相続税申告を自分でする手順 必要書類と税理士に頼む判断基準

相続税申告を自分でする手順 必要書類と税理士に頼む判断基準のイメージ

相続税は、税理士に依頼せず自分で申告することもできます。ただ、申告書を埋められることと、財産の範囲や評価を正しく判断できることは別です。最初に、親の財産に何が含まれ、どの特例を使うかを確認してください。

預貯金が中心で資料がそろっている家庭と、土地や非上場株式、過去の贈与がある家庭とでは、必要な作業が変わります。ここでは、自分で進める範囲を決めてから、書類集め、計算、提出と納付までを順に整理します。

この記事でわかること
  • 自分で申告するかを財産と特例から判断する基準
  • 書類集めから申告書の作成と提出までの手順
  • 税理士へ途中から依頼するときに伝える内容
目次

自分で申告できるかは財産評価と使う特例で判断する

自分で申告できるかは財産評価と使う特例で判断するに関する資料のイメージ

相続税の申告を税理士へ依頼しなければならない、という決まりはありません。相続した子自身が、国税庁の様式と説明を使って作成し提出できます。

判断するときは、遺産額だけで線を引かず、財産を評価する難しさ、名義と実際の所有者の違い、特例の条件を説明できるかで考えます。少額でも土地の権利が複雑なら、確認に時間がかかるためです。

現預金が中心なら資料と計算を対応させやすい

例えば、相続人が成人した子1人で、財産が国内の預金だけ、借金や贈与もなく、死亡日の残高と取引が確認できるとします。このような場合は、資料と申告書の数字を対応させやすく、自力で進めるか検討できます。

ただし、子名義の口座でも親が積み立てて管理していたお金や、死亡前に引き出した現金が残っていることがあります。「預金だけだから調査は不要」とまではいえません。

土地や非上場株式は評価の根拠まで必要になる

土地は、面積に路線価を掛けるだけで終わらないことがあります。形や接道、借地・貸付の状況などが評価に影響し、小規模宅地等の特例では取得者と居住等の条件も確認します。

非上場株式や海外財産、過去の相続時精算課税による贈与がある場合も、追加の判断が必要です。書類を集めたうえで、評価や特例だけ相談する方法を含め、税理士が対応できる業務範囲を確かめます。

自分で進める前に確認する事項
確認事項進めやすい状態相談を検討する状態
財産の把握口座と取引資料がそろう名義預金や使途不明の出金がある
評価国内の現預金が中心土地の権利関係や非上場株式がある
分け方遺言や合意内容が明確分割に争いがあり期限も迫る
特例適用条件と証拠を確認できる居住・所有・分割条件が不明

申告が必要かを確かめ提出期限から逆算する

申告が必要かを確かめ提出期限から逆算するに関する資料のイメージ

自分で書き始める前に、申告が必要な家庭かを確認します。相続税の基礎控除は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続人が子1人なら3600万円、子2人なら4200万円になります。

基礎控除以下と特例を使ってゼロになる場合を分ける

相続税の対象となる財産に所定の贈与財産を加え、非課税額や控除できる債務等を反映して基礎控除以下に収まるなら、通常は申告不要です。一方、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して税額をゼロにする場合は、申告が必要になります。

土地の特例を先に差し引いた残額だけを見て「基礎控除以下だから提出しない」と判断しないでください。特例を使うための申告と、税金がいくら残るかを分けて考えます。

未分割でも原則10か月以内に申告する

期限は、親が亡くなったことを知った日の翌日から原則10か月以内です。親の死亡日をその日に知った通常の相続なら、10月14日の死亡に対して翌年8月14日が基本の期限になります。期限が休日等に当たる場合の取扱いも確認します。

家族の話し合いが終わらなくても、申告・納付の期限が自動で延びるわけではありません。未分割では民法の相続分で取得したものとして申告し、分割後に修正申告や更正の請求が必要になることがあります。

特例の適用を後で受けたい場合には、分割見込書などの手続きと期限が関わります。話し合いが止まっている家庭ほど、申告書の作成と分割協議を同時に進める必要があります。

戸籍と財産資料を集め申告書の明細を作る

戸籍と財産資料を集め申告書の明細を作るに関する資料のイメージ

相続人と財産が固まらないまま計算を始めると、後から何度もやり直すことになります。親の戸籍、遺言の有無、口座や不動産、保険、借金を一覧にし、確認済みと未確認を分けてください。

死亡日の残高と過去の取引を調べる

預金は、申告書を作る日の残高ではなく、死亡日現在の残高等で確認します。定期預金の既経過利息や外貨預金など、通帳の表示だけでは足りない項目は銀行へ必要資料を尋ねます。

取引履歴を見る目的は、残高を確かめることだけではありません。死亡前の大きな出金が生活費だったのか、現金として残っているのか、贈与だったのかで申告内容が変わります。照会先と集める資料は、親の財産の調べ方でも確認できます。

土地と保険や贈与の資料を整理する

不動産は登記事項証明書や固定資産評価証明書、地積測量図等を集め、現地の使われ方も確かめます。固定資産税の課税明細があるだけで、相続税評価の必要資料がそろうとは限りません。

