遺産分割前に預金を払い戻す方法 限度額と必要書類

遺産の分け方がまだ決まっていなくても、相続人が一定額の預金を単独で払い戻せる制度があります。ただし一律150万円を受け取れるわけではなく、相続開始時の残高と本人の法定相続分から限度額を計算します。
急な葬儀費用や生活費に備えるなら、必要額と支払期限を先に整理し、銀行の相続窓口へ相談してください。借金があり相続放棄を考えている場合は、払戻しや使用が相続の判断に与える影響も先に確認する必要があります。
- 銀行窓口と家庭裁判所を利用する方法の違いがわかる
- 口座ごとの計算と同じ銀行で150万円の上限を確認できる
- 必要書類と払戻し後に残す支払記録がわかる
分割前の払戻しには窓口と家庭裁判所の二つの制度がある

民法909条の2の制度では、遺産分割の対象となる預貯金について、一定の範囲を相続人が単独で銀行へ請求できます。ほかの相続人全員の同意や家庭裁判所の判断を経ずに利用できる一方、金額には計算上の制限があります。
これとは別に、遺産分割調停や審判を申し立てたうえで、家庭裁判所の判断により預金を仮に取得する方法があります。必要性等が審査されるため、窓口の上限を超えた額を自由に引き出す仕組みではありません。
キャッシュカードでの出金と法定制度を区別する
暗証番号を知っていてATMから引き出せることと、相続財産を適切に取得することは別です。銀行に死亡を知らせずカードを使う方法を、正式な払戻しの代わりにしないでください。
急ぐ支払いがあれば、その金額と時期を銀行へ伝え、使える制度と必要資料を確認します。相続人の立場が未確定なら、先に戸籍等で誰が権利を持つか調べることが必要です。
窓口での限度額は口座ごとに計算して銀行単位で確認する

単独で払い戻せる額は、相続開始時の預金額に3分の1と本人の法定相続分を掛けて求めます。普通預金は口座ごと、定期預金は明細ごとに計算し、同一金融機関からの払戻しは合計150万円が上限です。
| 仮定の例 | 子一人が請求できる計算額 |
|---|---|
| 父の相続人が子2人で一口座の残高600万円 | 600万円×1/3×1/2=100万円 |
| 同じ条件で残高1,200万円 | 計算額200万円だが金融機関の上限により150万円 |
複数支店に分けても上限は増えない
同じ銀行のA支店とB支店に口座があっても、150万円の上限は銀行全体で判定します。別の銀行にも預金があるなら、その金融機関ごとに残高と法定相続分から確認します。
口座の種類や契約条件等によって手続きが変わることもあります。遺言で預金の取得者や相続分が指定されている場合には、この制度を利用できる範囲を銀行へ示して確かめてください。
払戻し後の遺産分割では取得済みとして扱う
受け取った額は、遺産の一部を分割によって取得したものと扱われます。最終的な取り分とは別枠でもらえる現金ではありません。分割の際には、誰がいくら先に受け取ったかを明らかにして精算します。
相続人と法定相続分が分かる書類を銀行へ提出する

一般的には、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の現在の戸籍、請求する人の印鑑証明書と本人確認書類などが必要です。法定相続情報一覧図の写しで代えられる範囲や、原本の返却方法も銀行へ確認します。
銀行所定の依頼書には請求する本人が署名押印し、対象口座の通帳や証書等を添えます。通常の遺産分割による全額解約と、単独払戻しの制度では必要な署名や資料が違うので、希望する制度名を窓口へ伝えてください。
遺言がある場合は利用できる範囲を確認する
遺言書や遺言執行者の指定があるなら、最初の照会時に申し出ます。預金が遺産分割の対象になるかや、本人が請求できる額に関わるため、遺言を伏せたまま通常の相続として準備を進めないようにします。
戸籍を集める日数に加え、銀行の審査と払戻しにも時間がかかります。必要額が今週中などと迫っているときは、受付日に必ず現金が受け取れると考えず、支払先への相談も並行してください。
窓口の額で足りないときは仮払いの必要性を整理する

家庭裁判所による預貯金の仮分割では、生活費や相続債務の弁済などのために払戻しが必要で、ほかの相続人の利益を害しないこと等が判断されます。遺産分割の調停または審判を申し立てていることも前提となります。
使途と金額を領収書や請求書で示す
必要な金額、支払先と期限、自分の資金で賄えない事情、遺産全体の内容を資料で示します。単に将来困りそうという説明より、どの支払いにいくら必要なのかが分かる書類を用意します。
ほかの相続人と対立している場合や使える財産に争いがある場合は、本人の判断だけでは手続きを選びにくいため、弁護士へ資料を持参して相談してください。
放棄を検討する場合は払戻し前に法律相談をする

相続財産の処分は、法定単純承認の問題につながることがあります。正式な銀行の払戻し制度を使えば、その後の相続放棄にも必ず影響しない、と一律に説明することはできません。借金が疑われるときは、出金の目的と使い道を示して先に弁護士等へ確認します。
立替払いと引出金の使い道を区別して残す
払戻しを受けた場合は、金融機関、日付、額、受取口座、使用先を記録します。自分の資金で立て替えた額と、相続預金から支払った額を混ぜず、請求書と領収書を対応させてください。
まず、必要な支払いを期限と金額で一覧にし、請求できる法定相続分と口座残高を確認します。その資料があれば、窓口の制度で足りるか、別の手続きを検討すべきかを具体的に相談できます。
関連する準備は、親の財産の調べ方も参考にしてください。
よくある質問

誰でも150万円を払い戻せますか
一律ではありません。相続開始時の預金額×3分の1×本人の法定相続分で計算し、同じ金融機関からの合計150万円が上限です。
同じ銀行の別支店ならそれぞれ150万円ですか
いいえ。同じ金融機関の支店を合計して150万円が上限です。口座ごとの計算額にも制限されます。
払い戻した額は最終的な相続分と別にもらえますか
別枠ではありません。遺産の一部を分割によって取得したものとして、後の遺産分割で取得額を明らかにして精算します。