遺産確認の訴えとは 遺産の範囲が争われたときの手続き

「その土地は父の遺産だ」「名義人自身の財産だ」と争っていると、誰に分けるかを話し合う前に、分割の対象かどうかを確かめる必要があります。
遺産確認の訴えは、特定の財産が遺産に属することを裁判で確定するための手続きです。
存在の分からない遺産をまとめて探してもらう制度ではありません。
まず争われている財産と、それを遺産だと考える根拠を特定し、遺産分割や返還請求などとの関係を整理します。
- 遺産確認の訴えと遺産分割や財産調査の違い
- 当事者全員の関与と提訴前に集める資料
- 判決後の分割と申告期限を並行して進める考え方
遺産確認の訴えは特定の財産が遺産に属するかを確定する

遺産を探すための包括的な調査とは異なる
この訴えで問題になるのは、具体的に特定した土地や預金等が、現在、遺産分割前の共有関係にある財産かどうかです。
「隠された財産をすべて開示してほしい」というだけの目的では、訴えの対象や請求を十分に特定できません。
資料が見つからない段階なら、先に親の財産の調べ方と照会先を確認します。
調査で把握した財産について帰属が争われたときに、訴訟の必要性を検討する順番です。
分け方の争いと遺産の帰属の争いを区別する
自宅が遺産であることには異論がなく、長男と長女のどちらが取得するかでもめているなら、中心は遺産分割です。
他方、長男名義の土地が実質的には父の遺産ではないかという争いは、帰属の問題になります。
第三者との所有権争いや、すでに処分された財産の代金の請求などでは、別の請求が適切な場合もあります。
問題の財産と現在の権利関係によって、使う手続きを選びます。
登記や通帳の名義だけで財産の帰属を決めない

取得資金や契約の経緯を時系列で確認する
名義と実質的な権利関係が異なると主張するなら、その理由が必要です。
登記事項証明書、売買契約書、資金を出した記録、取得後の管理や収益の帰属などを、取得時から死亡時まで整理します。
名義が父でないことだけで遺産から除外できるとは限らず、父が代金を出したことだけで遺産と確定するわけでもありません。
贈与や貸付け等の関係も考えられるため、資料全体を検討します。
死亡後の引出しは返還請求など別の問題も生じる
死亡後に他の相続人が預金を引き出した場合は、残存する預金の帰属だけでなく、引出金の返還や処分された財産を分割対象とする扱いが問題になります。
遺産確認の訴え一つですべて解決できると考えず、引出日と用途、現在の所在を確認してください。
裁判は原則として共同相続人全員の関与を検討する

家裁の分割手続きと民事訴訟を区別する
遺産分割の調停・審判は家庭裁判所の手続きですが、遺産確認の訴えは民事訴訟です。
請求の内容や訴額等を踏まえ、適切な裁判所を確認する必要があります。家庭裁判所の書式へ財産名を書けば同じ手続きになるわけではありません。
請求の対象と裁判所は具体的な事件で確認する
遺産確認の訴えは、原則として共同相続人全員を当事者とし、矛盾しない一つの判断を受ける必要があります。
専門的には固有必要的共同訴訟といい、賛成する相続人だけを集めればよいというものではありません。
ただし、相続分を全部譲渡した人には当事者適格がないとした最高裁判例があります。相続分の譲渡の有無も確認が必要です。
誰を原告・被告にするか、第三者の権利主張へどの請求を組み合わせるかは、具体的な権利関係から判断します。
相続人調査と対象財産の整理をしたうえで弁護士へ相談してください。
確定判決で遺産の範囲を固めて分割手続きへ進む

勝訴しても取得者や分け方が自動的に決まるわけではない
遺産に属するとの判断が確定すると、その財産を分割の対象とすることを前提に手続きを進められます。
ただし、誰が最終的に取得するか、代償金をいくら払うかなどは、その後の分割で別に決めます。
調停中の扱いと裁判の進行を弁護士と調整する
既に遺産分割調停が始まっているなら、帰属の争いと訴訟の状況を家庭裁判所にも伝えます。
すべての事件が同じように停止するとは限らないため、訴訟で確定すべき点と、並行して協議できる点を分けます。
訴訟中も相続税申告の準備を進める

未分割でも申告期限は原則延びない
訴訟中というだけで、相続税の申告・納付期限が当然に延長されるわけではありません。
未分割での申告方法や、財産の帰属が後に変わった場合の修正等を、税理士と確認します。
相続税の10か月の期限を確認し、申告に必要な資料の収集は裁判の結論を待たず進めてください。
相談には財産資料と争点の一覧を持参する
対象財産、現在の名義、遺産と考える理由、相手の説明、裏付け資料、進行中の調停や申告期限を一枚にまとめます。
相手の態度への不満だけでなく、どの権利関係を確定したいのかが伝わる資料が、次の手続きを選ぶ助けになります。
よくある質問

遺産確認の訴えで隠し財産をすべて調べてもらえますか
一般的な財産探索の手続きではありません。特定の財産が遺産に属するかを判断するため、対象と根拠を具体的に整理する必要があります。
一部の相続人だけを相手に裁判できますか
原則として共同相続人全員の関与が必要です。ただし相続分を全部譲渡した人などは扱いが異なるため、当事者の構成を弁護士に確認します。
遺産だと確定すれば自分が取得できますか
遺産に属することの確定と、最終的な取得者の決定は別です。確定後も協議や調停・審判によって分割を進める必要があります。