死亡保険金は、保険会社の支払明細と実際の保険料負担者を確認します。過去の贈与では、贈与契約書、申告書、相続時精算課税の選択届出書などを探します。2024年の改正があるため、過去の制度と現在の扱いを同じにしないことが必要です。

借入金や未払医療費、葬式費用は、支払先、金額、負担した人が分かるようにまとめます。領収書を持つ人と最終的な負担者が違うなら、その事情も記録しておくと転記の誤りを防げます。

財産の明細から税額計算と各人の納付額へ進む

財産の明細から税額計算と各人の納付額へ進むに関する資料のイメージ

申告書は、第1表の最初から順に空欄を埋めれば完成する書類ではありません。財産や保険、債務の明細を作り、その数字を集計してから、家族全体の税額と各人の納付額を計算します。

相続開始日に対応する国税庁の様式を使う

申告する年だけで様式を選ばず、いつ相続が始まったかに対応する申告書を使います。国税庁の記載要領とチェックシートを一緒に用意し、財産の種類や控除に応じて必要な表を選んでください。

例えば、保険金は第9表、債務・葬式費用は第13表、配偶者の税額軽減は第5表などを使います。申告書の構成は改訂されることがあるため、古い解説の表番号だけで提出書類を決めないようにします。

控除後の納付額と添付書類を照合する

税率を掛けるのは、原則として基礎控除後の額を法定相続分で分けた仮の取得額です。その税額を合計し、実際の課税価格の割合で各人へ配分してから、加算と税額控除等を反映します。

一つの数字を転記するときは、円と千円の単位、端数処理、合計と各人欄を確かめます。財産一覧の総額、各明細の合計、第1表の数字が一致するかを順に照合すると、漏れや二重計上を見つけやすくなります。

使う特例の添付書類は家庭ごとに違います。戸籍や協議書を集めたことで全部そろったとせず、特例の明細、取得者の居住等を示す資料までチェックシートで確認してください。

提出と納付を終えて控えを残す

提出と納付を終えて控えを残すに関する資料のイメージ

書類が完成したら提出します。亡くなった親の死亡時の住所が国内なら、提出先は原則として親の住所地を所轄する税務署です。子自身の住所地と取り違えないようにしてください。

書面提出と電子申告を選ぶ

税務署への持参や郵送のほか、相続税に対応するソフト等を使ったe-Taxによる提出も可能です。e-Taxソフト(WEB版)と確定申告書等作成コーナーでは、相続税の申告書を作成できません。e-Taxソフトや対応する民間ソフト、本人確認と添付書類の送信方法を先に確かめます。

郵送なら余裕を持って発送し、送付書類の写しと発送記録を残します。税務署では2025年1月から申告書等の控えへの収受日付印が原則廃止されています。控えを返送してもらえば受領印で証明できる、という古い手順を前提にしないでください。

申告と納税は別に完了させる

申告書を提出しても、口座から税金が自動で引き落とされるわけではありません。金融機関等の窓口や利用できる電子納税の方法を選び、各人の税額を期限までに納めます。

納付方法によって上限額、利用条件、手数料が違います。期限直前に支払いができなくならないよう、選んだ方法で必要額を納められるか確認し、申告の受信通知や納付記録も保管します。

作業が止まった部分を資料とともに相談する

作業が止まった部分を資料とともに相談するに関する資料のイメージ

自分で進めていて分からない点が出たら、全部を最初からやり直す必要はありません。どの財産、どの評価、どの条件で判断が止まったかを整理して相談すると、依頼する範囲が明確になります。

評価や名義の疑問を質問にする

「申告が難しい」だけでなく、「父の口座から出た現金の使途が分からない」「別居の子が取得する土地に特例を使えるか」と質問を具体化します。関係資料と自分で作った一覧を持参すると、追加で調べることを絞れます。

税務署の相談で制度や様式の説明を受けられても、すべての土地評価や財産調査、書類作成を代行してもらえるわけではありません。確認したいことと作業を任せたいことを区別して窓口を選びます。

依頼する範囲と期限を確かめる

税理士へ途中から依頼する場合は、残っている期限と資料の不足を最初に伝えます。評価だけ、作成済み申告書の確認、申告全体の代理など、受けられる業務は事務所によって異なります。

見積もりでは報酬だけでなく、追加調査、土地評価、修正対応が含まれるかを確かめてください。自分で進めるかは費用だけで決めず、期限内に根拠のある申告を完成できるかで判断します。

よくある質問

よくある質問に関する資料のイメージ

相続税の申告は税理士に頼まなくてもできますか

自分で申告することもできます。土地や非上場株式の評価、名義預金、特例の条件が複雑な場合は、必要な資料をそろえて税理士への相談を検討してください。

相続税がゼロでも申告は必要ですか

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用してゼロになる場合は申告が必要です。特例を使う前から基礎控除以下となる場合とは区別します。

自分で申告を始めてから税理士に依頼できますか

途中から依頼できる場合もあります。残りの期限、不足資料、作成済みの書類と判断できない点を伝え、受任できる範囲を確認してください。

相続対策について問い合わせる
目次