非上場株式の相続税評価 方法と必要資料

非上場株式には市場価格がないため、相続税の評価では会社の規模や資産だけでなく、誰が取得するかも確認します。同じ会社の株式でも、取得する人の株主区分によって評価方法が変わる場合があります。
最初に見るのは、決算書の純資産だけではありません。株主名簿と家族関係、議決権の内訳を用意して株主区分を調べ、その後に会社規模と資産の内容から計算方法を確認します。
- 取得する人の株主区分と会社規模の判定順序
- 類似業種比準方式と純資産価額方式の違い
- 配当還元方式や特定の会社の扱いと必要資料
最初に取得者と同族関係者の議決権を確認する

取引相場のない株式の評価は、大きく原則的評価方式と、一定の少数株主に用いる配当還元方式に分かれます。どちらを使うかは、株主区分を判定してから決めます。
本人の持株割合だけで少数株主と判断しない
自分が取得する株式が少なくても、親族や関係会社など同族関係者の議決権を合計して判定する場面があります。家族全体で会社を支配している人を、本人の割合だけで少数株主と決めることはできません。
株主名簿、親族関係図、種類株式の内容をそろえます。どの範囲を合計し、中心的な株主に当たるか等の細かな要件があるため、名簿の人数だけで判定しないでください。
相続開始時の情報をそろえる
評価の基準となるのは相続開始時の状態です。生前の試算から相続までに株式移転や増資、資産売却等があれば、同じ計算書を使い続けられるとは限りません。
株数の変動や議決権の制限がある場合は、その経緯を税理士へ伝えます。相続人の間で取得株数を決める際にも、取得後の株主区分と評価への影響を確認します。
原則的評価では会社規模と業種から方式を分ける

原則的評価方式では、総資産価額、従業員数、取引金額等によって会社規模を判定します。資本金が小さいから必ず小会社、という分類ではありません。
大会社と小会社と中会社で基本の方式が異なる
| 区分 | 基本となる評価方法 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 |
| 小会社 | 純資産価額方式 |
| 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 |
方式の選択が認められる場合や特定の会社の例外もあります。この表だけで自社の評価方式を確定せず、判定明細と最新通達に対応させます。
類似業種比準方式は利益だけで計算しない
類似業種比準方式は、類似する上場会社の株価を基に、配当、利益、純資産等を比準して評価する方式です。会社の利益が下がったから株価も同率で下がる、と単純には計算できません。
業種や対象となる数値と期間、非経常的な損益等の調整を確認します。決算書の数字を一つ選んで掛けるのではなく、評価明細の定めに沿って整理します。
純資産価額方式では会社の財産と負債を評価し直す

純資産価額方式は、会社の資産を相続税の評価ルールで評価し直し、負債等を差し引いて計算します。決算書の純資産を発行済株式数で割るだけの方法ではありません。
土地や保険など帳簿と評価額が違う財産を調べる
不動産、有価証券、保険契約等では、帳簿の金額と相続税評価額が異なる場合があります。会社が持つ土地は、所在地や利用状況、取得時期なども確認が必要です。
課税時期前3年以内に取得又は新築した一定の土地や家屋等については、原則として通常の取引価額で評価する取扱いがあります。個人の相続財産の評価を、そのまま全て会社資産へ当てはめないでください。
評価差額の控除率は古い計算例を流用しない
現行の財産評価基本通達186の2では、評価差額に対する法人税額等に相当する金額の割合は38%とされています。以前の37%を使う解説と混在するため、相続開始時に適用される通達と明細を確認します。
この割合は、相続した株式全体から38%を差し引く制度ではありません。所定の評価差額に対する控除であり、持株割合等による調整も含めて計算します。
配当還元方式と特定の会社は別の要件で確認する

同族株主以外の一定の株主等には、配当還元方式を用いる場合があります。ただし配当が少ない会社なら、どの相続人もこの方式を選べるわけではありません。
無配当でも評価額が必ずゼロになるわけではない
配当還元方式には、配当金額や資本金等の確認と所定の計算が必要です。無配当の会社であっても、一定の取扱いがあり、直ちに評価ゼロとするものではありません。
取得者の議決権や役員の地位などの情報を省かず、適用対象かを先に確かめます。安い評価方法だけを先に選び、株主区分を後から合わせる方法は避けてください。
土地保有会社や開業直後の会社は一般の表だけで決めない
株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社、休業中や清算中の会社等には、特別な評価の取扱いがあります。全てを一律に通常の純資産価額方式だけで説明することもできません。
特に多額の不動産や他社株式を持つ会社は、保有割合と判定時点を確かめます。事業会社という呼び方や定款の事業目的だけで判断しないでください。
株価と納税資金と経営権を一緒に確認する

評価額が分かっても、会社の株式をその価格ですぐ売れるとは限りません。相続税の計算に使う価額と、売買やM&Aで合意する価格は別に考えます。
決算書に加えて株主と資産の資料を集める
初回相談には、直近の決算書と法人税申告書、株主名簿、定款、資産明細、不動産や保険等の資料を用意します。必要な期間や追加資料は会社ごとに税理士へ確認してください。
遺産全体の預金が少ない場合は、税額と支払時期も見積もります。株式を誰が取得するかは、経営の意思決定と他の家族への分配の両面から決める必要があります。
試算の前提と変更した事実を保存する
生前に株価対策を検討する場合も、報酬や配当、資産移転が事業と家族に与える影響を確認します。税額だけを下げるための取引には別の課税や資金流出が生じることがあります。
まず株主名簿と決算書をそろえ、原則的評価か配当還元か、特定の会社に当たらないかを確認してください。計算の前提が明確になると、納税資金や事業承継税制の検討へ進めます。
会社株式以外の財産も含めて確認する方法は、親の財産の調べ方にまとめています。株式以外に納税へ使える預金がどれだけあるかも調べてください。
よくある質問

非上場株式は決算書の純資産で評価しますか
そのままとは限りません。株主区分と会社規模等を判定し、純資産価額方式でも資産や負債を相続税のルールで評価し直します。
取得する株式が少なければ配当還元方式ですか
本人の株数だけでは決まりません。同族関係者の議決権や中心的な株主等の要件から、配当還元方式の対象かを判定します。
相続税評価額と売却価格は同じですか
同じとは限りません。相続税評価額は税務上のルールで算定し、売却価格は買い手との交渉や事業の収益性等によって決まります。