生命保険の贈与税は誰にかかる 保険料負担者と受取人別の判定

生命保険の保険金に贈与税がかかるかは、契約者の名前だけでは決まりません。実際に保険料を負担した人、保険の対象となる人、保険金を受け取る人の組み合わせで、相続税・所得税・贈与税の扱いが変わります。
家族の保険を確認するときは、まず保険証券と支払履歴を並べます。死亡保険金なのか、満期保険金や解約返戻金なのかも分け、その受取りにどの税金が関係するかを確認しましょう。
- 保険料を実際に負担した人と受取人から税目を判定する方法
- 死亡保険金と満期保険金で変わる課税額と申告
- 契約者変更や保険料贈与で確認したい記録
生命保険金の税金は保険料負担者と受取人で変わる

同じ1000万円の保険金でも、保険料を誰が負担したかで課税の種類が異なります。税金の計算方法を選ぶ前に、保険の役割を整理する必要があります。
契約者名義だけで判断しない
| 役割 | 意味と確認先 |
|---|---|
| 契約者 | 契約の名義人 保険証券や変更履歴で確認 |
| 保険料負担者 | 実際に保険料を負担した人 通帳等も確認 |
| 被保険者 | その人の死亡等が保険事故となる対象者 |
| 保険金受取人 | 保険金を受け取る人 支払内容も確認 |
契約者と保険料負担者は同じことが多いものの、親が子名義の契約の保険料を払っている家庭などでは異なります。証券の契約者欄だけで「子が払っていた」と結論づけないでください。
死亡か満期かを分ける
死亡保険金では、亡くなった被保険者と保険料負担者の関係が重要です。満期や解約では、保険料負担者と受取人が同じかどうかを基に確認します。
病気やけがに伴う給付金等には別の非課税の扱いがあります。本稿は主に死亡、満期、解約の金銭の受取りを扱い、入院給付金等を一律に同じ表へ入れません。
死亡保険金が贈与税になるのは3者が異なるとき

死亡保険金では、被保険者、保険料負担者、受取人がすべて異なる場合に、保険料負担者から受取人への贈与として扱われます。亡くなった人の保険だから必ず相続税、とはなりません。
父が負担し母に保険を掛けて子が受け取る例
父が保険料をすべて負担し、被保険者は母、受取人は子という契約を考えます。母が死亡して子へ保険金が支払われると、父から子へ保険金の贈与があったものとして検討します。
この場合、子に関係するのは贈与税です。母の相続税の申告だけを確認して、保険金の税務手続きを終えたとは判断しないようにします。
亡くなった人自身が負担していた場合は相続税
| 被保険者 | 実際の保険料負担者 | 受取人 | 主な税金 |
|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 子 | 相続税 |
| 父 | 子 | 子 | 所得税 |
| 母 | 父 | 子 | 贈与税 |
表は一人が保険料を全額負担した基本例です。亡くなった父が自分の保険料を払い、子が受け取る場合は相続税の対象となり、受取人が相続人かどうか等によって非課税枠の扱いも変わります。
子自身が保険料を払い、父の死亡時に子が受け取る場合は所得税の区分です。一時金か年金かによって所得区分等も異なるため、贈与税と同じ計算をしません。
満期や解約の受取人が負担者と違う場合を調べる

満期保険金や解約返戻金も、受取人が保険料を負担していなければ、負担者からの贈与として扱われることがあります。満期金だから運用益だけに税金がかかる、という判断はできません。
同じ人なら所得税の課税関係
保険料を負担した本人が満期保険金等を一時金で受け取る場合、通常は一時所得の計算を確認します。他の一時所得がない場合には、受取額から払込保険料等と特別控除50万円を差し引き、その残額の2分の1が課税対象となるのが基本です。
ただし、一定の一時払養老保険等には源泉分離課税の扱いがあり、年金で受け取る場合も別の計算です。商品名と受取方法を確認してから、所得税の申告要否を判断してください。
贈与税では保険金全体が計算の出発点
父が保険料を全額負担し、子が満期金を受け取るなら、贈与税計算の出発点は原則として子が受け取る保険金です。父が払った保険料を差し引いた運用益だけではありません。
たとえば父が保険料800万円を払い、子が1000万円を受け取ったとしても、贈与額を差額200万円とする計算ではありません。通常の暦年課税なら、1000万円を同年のほかの課税対象贈与と集計し、基礎控除や適用税率を確認します。
保険料を複数の人が負担していれば割合を確認する

