成年被後見人の遺言 医師の立会いと本人の意思

成年後見人が付いている親から、財産をどう残したいかという希望を聞いた。後見人が代わりに遺言を作ればよいわけではありませんが、成年被後見人だから一切作成できないとも限りません。
民法973条は、事理を弁識する能力を一時回復した時に遺言をするための条件を定めています。本人の能力と意思、医師の立会い、遺言の方式を分けて準備することが大切です。
- 遺言は本人が行い後見人が代理できないことを知る
- 医師二人以上の立会いと本人の状態を確認する
- 医師の付記と通常の遺言方式の両方を整える
本人が遺言を希望することと後見人の代理を分ける

遺言は、本人の最終意思として行うものです。後見人が本人に代わって財産の配分を決め、署名して成立させることはできません。公正証書遺言でも代理人による作成はできないと、日本公証人連合会が説明しています。
家族や専門家が、本人の使者として資料をそろえ、準備段階で公証役場へ希望を伝えることと、本人の代わりに遺言をすることは別です。家族が文案を用意した場合も、それが本人の理解と希望に基づくかを確認する必要があります。
また、成年被後見人と被保佐人を混同しないでください。民法962条は遺言に行為能力制限の規定を適用しないとし、963条は遺言をする時の能力を求めています。973条の医師の立会いは、成年被後見人についての特別の条件です。
一時的な回復と医師二人以上の立会いを確認する

成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時に遺言をするには、医師二人以上の立会いが必要です。主治医の診断書を後で一枚付ければ、この条件を満たすというものではありません。
まず主治医等へ、本人がどのような遺言を希望し、いつ、どの方式で作成する予定かを相談します。本人の状態と、もう一人以上の医師が立ち会えるか、当日の判断や記録をどう行うかを具体化しましょう。
| 確認すること | 代わりにならないもの |
|---|---|
| 遺言時の本人の判断能力 | 過去の診断名や家族の印象だけ |
| 医師二人以上の立会い | 診断書一枚の事後添付だけ |
| 本人の財産配分の意思 | 後見人や子ども全員の賛成だけ |
| 作成する遺言の方式 | 医師が立ち会ったという記録だけ |
検査の点数や会話ができた事実だけから、必ず有効な遺言を作れると決めないことも大切です。岡山家裁のFAQも、条件を満たして作成しても後で効力が争われる場合があるとして、必要に応じた相談を案内しています。
医師の付記と署名押印を遺言の方式へ対応させる

立ち会った医師は、遺言をする時に、精神上の障害によって事理を弁識する能力を欠く状態ではなかった旨を遺言書に付記し、署名し、印を押すことが求められます。単に立会人として氏名を並べるだけの規定ではありません。
秘密証書遺言の場合は、同じ趣旨の記載、署名、押印を封紙に行うとされています。どの遺言方式を選ぶかに合わせ、どこへ何を記載するかを、作成を支援する法律専門家と医師が事前に確認します。
この特別条件を満たすことと、通常の遺言方式を満たすことも別です。自筆証書なら本人の自書等、公正証書なら公証人による作成と証人等の要件を、それぞれ確認しなければなりません。医師二人がいれば通常の方式を省略できる、とは考えないでください。
公正証書を選ぶ場合の記録や署名等の具体的な扱いは、現在の作成方法に合わせ公証人へ相談します。電子化されているから973条の本人の能力や医師の立会いまで不要になる、と自己判断しないことが大切です。
医師と公証人へ内容と資料を共有して無理な作成を避ける

相談に持参するのは、後見の登記事項や審判の資料、本人の診療・介護の経過、財産の一覧、本人が希望する相手と内容などです。家族の希望と本人から聞いた言葉を分け、誰がいつ何を聞いたかが分かる形にします。
当日は、本人に用意した答えを繰り返させるのではなく、内容と結果を理解して決められるかを確認する必要があります。医師の予定が空いていることや家族の都合を優先し、本人の体調や判断の状態が整わないまま進めないでください。
録音や診療記録等も、有効性を自動的に保証するものではありません。保存方法や本人への配慮も相談し、家族間に争いがある場合はその事情を隠さず伝えます。作成の可否が難しい場合には、別の日程や支援の方針も含め、担当の医師と法律専門家に判断を求めましょう。
関連する基本事項は、遺言書の書き方 自筆証書の記載例と無効を防ぐ確認点も参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

後見人が本人の代わりに遺言書へ署名できますか
できません。遺言は本人が行うもので、公正証書遺言でも代理作成はできません。家族等が準備資料を集めることとは区別します。
主治医の診断書があれば医師一人でよいですか
成年被後見人について民法973条は医師二人以上の立会いを求めます。診断書一枚を後で添えるだけで、この条件を満たすものではありません。
医師二人が立ち会えば必ず有効ですか
必ず有効とはいえません。遺言時の本人の能力、医師の所定の付記等に加え、選んだ遺言方式自体の要件も満たす必要があり、後で効力が争われる場合もあります。