海外財産の相続税はどう決まる 居住地と国籍による課税範囲

海外財産の相続税はどう決まる 居住地と国籍による課税範囲のイメージ

親が海外に持っていた口座や不動産も、日本の相続税の対象になることがあります。「海外の財産だから日本の申告には入れない」と判断せず、まず親と財産を受け取る人の住所、国籍、過去の居住歴を確認してください。

一方、国外に財産があるだけで必ず日本の税金が生じるわけでもありません。課税される財産の範囲を決め、その財産を円で評価してから、基礎控除や税額控除を適用する順序です。

海外資産のある親を亡くした子に向け、課税範囲の見分け方と、申告に向けて集める資料を整理します。

この記事でわかること
  • 親と相続人の住所や国籍から海外財産の課税範囲を確認する方法
  • 海外預金や不動産の評価資料と死亡日の円換算
  • 外国税額控除と日本や現地の手続きを並行する準備
目次

海外財産は住所と国籍によって日本の課税対象になる

海外財産は住所と国籍によって日本の課税対象になるに関する資料のイメージ

日本の相続税は、財産を受け取る人ごとに課税範囲を判定します。同じ親の財産を分けても、子それぞれの住所や国籍などにより確認事項が異なります。

日本在住の日本国籍者は国内外の財産が対象

相続で財産を取得したときに日本国内に住所がある日本国籍者は、原則として国内外の財産が対象です。海外口座へ置いたままでも、日本へ送金しなくても、課税範囲から外れるわけではありません。

例えば日本に住む子が親の国内預金と海外不動産を受け取る場合、国内預金だけを申告対象にすることはできません。海外の不動産についても、日本の相続税での評価額を調べます。

課税対象であることと納税が必要なことは別

国内外すべてが対象となる人もいれば、国内財産に限られる人もいます。ただし、課税対象という言葉は、その財産の全額に直ちに税率を掛けるという意味ではありません。

相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があります。各人の課税範囲や相続時精算課税財産などを整理したうえで、相続全体の計算と申告要否を確かめます。

海外に住む子は親と自分の過去10年の住所を確認する

海外に住む子は親と自分の過去10年の住所を確認するに関する資料のイメージ

海外在住の子であっても、国内財産だけが課税対象とは限りません。日本国籍の有無、自分の過去の住所、亡くなった親の状況を組み合わせて確認します。

日本国籍があり過去10年に国内住所があった場合

財産を取得したときに日本国籍があり、親の死亡日前10年以内に日本国内に住所を有したことがある人は、国外の財産も課税対象になります。数年前に海外へ移住しただけでは、海外資産を外せません。

住所は生活の本拠で判断されます。住民票を抜いた日だけで確定するものではなく、海外留学や一時的な赴任でも国内に住所が残る場合があります。家族、住居、仕事などの実態も整理してください。

海外生活が10年を超えていても対象になる場合

日本国籍の子が過去10年以内に国内住所を持っていなくても、親が法律上の「外国人被相続人」または「非居住被相続人」に当たらなければ、国外財産も対象になります。

例えば子が海外に20年住んでいても、親が日本国籍で国内に住んでいた場合は、「10年以上海外だから海外財産は対象外」とは判断できません。子の海外滞在年数だけで結論を出さないことが大切です。

外国籍の場合は在留資格と親の居住歴も調べる

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外国籍というだけで、海外財産が一律に非課税になる制度ではありません。国内に住所がある人についても、一時居住者に当たるか、親がどの区分かによって範囲が変わります。

一時居住者は所得税の非永住者と区別する

相続税の「一時居住者」は、相続開始時に出入国管理法別表第一の在留資格を有し、過去15年以内に国内住所を持っていた期間の合計が10年以下である人です。外国籍や在住年数だけでは判定できません。

一時居住者が、外国人被相続人または非居住被相続人から取得する場合などは、国内財産に範囲が限られることがあります。所得税の「非永住者」とは定義が違うため、所得税の申告区分をそのまま使わないでください。

親に関する法律上の区分を当てはめる

外国人被相続人とは、死亡時に国内住所があり、所定の在留資格を有する人です。非居住被相続人には、死亡時に国内住所がなく、過去10年にも国内住所がなかった人など、住所と国籍の履歴による条件があります。

外国籍で海外に住む子については、さらに非居住外国人に関する区分も関係します。「外国人の親」という日常の言い方と税法の区分は同じではありません。在留カードや渡航歴、以前の国籍も含めて専門家へ示します。

