債権者が死亡した公正証書 承継執行文と相続人の準備

遺言の原本と照合用の資料を重ねて確認するイメージ

父が貸していたお金について公正証書はあるのに、支払いが止まっている。父が亡くなった後、その証書を持つ子が、父の名前のまま直ちに差押えを申し立てられるとは限りません。

債権を相続した人が執行に進むには、取得した権利の範囲と承継の証明を整え、承継執行文の付与などを確認します。ここでは、書面で作成された強制執行認諾付きの公正証書が既にある場合を扱います。

この記事でわかること
  • 証書の認諾条項と未払い残額を確認する
  • 自分が取得した債権の範囲を資料で示す
  • 承継執行文の申立てと送達を分けて整える
目次

公正証書の認諾と未払い残額を先に読む

送金と受領を確かめる口座の資料

金銭の一定額の支払い等について、債務者が直ちに強制執行に服する旨を記した公正証書は、民事執行法上の債務名義となります。すべての公正証書が同じ効力を持つのではなく、対象の請求と強制執行認諾の条項を確認することが入口です。

証書の年度・番号、公証人、表題、債権者・債務者、金額と支払期日を読み、通帳等で既に支払われた分を照合します。例えば300万円の支払義務のうち元金50万円が返済済みなら、残元金は250万円です。利息や遅延損害金は別に契約と計算を確認します。

また、条件が成就したときに支払う条項や、分割払いが滞った場合の条項があるなら、何が到来したかの証明も問題になります。承継執行文を取ることで、認諾のない証書へ認諾を付け足したり、支払期日前の債権を自由に回収したりできるわけではありません。

自分が取得した債権の範囲を承継資料で示す

取引記録を保管するファイルと資料

父の子であることと、その請求権を自分が全額取得したことは別の確認です。正本を保管している相続人が、自動的に全額の債権者になるわけではありません。

死亡や相続人の関係を示す戸籍等とともに、遺言、協議その他の承継に関する資料を探します。相続によって取得した範囲がどこまでか、どの文書で公証人へ証明するかを、正本と一緒に相談してください。協議書があれば相手への通知等の問題が一切なくなる、とは判断しないようにします。

相続人が複数いる場合や、債権の取得範囲に争いがある場合には、申立人と請求範囲を先に確かめます。民事執行法27条2項は、承継人のために執行できることが公証人等に明白な場合、又は債権者が証明する文書・電磁的記録を提出した場合に、承継執行文を付与できると定めています。家族の説明だけで当然に足りるものではありません。

承継執行文の申立書と正本を公証役場へそろえる

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

日本公証人連合会のQ8は、債権を承継した人が郵送で申し立てる場合の資料を案内しています。申立書、強制執行認諾条項付き公正証書正本、本人確認資料、承継を証明する文書とその写し、所定の返送用のものです。

本人確認はQ3の案内に沿って確認します。氏名・住所が証書の記載と変わっている場合や代理人が手続をする場合も、必要資料を公証役場へ照会してください。戸籍だけを先に送るのでなく、申立書の記載と一式をそろえます。

現行の郵便申立書の欄照合して記す内容
申立人と執行証書の表示承継した請求者、連絡先、公証人・年度・番号・契約の表題
債務者の表示証書の表記を機械的に写さず、現在執行等を受ける相手を確認
承継の事情と証明文書の表題死亡と取得の経緯、それを証明する提出文書の名称
一部の請求や再度・複数の付与該当する場合の範囲又は理由を具体的に記載
執行文謄本等の送達先送達する相手、住所等を本人確認や最新の資料と照合

この申立書には、執行文等の送達と送達証明書の交付を求める記載もあります。正本を紛失している、承継を示す書面がそろわない、債務者の住所が分からないといった不足は、空欄を推測で埋めずに相談しましょう。

執行文と証明文書の送達を確認して次の手続へ進む

合意の内容を確認する契約書類

承継執行文の付与と、債務者への送達、裁判所等への強制執行の申立ては別の段階です。民事執行法29条は、債務名義の正本又は謄本等に加え、27条による執行文の謄本と提出した証明文書の謄本等も、あらかじめ又は同時に送達することを求めています。

そのため、父の生前に元の公正証書が送られていたとしても、今回の承継に伴う送達まで済んでいるとは限りません。公証役場に、何を誰へ送達したか、証明書をどう受け取るかを確認し、交付された書類をまとめて執行の相談へ持参します。

付与された後に一部の返済があれば、請求する残額も更新します。執行文を受け取っただけで自動入金になるものではなく、差押えの対象や申立先、費用、回収の見込みを別に検討しなければなりません。相続人だから相手の預金や個人情報を自由に取得できる、という意味でもありません。

家族の死亡後の基本的な届出は、死亡後の役所手続き一覧も参照してください。相続の資料整理や相談先は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

父の公正証書を持つ子が全額を請求できますか

証書の所持だけで全額取得は決まりません。相続関係と自分が取得した請求権の範囲を示す資料を公証役場へ確認してください。

戸籍を送れば承継執行文を付けてもらえますか

戸籍だけで足りるとは限りません。郵送申立てでは申立書、認諾付き証書正本、本人確認、承継証明と写し等を案内に沿ってそろえます。

父の生前に証書を送達していれば追加の送達は不要ですか

承継執行文と証明文書についても送達の確認が必要です。元の証書の送達とは分け、公証役場で今回必要な手続きを確認します。

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