暦年贈与と相続時精算課税は併用できるか 父母別の控除と計算例

父からは相続時精算課税、母からは暦年課税という併用は可能です。ただし、同じ父から受けた同じ年の贈与を、二つの制度へ自由に振り分けることはできません。
最も間違えやすいのは、父母の双方を精算課税にした場合も110万円ずつ控除できる、という理解です。父母の制度を組み合わせた3ケースで、誰の財産から何万円を差し引くのかを比べます。
- 父母別の制度選択と同じ親からの制度の使い分けは異なる
- 父母とも精算課税なら110万円を対象贈与額に応じて配分する
- 贈与時に税額がゼロでも親の相続時へ加える額はケースごとに違う
併用できるのは贈与する人が異なる場合

選択は受け取る子と贈与する親の組合せごとに行う
子が父について精算課税を選んでも、母について選ばなければ、母からの通常の贈与には暦年課税を使います。兄弟もそれぞれ選択するので、兄が父について選んだ制度が弟へ自動的に及ぶわけではありません。
一方、父について一度精算課税を選ぶと、選択年以後の父からの対象贈与を暦年課税へ戻せません。父からの現金だけを精算課税にし、同じ年の株式だけを暦年課税にすることもできません。
すでに選択した年を控えで確かめる
送金の前に過去の選択届出書と申告書を探します。今年新しく選ぶのか、以前から精算課税なのかで、必要な手続きが変わるためです。
制度の全体像と初回届出の注意点は、相続時精算課税の仕組みと選択届出で確認できます。ここからは、2024年以後の同じ年の受贈額をどう計算するかに絞ります。
110万円は暦年課税と精算課税で別の枠になる

暦年課税は贈与する人が増えても年110万円が一枠
母と祖母から暦年課税で受け取るなら、その年の対象額を合計して110万円を差し引きます。「母から110万円と祖母から110万円で全部非課税」とはなりません。
精算課税の基礎控除も対象贈与全体で年110万円
父母とも精算課税なら、父母から受けた対象額の合計に対して110万円です。その110万円を、それぞれの贈与額の比率で配分します。控除を全額父へ付けるなどの自由な配分ではありません。
これに対し、父だけ精算課税で母は暦年課税なら、精算課税の年110万円と暦年課税の年110万円を別に適用できます。累計2500万円の特別控除は、精算課税を使う贈与者ごとに残額を管理する別の枠です。
父母から同じ年に贈与を受ける計算例

ケース1は父母とも暦年課税で合計220万円を受ける
以下は国内居住の成人の子が、父母から2026年に贈与を受ける仮定です。ほかの贈与や住宅資金などの特例はなく、精算課税を選べる年齢等の条件を満たすものとします。
父110万円、母110万円を双方とも暦年課税で受ける場合、合計220万円から基礎控除110万円を引きます。残り110万円に対する贈与税は、ほかの条件がなければ11万円です。
ケース2は父を精算課税にして母を暦年課税にする
同じ受取額でも父だけ精算課税にすると、父の110万円は精算課税の基礎控除、母の110万円は暦年課税の基礎控除の範囲になります。この条件の贈与税はゼロです。
ただし、父について初めて選ぶ年の選択届出は必要です。また、母の110万円は、将来母から相続等で財産を取得する場合、暦年課税の加算対象となることがあります。贈与時ゼロと相続時の扱いを一緒にしないでください。
ケース3は父母とも精算課税で110万円ずつ受ける
合計220万円に対する基礎控除は110万円なので、父母へ55万円ずつ配分します。それぞれ残る55万円に特別控除を使うなら、贈与税がゼロでも期限内申告が必要です。
| 制度の組合せ | 父の基礎控除 | 母の基礎控除 | 確認する結果 |
|---|---|---|---|
| 双方とも暦年 | 父母合計で110万円 | 独立した枠はない | 課税対象110万円 贈与税11万円 |
| 父だけ精算 母は暦年 | 110万円 | 110万円 | 贈与税0円 父の初回届出は必要 |
| 双方とも精算 | 55万円 | 55万円 | 残り各55万円は特別控除と期限内申告を確認 |
父母とも精算課税で600万円と400万円を受ける場合は、比率6対4から控除は66万円と44万円です。残額534万円と356万円へ、それぞれの特別控除残額を使います。この計算は、贈与する人ごとに110万円ある計算とは違います。
生前贈与の加算は父と母それぞれの死亡時に判断する

父の相続では父の贈与だけを制度別に確認する
ケース2の父の110万円は、2024年以後の精算課税の基礎控除内なので、原則として父の相続税へ加えません。一方、ケース3では特別控除を使った父の55万円が、原則として父の相続税へ加わります。
同じ年に母から受けた贈与を、父の相続だからという理由で父の贈与へ混ぜるわけではありません。贈与した人ごとの記録が必要になるのは、この相続時の計算が別々だからです。
母の暦年贈与は加算期間と取得財産から判断する
ケース2の母の110万円は、母の死亡時に相続等で財産を取得するか、加算対象期間に入るかを確認します。暦年課税の加算は、現在すべて一律7年ではありません。
2026年末までの相続は原則前3年、2027年から2030年は2024年1月1日以後の対象贈与、2031年以後は原則前7年です。3年を超える延長部分の100万円控除は各年ではなくその部分の合計に対するものです。暦年贈与110万円と相続税の加算ルールで時期の違いを確認できます。
贈与する人と制度の一覧を作って申告へ進む

過去の選択と今年の金額を一表に記録する
一覧には、贈与した人、受け取った日、財産、評価額、選んだ制度、選択届出の年を記載します。精算課税の人が複数いるなら、年110万円の配分と特別控除の使用額も分けます。
父から少額の入金が先にあり、後から大きな贈与を受けた場合も、年の途中で表を作り直してください。最初の入金だけを見て申告不要と判断すると、年間合計と合わなくなることがあります。
毎年の計算と制度選択の妥当性を分ける
計算上、今年の贈与税が少ない組合せでも、同じ親について選択を戻すことはできません。将来渡す土地、親の生活費、兄弟への支援予定を含めて選ぶ必要があります。
まず父母ごとの過去の届出控えと今年の贈与一覧を並べ、どのケースに当たるかを確かめてください。そのうえで、申告が必要な人と特別控除の残額を確認すると手続きがぶれません。
よくある質問

父と母から各110万円なら贈与税はかかりませんか
制度によります。双方が暦年課税なら合計220万円から110万円を控除します。片方が精算課税なら二つの基礎控除を別に使えます。
父母とも精算課税なら220万円を基礎控除できますか
できません。基礎控除は対象贈与の年間合計で110万円となり、父母の贈与額に応じて配分します。
父について今年だけ精算課税を使えますか
今年だけに限定して翌年戻すことはできません。選択した年以後の同じ父からの贈与に精算課税が適用されます。