国内だけが対象となる場合も、財産の所在地は個別に判定します。預金は受け入れた営業所等、株式は原則として発行会社の本店等の所在地によるため、口座を開いた証券会社の国だけで分類しません。

死亡日の残高と評価資料を集めて円に換算する

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課税範囲を絞れたら、対象財産を一覧にします。現地での売却価格や、後日日本へ送金した円額だけでは、日本の相続税評価を確認できません。

口座と不動産で必要な資料を分ける

海外財産の資料を集めるときの確認事項
財産準備する資料の例
銀行預金死亡日残高、通貨、口座名義、支店所在地、未収利息の資料
有価証券死亡日保有明細、銘柄、数量、発行会社、価格資料
不動産権利証明、共有持分、所在、利用状況、現地の評価や鑑定資料
債務や現地税債務残高、負担者、税目、課税通知、納期限と支払記録

国外不動産の評価は、現地の固定資産評価や購入額をそのまま日本の税額計算へ使えるとは限りません。日本の評価原則と現地で取得できる資料を照らし、評価の根拠を残します。

送金時ではなく課税時期の為替を確認する

外貨の円換算は、原則として納税義務者の取引金融機関が公表する死亡日の最終の対顧客直物電信買相場(TTB)等によります。その日に相場がない場合は、直前で最も近い日の相場を用います。

単純な現金の例で、5万米ドル、適用するTTBが1ドル150円なら750万円です。1年後に円安で売却・送金した金額とは分けて記録してください。財産評価の換算と外国税額控除の税額換算にも、それぞれのルールがあります。

現地の相続手続きと二重課税の調整を並行して進める

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現地で誰が財産を引き継ぐかという問題と、日本でどの財産に課税されるかは別です。相続の準拠法や現地の裁判手続きと、日本の納税義務を一つの基準で判断しません。

外国税額控除は税の種類と控除限度を調べる

国外財産について外国で日本の相続税に相当する税が課された場合、日本の相続税で外国税額控除を使えることがあります。ただし、現地で払った税を種類を問わず全額引ける制度ではありません。

その国外財産に対応する日本の相続税額による限度などを計算します。所得税や財産売却に伴う税は、相続に際して発生したという理由だけで相続税相当の税にはなりません。課税通知は税の名称と課税対象が分かる部分まで保存します。

現地手続きの終了を待って日本の期限を過ぎない

日本の相続税の申告・納税期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月です。海外の口座解約や裁判所手続きが続いていることだけで、自動的に延びるわけではありません。

また、一定の有価証券等を非居住者が相続すると、相続税とは別に国外転出(相続)時課税という所得税の検討が必要な場合があります。対象資産や親の居住歴等の要件があり、該当する場合の準確定申告は原則4か月の期限です。

相談には家族の居住歴と財産資料をまとめて持参する

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国際相続では、財産一覧に加えて家族の履歴が判定資料になります。親と相続人の現在の住所だけを伝えるより、過去の移動を時系列にした方が確認を進めやすくなります。

国籍と住所や在留資格を時系列にする

親の死亡日、親と財産取得者の国籍、過去の住所と変更日、在留資格を整理します。国籍変更や二重国籍などがある場合も、現在だけを切り取らず経緯を伝えてください。

不明な口座は、親の財産を調べる手順を参考に、郵便物や取引明細から所在を確認します。海外送金履歴だけでは、親が死亡日にどの財産を所有していたか確定しません。

日本の税務と現地の名義変更の担当を決める

日本の税理士へ課税範囲と評価を、現地の専門家へ口座や不動産の承継手続きを確認し、資料の受け渡しと期限の担当を決めます。海外在住で日本の申告が必要なら、納税管理人の届出も確認してください。

相続税申告の準備と並行して、取得できた証明書と不足資料を共有します。現地資料を待つ期間も含め、死亡日から逆算して予定を組むことが必要です。

よくある質問

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海外の口座から日本へ送金しなければ相続税はかかりませんか

送金の有無では決まりません。財産を受け取る人と亡くなった人の住所、国籍、居住歴などから課税範囲を判定し、国外財産も対象なら日本へ送金せず保有していても計算に含めます。

海外に10年以上住む日本国籍の子は海外財産が対象外ですか

必ずしも対象外ではありません。子に過去10年の国内住所がなくても、親が外国人被相続人または非居住被相続人に該当しなければ、国外財産も課税対象になります。

現地で相続税を払えば日本の申告は不要ですか

不要とは限りません。日本の課税範囲と申告要否を別に確認します。外国で相続税相当の税が課された国外財産には外国税額控除を検討できますが、税の種類や控除限度があります。

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