相続登記を自分でする手順 必要書類と申請書の作成方法

相続登記は、司法書士へ依頼せず本人が申請することもできます。実家を取得する人が決まり、相続関係と不動産を確認できる資料がそろうなら、自分で進める余地があります。
ただし、申請書に名前を書けば済む手続きではありません。土地の地番、亡くなった人の戸籍、取得者の住所、遺言や分割の内容をつなげて、登記する権利を証明します。
まずは自分のケースで必要な書類を絞り、法務局の記載例に沿って準備しましょう。途中で名義の不一致や別の相続が見つかったら、原因を確かめてから次へ進むことが大切です。
- 本人申請を進めやすいケースと依頼を検討する状況
- 不動産の確認から戸籍と申請書を用意する順序
- 提出方法と補正への対応や完了後に保管する書類
自分で申請できる案件かを先に確かめる

本人による相続登記の申請に資格は必要ありません。ただし、遺産を誰が取得するかを決める作業と、その内容を登記へ反映する作業は別です。
取得者が決まり相続関係を追えるか確認する
父が所有する実家を、相続人全員の合意で子一人が取得するようなケースなら、必要な資料を順番にそろえられるか検討します。遺言があれば、協議ではなくその内容に基づく申請になるかを先に確認します。
家族が少ないことだけでは単純といえません。登記名義が祖父のままなら、父の相続だけを示す資料では足りない場合があります。名義人から取得者まで、権利が移った経緯を確かめます。
争いや判断の問題は申請書の説明だけでは解決しない
相続人の所在が分からない、未成年者との利益相反がある、外国の資料が必要、遺言の有効性に争いがある場合などは、確認する法律問題が増えます。自分で書類を集めることと、問題を自力で解決できることは同じではありません。
法務局の手続案内は、分割案を決めたり家族の代理人として交渉したりする窓口ではありません。登記の判断は司法書士、争いの交渉は弁護士など、解決したい内容に応じて相談先を選びます。
登記記録で対象不動産と管轄を確認する

自宅へ届いた固定資産税の明細と登記事項を照合し、土地と建物の一覧を作ります。郵便の住所が分かっていても、それだけで正しい不動産を申請書へ書けるとは限りません。
住所と地番や家屋番号を区別する
土地は登記上の所在と地番、建物は所在と家屋番号等で特定します。一つの実家に土地が複数筆ある、道路の共有持分がある、といった場合は、家の敷地一筆だけで終わらせないようにします。
登記記録で名義人、住所、持分も確認します。父が全部所有しているつもりでも持分2分の1なら、相続の対象はその持分です。抵当権が残っている場合は、所有権移転と抹消を別の問題として整理します。
2026年開始の証明制度も資料を補う手段になる
2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度では、登記上の氏名や住所等を基に、所有者として記録されている不動産を一覧で確認できます。ただし、検索条件と登記記録が一致しないものや、未登記の建物まで必ず見つかる制度ではありません。
資料が足りないときは、親の財産が分からないときの調査も合わせて進めます。不動産の所在地ごとに管轄の登記所を調べ、複数管轄なら申請を分ける必要があるか確認してください。
相続方法に応じた戸籍と協議書を用意する

必要書類は、遺言、遺産分割、法定相続分による登記のどれかで変わります。インターネットの一覧を全部集める前に、法務局の該当する記載例を一つ選びます。
| 相続の方法 | 中心となる資料 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 遺産分割による取得 | 相続関係の戸籍と協議書や印鑑証明等 | 参加すべき相続人と不動産の表示 |
| 遺言による取得 | 遺言と死亡や取得者との関係を示す戸籍等 | 遺言の方式と取得の原因 |
| 法定相続分で登記 | 相続人の範囲を確定する戸籍等 | 全員の氏名住所と持分 |
戸籍と住所のつながりを証明する
遺産分割による一般的な相続では、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍等と相続人の現在戸籍等を用意します。法定相続情報一覧図の写しを利用できる部分もありますが、協議書など全ての添付書類を置き換えるものではありません。
亡くなった人の登記上の住所と最後の住所が違うなら、住民票の除票や戸籍の附票等で同じ人であることをつなげます。保存期間等で資料が出ない場合は、別の証明方法が必要になるため登記所へ確認します。
協議書の不動産表示と原本還付を確かめる
協議書は、相続人全員の合意と対象不動産、取得者が分かる内容で作ります。一般的には各相続人が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。自宅の住所だけを書いた曖昧な表現では、対象を特定できないことがあります。
銀行等でも使う戸籍や協議書は、登記所から原本を返してもらう方法を確認します。原本還付のための写しや相続関係説明図等の用意を、提出前に整理してください。
申請書へ不動産と登記原因を記載する

