社員だった場合には、持分を誰が受け取るかに加え、誰が会社名義で署名できるのかを確認します。
相続条項がない会社とある会社で取得する権利を分ける

会社法607条では、社員の死亡は法定の退社事由です。そのうえで608条は、死亡した社員の相続人が持分を承継する旨を定款で定められるとしています。この条項の有無が、相続人が社員になる経路と、会社へ払戻しを求める経路を分けます。
| 死亡時の定款という仮定 | 相続人が調べる権利 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| A社に相続承継の定めがない | 死亡退社に伴う持分払戻請求権 | 退社時の会社財産、他の社員の有無 |
| B社に相続承継の定めがある | 条項に基づく持分と社員資格の承継 | 条項の全文、相続人、遺言、業務執行・代表の定め |
このA社とB社は、仕組みを比較するための仮定です。A社で父が遺言に「持分を長女へ」と書いていても、それだけで定款にない社員資格の承継を実現できるとはいえません。遺言が何を対象としているかも含め、会社と司法書士や弁護士へ資料を示します。
複数の相続人では権利を行使する一人と取得者を混同しない
B社で複数の相続人が持分を承継する場合、会社法608条5項は、その持分について権利を行使する一人を定めることを原則としています。会社が権利行使に同意する場合の例外もありますが、連絡担当を一人決めただけで、その人が持分全部を単独取得したことにはなりません。
遺産分割で一人へ集中させる場合の扱いや登記には、条項と取得経緯に応じた確認が必要です。「長女が店を手伝っていた」という事情だけで決めず、誰がどの権利を承継し、どの範囲を行使するのかを別欄に残してください。
一人会社は社員ゼロによる解散の有無を先に調べる

父が唯一の社員で、死亡時の定款に相続による持分承継の定めがない場合は、社員が欠けたことによる会社の解散が問題になります。会社法641条の解散は、会社の預金や不動産が直ちに子の個人財産へ移るという意味ではありません。
たとえば登記に父だけが記載されていても、定款で別の出資者が残る会社かもしれません。反対に、父だけが全社員で承継条項もないなら、通常の営業を続ける判断を急がず、清算に関わる手続きと契約対応を相談します。
相続人が会社の印鑑を保管していることも、代表権を得た証拠にはなりません。銀行への連絡、従業員への給与、仕入れや賃料の支払いなど期限が迫る事項は一覧にし、誰が適法に対応できるかを会社の専門家へ確認してください。
変更登記と持分払戻しに必要な資料を別々に渡す

業務執行社員や代表社員など登記事項に変更が生じた場合は、会社法915条により原則として本店所在地で2週間以内の変更登記が必要です。遺産分割の話し合いが終わるまで全て待ってよいとは考えず、死亡日と変更事項、提出者の権限を早めに司法書士へ伝えます。
払戻請求権を引き継ぐ経路では、611条により退社時の会社の財産状況で計算することが基本です。父が設立時に100万円を出資したから、必ず100万円が直ちに返るというものではありません。資産と負債、損益、退社時に完了していない取引の資料を確認します。
| 相談する作業 | 登記・定款・遺言・戸籍等に加える資料 | 回答後に残す記録 |
|---|---|---|
| 変更登記 | 登記事項の変更内容、後任の選定等を示す資料 | 申請日、不足資料、登記完了の確認 |
| 払戻額の計算 | 退社時の財産状況、未完了取引 | 計算基準日、未確定額、支払条件 |
| 払戻しの実行 | 剰余金や会社資金、債権者の状況 | 債権者保護手続きの要否と支払予定 |
払戻額が会社の剰余金額を超える場合などは、635条の債権者保護手続きも関係します。請求権があることと、希望した日に全額を受け取れることを分け、会社財産を相続人が先に引き出す方法で代用しないようにします。払戻しと相続に伴う税務も、計算資料を税理士へ渡して別に確認してください。
まず死亡時の定款を探し、登記と並べるところから始めます。会社以外の財産や借金も調べる場合は、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類を参考に、会社の資産と父個人の遺産を別々の一覧へ整理してください。
手元の資料と未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

合同会社の社員の持分は子が当然に相続できますか
当然には承継できません。死亡時の定款に相続による持分承継の定めがあるかを確認し、社員資格の承継と持分払戻請求権を分けます。
登記に父の名前だけがあれば一人会社ですか
登記だけでは全社員を判断できません。合同会社の登記は業務執行社員や代表社員等を記載するため、全社員を記載した定款も合わせて確認します。
持分の払戻しでは出資した金額がそのまま返りますか
そのまま返るとは限りません。退社時の会社財産の状況で計算し、未完了取引や債権者保護手続き、会社の支払資金も確認します。