兄弟姉妹に相続させたくないとき 遺言と予備の受取人の備え

自分の兄弟姉妹に財産を相続させたくない場合は、遺言で希望する取得先を具体的に定めることを検討します。「兄には渡さない」とだけ書くより、誰へ何を渡すか、指定した人が先に亡くなったらどうするかまで備えることが大切です。
ただし、親の相続で自分の兄弟へ渡したくないという話は別です。まず誰が亡くなる相続を考えているのかを確認し、自分の遺言として必要な指定と保管・執行を整理しましょう。
- 自分の兄弟と親の子である兄弟の区別
- 取得先と残余財産を漏らさず定める準備
- 受取人の先死亡に備える予備の指定
誰の相続で兄弟を外したいのかを確かめる

本稿は、あなた自身の相続で、あなたの兄弟姉妹へ財産を渡したくない場面を扱います。子やその代襲者、父母・祖父母などの直系尊属に相続人となる人がいない場合等に、兄弟姉妹の相続が問題になります。
| 考えている相続 | 兄弟と呼んでいる人の立場 | 遺留分の確認 |
|---|---|---|
| 自分が亡くなる場合 | 自分の兄弟姉妹、代襲する甥姪 | 兄弟姉妹やその代襲者に遺留分はない |
| 親が亡くなる場合 | 親の子である自分の兄弟 | 子には原則として遺留分がある |
兄弟姉妹には遺留分がないため、有効な遺言で他の人へ全財産の取得先を定めることが考えられます。ただし、配偶者や直系尊属等の遺留分まで消えるわけではなく、家族関係全体の確認が必要です。
絶縁と相続人の廃除を代用にしない
交流を絶ったことだけで、兄弟の法定相続権はなくなりません。また、推定相続人の廃除は遺留分のある人を対象とする制度で、兄弟姉妹を外す手続としては利用できません。財産を受け取ってほしい人を定める方向で準備します。
渡さない指定だけでなく全財産の取得先を定める

遺言の準備表には、受け取ってほしい人と財産を対応させます。配偶者へ自宅、友人へ一定の金銭、残りは別の人へ、という希望があるなら、対象が重複又は漏れていないかを確認してください。
| 準備する欄 | 確認する内容 |
|---|---|
| 第一の取得先 | 氏名等、本人との関係、取得させる理由 |
| 特定する財産 | 登記、口座、持分等の資料 |
| 残りの財産 | 目録にない預金、後から取得する財産の扱い |
| 借金と費用 | 承継対象の検討と執行費用。債権者の権利は別 |
| 実行する人 | 遺言執行者の候補、連絡と資料の所在 |
「自宅は配偶者に」とだけ定めて預金等を残すと、その未指定部分について兄弟との分割が必要になる可能性があります。残余財産の指定も含め、希望する範囲を法律上の文言へ整えます。
不動産は住所だけでなく地番や家屋番号、共有持分を資料で確認します。受取人が相続人か、相続人ではない人への遺贈かでも記載や手続が変わるため、同じ言い回しを全員へ当てはめないようにします。
受取人の先死亡に備え予備の指定を置く

受取人が遺言者より先に亡くなった場合、遺言の指定が当然その人の子へ移るとは限りません。遺贈には受遺者が先に死亡した場合の失効の定めがあり、「相続させる」遺言も先死亡時の解釈が問題になります。
最高裁2011年2月22日判決は、指定相続人が先に死亡した「相続させる」遺言について、他の人へ取得させる意思があると見るべき特段の事情がない限り、効力を生じないと判断しました。法定の代襲相続を、そのまま遺言指定へ置き換えないことが大切です。
取得先と予備の取得先を一組にする
例えば、配偶者Pを第一の取得先、Pが自分より先に亡くなっていた場合の取得先をXとする希望なら、対象財産と条件を一組で検討します。これは準備上の架空例で、完成文のひな形ではありません。
予備の人Xも先に亡くなった場合や、Pへ渡す対象だけを予備指定して預金を漏らす場合も点検します。家族の死亡順と財産の範囲が変わったら、古い遺言のまま希望を実現できるかを見直してください。
遺言の保管と執行と家族変化に伴う見直しを備える

希望を整理したら、現行の有効な方式で作成します。自筆証書なら本文の自書や日付・署名・押印等、公正証書なら公証人による本人の意思確認と証人等の条件を確認します。2026年に公布された将来の制度と、今利用できる方式も分けてください。
自筆証書の法務局保管制度や公正証書の保管を利用しても、財産の漏れや内容の効力が全て保証されるわけではありません。保管先、執行者の連絡先、財産資料を、必要な人が把握できるように準備します。
遺言があっても必要な通知は別に行う
兄弟に取得させない内容だから、一切の連絡が不要になるとは限りません。遺言執行者が任務を始めた場合の相続人への内容通知など、法令上の手続を確認します。遺留分がないことと、相続人としての地位が当然消えることは同じではありません。
結婚、子の出生、養子縁組、受取人の死亡、財産の売却があったら、関係図と指定表を見直します。兄弟へ渡したくない理由だけを残すより、希望する取得先と予備の指定を実行できる状態にしておくことが重要です。
財産の一覧に第一の取得先と予備の取得先を書き、指定のない欄を確認しましょう。その表と家族関係を公証人や弁護士へ示すと、希望を反映した遺言の具体的な相談ができます。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

自分の兄弟姉妹には遺留分がありますか
兄弟姉妹と、その代襲相続人である甥姪には遺留分はありません。親の子である自分の兄弟を外す場面とは区別します。
兄弟には渡さないと書くだけで十分ですか
他の人への取得先と対象財産、残りの財産まで明確にすることが大切です。有効な方式で専門家と内容を確認します。
指定した人が先に死亡したらその子が自動で受け取りますか
当然にそうなるとは限りません。遺言の解釈と法定代襲を分け、予備の取得先と条件を準備します。