負担付遺贈とは 約束が守られないときの催告と取消し

負担付遺贈は、財産を受け取る人に、扶養などの義務も負わせる遺贈です。約束が守られなくても、それだけで自動的に遺言が無効になるわけではありません。義務の内容を確認し、相続人が相当な期間を定めて履行を求めても実行されないときは、家庭裁判所へ遺贈に係る遺言の取消しを求める手続きを検討します。
- 法的な義務と遺言に添えた希望の文章を区別する
- 相続人による催告と家裁の取消しは段階が違う
- 遺贈の価額、履行した部分、実行できない事情も記録する
負担付遺贈は財産を渡す相手に義務も負わせる

扶養などの義務と遺贈の内容を対応させる
たとえば遺言で、ある人へ財産を遺贈する代わりに、配偶者の生活費を毎月支払う義務を負わせることが考えられます。ただし、「家族で仲良くしてほしい」という希望の文章から、直ちに同じ義務が生まれるとは限りません。
どの財産を誰へ渡すか、誰のために何をするかが遺言にどう書かれているかを確認します。民法1002条では、負担付遺贈の受遺者は、遺贈の目的の価額を超えない限度で負担した義務を履行する責任を負います。
条件付き遺言とも区別する
条件が満たされたときに効力が生じる指定と、遺贈を受けた人に義務を負わせる指定では、問題になる順序が違います。「面倒を見るなら渡す」という言葉だけを見て決めず、遺言全体からどういう内容かを確認してください。
相続人は相当な期間を定めて履行を催告できる

履行を受ける人と取消しを求める人は同じとは限らない
民法1027条は、負担付遺贈を受けた人が義務を履行しないとき、相続人が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にも履行されなければ、家裁へ取消しを請求できるとしています。負担の利益を受ける人が、必ず相続人であるとは限りません。誰の立場で何を求めるかを確かめます。
履行しない事情と証拠を確認する
例として、遺言に月額5万円の生活費支払いが具体的に定められているなら、支払期日、支払額、実際の入金と不足を整理します。催告では対象の義務と未履行部分を明らかにし、履行に必要な相当の期間を設定します。
| 記録する欄 | 残す内容 |
|---|---|
| 義務の根拠 | 遺言の該当部分と対象財産 |
| 未履行の状況 | いつから何が実行されず、いくら不足しているか |
| 催告の内容 | 求めた履行、定めた期間、送付・到達の記録 |
| 相手の返答 | 実行できない理由、一部履行や代替提案 |
何日なら必ず相当といえるかは、義務の内容で変わります。取消しを見据えるなら、催告前に弁護士へ文面と期間を確認し、家族の感情だけを伝える通知にしないようにします。
履行がなければ家裁へ取消しを求める手続きを検討する

受遺者と利益を受ける人の陳述も聴かれる
催告期間が過ぎても履行がない場合、相続を開始した地を管轄する家裁へ、負担付遺贈に係る遺言の取消しを求める手続きを検討します。家裁は、受遺者と負担の利益を受けるべき人の陳述を聴くことになっています。
相談・申立ての準備として、遺言、相続関係がわかる戸籍、財産の取得状況、催告と到達の資料、支払い等の記録をまとめます。相手が説明している事情も省かずに示してください。
取消しは自動でも家族の宣言だけでもない
期間を過ぎたからといって、相続人が自分で受遺者の口座を解約したり、不動産を取り戻したりしてよいわけではありません。取消しを求める対象と、認められた後の財産の扱いを手続きに沿って確認します。遺言の全条項が当然に消えると考えることも避けます。
遺贈の価額と履行状況を一緒に確認する

一部履行や受ける側の拒否も事情として残す
受け取った財産の価額と、負担する義務の内容・履行状況を一緒に確認します。遺贈の目的の価額には責任の限度という意味があり、受遺者へ無制限の支出を求められるとは限りません。
また、支払いが一部ある場合や、支援を受ける側が訪問を拒んでいる場合は、何が実行され、何が妨げになったかを記録します。扶養の方法が遺言でどこまで指定され、別の支援を提案していたかも判断資料になります。結果だけで必ず取消しになるとは断定できません。
「相続させる」という指定に義務が付いている場合など、ここで扱う遺贈とは法的な性質が違う可能性もあります。原本の言葉を言い換えずに専門家へ示し、適用する手続きを確かめてください。
関連する手順は、公正証書遺言の必要書類と作り方 公証役場への相談から完成までで確認できます。
よくある質問

負担付遺贈で約束を破ると自動的に無効ですか。
自動的に無効になるわけではありません。相続人による相当期間の履行催告と、期間内に履行がない場合の家裁への取消請求を検討します。
生活の世話をしてもらう人が取消しを申し立てますか。
負担の利益を受ける人と相続人は同じとは限りません。民法1027条の催告と取消請求は相続人の立場で検討するため、関係者の立場を確認してください。
受け取った財産以上の費用も必ず負担させられますか。
民法1002条は、遺贈の目的の価額を超えない限度で履行責任を負うと定めています。義務の内容、財産価額、一部履行等を合わせて確認します。
まず遺言の義務が書かれた部分を確認し、約束と実際の履行を日付ごとに並べてください。催告をする前に、その義務へ適した文面・期間と取消しの手続きを相談します。