申請書は法務局の最新の様式と記載例を使います。自分の相続方法と違う例を使い、見たことのない欄を推測で埋めることは避けます。
登記原因と取得者を資料に合わせる
通常の相続による移転では、登記の目的、相続開始日と相続の原因、取得者の住所氏名、不動産の表示等を記載します。相続開始日は通常亡くなった日で、協議書を作った日ではありません。
一部持分を相続するなら、目的や取得する持分を実際の登記内容に合わせます。遺贈や数次相続等は記載や申請人の構成が変わり得るため、単純な相続例から日付だけ置き換えないようにします。
評価額と登録免許税を計算する
相続による所有権移転の登録免許税は、原則として不動産の価額の0.4%です。申請年度の固定資産評価額等を確認し、住宅用地特例後の固定資産税課税標準額と取り違えないでください。
対象となる価額が合計2000万円で、全体を取得し免税がなければ、単純計算で8万円です。持分の取得、課税標準や税額の端数処理、土地の免税措置がある場合は、その条件を反映します。
窓口か郵送やオンラインで申請する

申請先は、不動産を管轄する法務局です。住んでいる場所から近いという理由だけで提出先を決めず、管轄と提出方法を確認します。
窓口や郵送なら控えと返送方法も用意する
書面の申請は窓口へ持参するほか、郵送でも行えます。申請書、添付書類、登録免許税の納付方法、原本還付の資料、完了書類の受領方法を一式で確認してから提出します。
郵送では送付方法と返信用封筒等の案内も確認します。提出した内容を見返せるように控えを残し、法務局から補正の連絡を受けられる電話番号を記載してください。
本来の相続登記と簡易な申出のオンライン手続きを分ける
所有権移転のオンライン申請では、申請用総合ソフトや電子署名、添付情報の扱いなどの準備を、登記・供託オンライン申請システムの案内で確認します。どの手続きもブラウザーだけで同じように完了するわけではありません。
一方、相続人申告登記にはブラウザーで行える簡易な申出があります。名前が似ていても、所有権を移す相続登記の代わりとして売却に使える登記ではないので、目的に合う申請を選びます。
補正と完了書類を確認して保管する

提出後に補正を求められたら、どの資料のどの箇所を直すかと期限を確認します。申請の受付と、審査を経た登記の完了は同じではありません。
完了後に氏名と不動産や持分を見直す
登記完了証や登記識別情報通知等を受け取り、申請どおりの内容になっているか確認します。必要に応じて登記事項証明書等で名義人、持分、対象の土地建物を照合してください。
登記識別情報は、将来の売却などで必要になる重要な情報です。手続きの控え、協議書や遺言、戻った原本とともに保管し、番号や画像を不用意に第三者へ渡さないようにします。
書類の準備中も3年の期限を管理する
相続で所有権を取得したこと等を知った日から原則3年以内に申請が必要です。2024年4月1日より前に知った未登記相続についても、原則2027年3月31日までの経過期限があります。
分割が決まらず期限が迫る場合は、相続人申告登記等を検討します。ただし、分割成立後の登記義務まで果たせる制度ではありません。取得者が決まっているなら、準備不足の箇所を早めに相談し、本来の相続登記を進めましょう。
よくある質問

相続登記は司法書士に頼まないとできませんか
本人が自分で申請することもできます。ただし相続関係や必要書類を判断し、申請書の作成と補正への対応も自分で進める必要があります。
自分で申請すれば登録免許税もかかりませんか
本人申請でも原則として登録免許税は必要です。依頼しない分の司法書士報酬と、税金や書類実費を分けて考えてください。
法務局へ申請書を出したら相続登記は完了ですか
受付後に審査があり、補正を求められることもあります。完了書類の受取りと登記内容の確認まで進めてください。