親族外の後継者にも事業承継税制を使えるか 株式の渡し方と要件

長年働いてきた役員や従業員へ会社を継いでもらう場合も、法人版事業承継税制の対象を検討できます。ただし、社長の親族でないことだけを確認すればよいのではなく、株式を贈与で渡すのか、遺言で渡すのか、買い取ってもらうのかによって出発点が違います。
最初に取得方法と予定日を固定し、後継者の役員歴・代表権・議決権をその日へ合わせて調べます。親族外の人に会社を任せる合意と、納税猶予の条件を満たすことを分けて準備しましょう。
- 贈与や遺贈と売買による株式取得の違い
- 親族外の後継者の役員歴と代表権の確認時点
- 議決権と取得株数から認定や継続管理へつなぐ準備
親族外でも贈与や遺贈等なら適用を検討できる

法人版事業承継税制は、一定の非上場会社の株式等を贈与又は相続等で取得した後継者について、一定の条件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。先代との親族関係は、後継者の要件に含まれていません。
| 親族外の人へ渡す方法 | 税制を検討する出発点 | 先に必要な準備 |
|---|---|---|
| 生前に贈与する | 贈与税の納税猶予の条件を確認 | 贈与契約、会社・先代・後継者の条件と贈与日 |
| 遺言による遺贈等で渡す | 相続税の納税猶予の条件を確認 | 有効な遺言と取得する株式、死亡時点の条件 |
| 売買で買い取ってもらう | 売買による取得を、そのまま納税猶予の対象にしない | 買取資金、価格、先代の譲渡税等を別に検討 |
親族外の後継者は、従業員であるだけでは先代の法定相続人になりません。死亡後に株式を取得させたいなら、遺言等による取得の根拠が必要です。「会社の後を任せる」という口約束だけで、先代の家族から株式を当然に受け取れるとは考えないでください。
また、安く売った差額について税務上のみなし贈与が問題になっても、それだけで本制度の贈与による取得になるわけではありません。有償と無償を混ぜた案は、契約と課税関係を実行前に確認します。
年齢と役員就任と代表権を取得日へ合わせる

後継者候補が決まったら、役員就任の議事録、就任承諾、登記、代表権に関する書類、本人の生年月日をそろえます。「会社に20年勤務した」ことと「役員として3年継続した」ことは異なります。
| 取得の場面 | 主な時点の確認 | 他の場面と混ぜない条件 |
|---|---|---|
| 特例措置の対象となる2025年1月1日から2027年12月31日までの贈与 | 贈与直前に役員。贈与時に代表権、贈与日に18歳以上 | 役員3年以上という旧要件を現行対象贈与へ一律に当てはめない |
| 一般措置の贈与 | 贈与日まで引き続き3年以上役員。贈与時の代表権等も確認 | 過去の通算3年や他社の役員歴だけで満たしたとしない |
| 相続・遺贈等 | 相続開始翌日から5か月を経過する日の代表権と、原則として相続開始直前の役員 | 贈与と同じ日に全要件を判定しない |
相続時の役員要件には、被相続人が70歳未満で死亡した場合の例外があります。特例措置では、相続開始直前に都道府県知事の確認を受けた特例承継計画に記載された後継者である場合の例外もあります。計画を後から提出できる場合があることと、この役員要件の例外に必要な確認時点は別です。
従業員から急に代表者へなる案なら、就任の予定と実際の就任日を区別します。税制の条件だけを満たす名義変更で済ませず、経営を担う意思、会社法上の選任手続き、取引先・金融機関等への引継ぎも並行して準備してください。
株主構成と先代から渡す株式数を確認する

親族外の後継者で特に確認したいのが、誰の持株を合わせて議決権を計算するかです。後継者と特別の関係がある人の範囲は、先代と特別の関係がある人の範囲と同じとは限りません。先代一族の株式を、そのまま後継者のグループへ足さないようにします。
株主名簿には各人の株数だけでなく、議決権、種類株式の内容、先代・後継者との関係を追記します。後継者側は総議決権の50%超の条件や筆頭となる条件等を、贈与又は相続それぞれの時点で確認します。後継者が複数の特例には、各人10%以上等の条件もあります。
| 準備する一覧 | 確かめること |
|---|---|
| 取得前の株主名簿 | 先代の保有数・議決権と特別関係者、他の株主の権利 |
| 取得後の配分案 | 後継者側の50%超と筆頭等の条件、他の後継者との関係 |
| 株式を渡す契約案 | 全部又は一定数以上の取得が必要な株数要件 |
| 代表者の変更案 | 贈与時に先代が代表権を持たず、後継者が持つか |
贈与では、少額ずつ毎年渡せばよいと考えず、一度に渡すべき一定数以上の株式等の要件を確認します。先代が代表権のある会長として残る案も、名称ではなく実際の代表権が問題になります。
先代以外の株主からも取得する場合は、その人の贈与が制度の対象となる順序や期間も別に確認してください。家族の納得や他株主の同意があることと、各取得が税務要件を満たすことを同じ判断にしないことが大切です。
認定と税申告と継続管理まで先代と引き継ぐ

後継者だけでなく、会社が非上場の中小企業者等に当たること、資産管理会社等の除外に該当しないこと等も確認します。特例を初めて利用する場合は、計画提出期限2027年9月30日と、対象となる最初の贈与・相続等の期限2027年12月31日を分けて管理します。
認定申請は税務申告より先に期限が来ます。贈与の場合は原則として贈与を受けた年の翌年1月15日まで、相続の場合は相続開始後8か月以内の認定申請を確認し、その後の期限内申告と担保提供へつなげます。計画の確認だけで納税猶予が始まるわけではありません。
適用後は株式保有等の条件と、都道府県への報告・税務署への継続届出を引き継ぎます。先代が亡くなった場合や、後継者が退任・売却を考える場合には別の手続きや納税が問題になるため、長期の管理担当と費用も合意しておきます。
贈与の税金を当面払わずに済むことだけで決めず、売買した場合の資金負担、通常どおり納税する場合、猶予が終了した場合を比較します。親族外の人が遺贈で株式を受け取る場合は、相続税の2割加算等を含めて本人の税額を確認し、猶予終了時の納税資金も試算します。親族外では先代の相続人との調整も必要になるため、税理士と弁護士等へ同じ株式配分案を示して検討してください。
後継者の氏名と取得方法、予定日、就任日、取得前後の株主名簿を一つにまとめてください。親族かどうかだけで選択肢を狭めず、実行する契約と各要件の時点をそろえて相談しましょう。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

従業員でも事業承継税制の対象になれますか
親族関係は後継者の要件に含まれません。ただし、贈与・遺贈等の取得方法と、会社、先代、後継者の役員・代表権・議決権等の条件を満たす必要があります。
20年勤務していれば役員期間の要件も満たしますか
勤務歴と役員歴は別です。一般措置の贈与は直近継続3年以上の役員、2025年1月1日以後の対象となる特例贈与は贈与直前の役員という条件を区別します。
会社を安く買った差額も納税猶予にできますか
税務上のみなし贈与が問題になっても、本制度の贈与による取得になるとは限りません。売買と贈与を混同せず契約内容と課税関係を実行前に確認します。