保険料の負担者が一人でない契約では、全額を最後の契約者へまとめて扱うとは限りません。契約の開始から現在まで、誰がどれだけ負担したかを調べます。
途中で契約者が変わった場合
親から子へ契約者を変更しても、その名義変更だけで直ちに贈与税が課されるわけではありません。ただし、その後に子が解約して返戻金を取得する場合などは、過去の保険料負担に応じた課税が問題になります。
保険料の途中交代があるなら、保険会社へ支払履歴や変更記録を確認します。父が負担した分と子が負担した分で、受取額の対応部分の税目が異なることがあるため、単純に保険の加入年数だけで区切らないでください。
贈与された現金で子が保険料を払う場合
親が現金を子へ贈与し、子がそのお金を自分の財産として管理して保険料を払う方法は、親が直接保険料を負担する場合と区別します。現金の贈与が成立しているかを、合意と送金、その後の管理から確認する必要があります。
毎年の保険料と同額を子名義の口座へ入れただけで、当然に子の負担となるとは判断できません。契約者名義だけを整えるのではなく、実際に誰の財産から支払ったかを説明できるようにします。
現金を贈る場合の基本は、現金贈与の合意と振込記録でも整理しています。受取額や保険期間の条件は契約前に確認してください。
相続税の非課税枠と贈与税の基礎控除を混同しない

生命保険でよく見る「500万円×法定相続人の数」は、相続税の一定の死亡保険金に関する枠です。贈与税がかかる契約へ、そのまま差し引くことはできません。
500万円掛ける人数の枠は贈与税に使えない
亡くなった人が負担した死亡保険金を相続人が受け取る場合は、所定の非課税限度額を相続税計算で確認します。相続人以外が受け取る保険金や、贈与税の区分となる保険金には、同じ枠は使いません。
法定相続人が二人いるから、父の生前の負担による贈与税対象保険金1000万円も非課税だろう、と考えないようにします。枠の金額より先に、どの税目に当たるかを判定します。
他の贈与と合計して申告する
例として、その年の1月1日に18歳以上の子が、父の負担に対応する贈与税対象の保険金1000万円を一時金で受け取り、ほかの贈与等がないとします。相続時精算課税を選んでいない通常の暦年課税なら、1000万円-110万円=890万円です。
父から子への特例税率で、890万円×30%-90万円=177万円となります。子が同じ年に父母から現金ももらっていれば、保険金と合わせた年間合計で計算し直します。
申告・納付は、通常、受け取った子が翌年2月1日から3月15日までに行います。110万円の年間集計は、贈与税の基礎控除の基準も確認できます。
契約変更前に保険証券と支払履歴を並べる

保険を見直す際は、これから保険料を誰が払うかだけでなく、過去の負担と、誰へいつ資金を残したいかをそろえます。契約者を変えれば過去の負担もすべて変わるわけではありません。
解約返戻金と死亡時の保険契約に関する権利を確認する
保険事故が起きる前に保険料負担者が死亡した場合、残った生命保険契約に関する権利が、みなし相続財産となる場合があります。死亡保険金が支払われない契約だから相続税とは関係ない、とは判断できません。
保険会社から現在の解約返戻金相当額等が分かる資料を取り寄せ、契約者と被保険者、亡くなった負担者の関係を税理士へ示します。単なる名義変更時と、負担者死亡時の課税を分けてください。
受取目的と家族の負担を確認する
生活保障、納税資金、特定の子へ残す資金では、必要な受取時期と金額が違います。税金の小ささだけで変更すると、必要な人が必要な時に受け取れないこともあります。
まず保険ごとに「被保険者・契約者・実際の負担者・受取人・受取事由」の五つを書き出してください。保険証券と支払履歴を持って保険会社や税理士へ相談すれば、変更前後の税目と手取り額を具体的に確認できます。
よくある質問

契約者を子に変更しただけで贈与税がかかりますか
通常は名義の変更だけで直ちに贈与税はかかりません。ただし、その後に子が満期保険金や解約返戻金を受け取ると、親が負担した保険料に対応する部分に贈与税がかかる場合があります。
父が保険料を払い子が満期保険金1000万円を受け取ると利益だけが課税されますか
原則として受け取った1000万円全体が贈与税の対象です。父の支払保険料を差し引いた利益だけで計算するものではありません。暦年課税の基礎控除などは別に適用を確認します。
贈与税がかかる死亡保険金にも500万円の非課税枠がありますか
相続税の死亡保険金の非課税枠は使えません。500万円に法定相続人の数を掛ける枠は、相続税の対象となる死亡保険金を相続人が受け取る場合などの要件を満たすときの制度です。