事業承継税制の資産管理会社判定 特定資産と事業実態の確認表

事業承継税制でいう資産管理会社は、会社の名前や登記上の事業目的だけで決まりません。現預金や賃貸不動産等の特定資産がどの割合を占めるか、そこからの収入がどの割合になるかを、別々に計算します。
どちらかの比率に該当しても、一定の事業実態がある場合等には対象から除かれない取扱いがあります。決算書の金額をそのまま割る前に、特定資産の区分、計算上の加算、事業実態を裏付ける資料を確認しましょう。
- 特定資産70%と運用収入75%を別々に計算する方法
- 現預金や配当加算を含む帳簿価額の整理例
- 事業実態の三要件と承継後の判定管理
資産保有型と資産運用型の二つの比率を別に出す

資産保有型会社は、一定の判定期間における特定資産の割合が70%以上となる会社です。資産運用型会社は、一定の判定期間の事業年度における特定資産の運用収入が、総収入金額の75%以上となる会社です。両方に該当したときだけ対象外になる、という基準ではありません。
| 判定 | 計算で区分するもの | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
| 資産保有型 70%以上 | 特定資産と総資産の帳簿価額、一定の配当等の加算 | 株価や不動産の時価で単純に割らない |
| 資産運用型 75%以上 | 特定資産からの運用収入と総収入金額 | 営業利益や税引後利益の割合にしない |
資産保有型の計算では、判定日前5年以内に後継者等が会社から受けた一定の配当や、損金不算入となる給与等の金額を、分子と分母に加える調整があります。最初の制度適用前の支払分を含めるか等の条件もあるため、単に直近の貸借対照表で70%未満と確認して終えないでください。
判定する期間と時点も二つで異なります。承継する日の直前に資産を動かして比率を下げればよいというものではなく、直前事業年度からの記録と、適用後の変化も確認します。
決算書の科目を特定資産と運用収入へ読み替える

特定資産には現金・預貯金、有価証券、自ら使用していない不動産等が含まれます。現預金が多い製造会社でも判定が必要であり、不動産賃貸業だけの問題ではありません。
次は、対象となる一定の子会社株式等の除外がなく、ほかの資産もない会社を想定した架空の整理表です。金額は全て帳簿価額の万円単位で、実際の会社の適用判定ではありません。
| 貸借対照表から分ける資産 | 仮定額 | この例の区分 |
|---|---|---|
| 現預金 | 4,000万円 | 特定資産 |
| 有価証券 | 1,800万円 | 特定資産。一定の子会社株式等の除外は別確認 |
| 第三者に貸す不動産 | 1,000万円 | 特定資産 |
| 自社の事業に使う不動産 | 2,000万円 | この例では特定資産に含めない |
| 商品等の棚卸資産 | 1,200万円 | この例では特定資産に含めない |
表の特定資産は6,800万円、総資産は1億円なので、単純な帳簿価額の割合は68%です。しかし、別に加算対象となる制度適用後の配当等800万円があると仮定すると、計算は7,600万円÷1億800万円となり、概算70.4%です。68%の行だけを見た判断とは変わります。
会員権や美術品等には保有目的等の条件があり、後継者等への貸付金・未収金も確認が必要です。一つの建物に自社使用部分と賃貸部分があれば、床面積等の合理的な割合で価額を分けます。不動産賃貸業として使っているから、その賃貸物件も全て自己使用だと整理しないようにします。
収入側では、配当、利息、賃料、資産の譲渡に伴う収入を対象資産と対応させます。決算書の売却益だけを入力してよいか、総収入金額へ何を含めるかを税理士と照合し、保有比率の表とは別に計算してください。
事業実態の例外は従業員と事業所と継続年数をすべて確認する

比率に該当する場合も、事業実態の要件を満たす会社等は対象から除かれません。自社について検討する基本の確認は、次の三つ全てです。一つを満たせば足りるのではありません。
| 確認する要件 | 根拠にする資料の例 | 不足として残す場面 |
|---|---|---|
| 贈与・相続まで引き続き3年以上の商品販売等の業務 | 契約、売上・請求記録、取引と業務の履歴 | 設立から3年でも業務の継続が不明 |
| 対象となる常時使用従業員が5人以上 | 雇用・社会保険等の資料と本人との関係 | 名簿の5人に後継者や生計一親族が含まれる |
| 従業員が勤務する事務所等を所有又は賃借 | 登記事項、賃貸借契約、実際の勤務状況 | 住所を借りているだけで勤務の実態が不明 |
ここでいう親族外従業員では、後継者本人と、後継者と生計を一にする親族を除きます。「親族というだけで全員除外」でも、会社の従業員名簿に載っていれば全員算入でもありません。常時使用従業員の定義と対象日を確認します。
業務の範囲も、会社の定款に記載があれば足りるわけではありません。資産の貸付先が後継者等の場合を含め、対象となる商品の販売等の業務か、取引の内容から確認してください。一定の特別関係会社の株式を除いて判定する場合も、関連会社の実態を別に調べる必要があります。
この例外を使う場合も、非上場中小企業者であること等の他の適用条件がなくなるわけではありません。会社全体の要件と株式の評価・猶予税額の計算は別に確認します。
一時的な比率上昇と承継後の継続判定を管理する

事業資金の借入れによって現預金が増えた場合など、法律上の一定のやむを得ない事由に伴う比率上昇には、判定期間から除く取扱いがあります。ただし、何の理由でも6か月以内に戻せばよいという制度ではありません。
資産保有型では、事業活動に必要な資金の借入れ等の所定事由が生じた日から6か月を経過する日までの期間を除く規定があります。資産運用型では、所定事由が起きた事業年度を起点とする別の期間計算になるため、二つへ同じ締切を転記しないでください。
一時的な比率上昇の取扱いを、従業員が5人未満になった場合の猶予期間と読み替えることもできません。適用後の事業実態の確認では、業務の継続、対象従業員、勤務する事業所等をその時点で確認します。
会社では、借入実行、資産売却、退職、関連会社の変化を月次の記録へ残し、税理士へ事前に知らせる担当を決めます。決算・継続届出の時期だけを見ず、納税猶予が続く期間の判定と、要件を外れた場合の納税資金まで確認してください。
決算書へ特定資産の区分と判定日を付け、配当等の調整と事業実態の資料を別にそろえてください。比率だけで適用可否を決めず、未確認の条件を残して税理士と確認することが必要です。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

現金が多い会社も資産管理会社になりますか
現預金は特定資産に含まれるため、資産保有型の判定が必要です。一定の配当等の加算や事業実態の例外も合わせて確認します。
従業員が5人いれば例外を使えますか
人数だけでは足りません。対象従業員の定義に加え、承継までの3年以上の商品販売等と、その従業員が勤務する事務所等の所有・賃借を全て確認します。
借入れで比率が上がっても6か月以内なら大丈夫ですか
事由と判定の種類によります。所定の事業資金の借入れ等に限る取扱いで、資産保有型と資産運用型では除外期間の計算も異なります。無条件の猶予期間と考えないでください。