任意後見監督人の選任申立て 契約と本人同意を資料に対応させる

任意後見の契約を作っていても、その書面を銀行へ持参するだけで、任意後見人としての支援が始まるわけではありません。本人の判断能力が不十分な状況になったとき、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てる段階があります。
申立書には、本人の現在の状態、既にある契約と登記、これから必要な支援を対応させて記入します。診断名だけを写すのではなく、代理権目録と実際に困っている事務をつなげることが準備の中心です。
- 契約と登記を申立書の欄へ対応させる方法
- 申立人の資格と本人の同意や候補者の確認
- 財産目録と収支予定表から支援内容を説明する方法
任意後見契約と登記から申立書の基本欄を埋める

まず、任意後見契約公正証書を代理権目録まで用意し、本人の登記事項証明書と照合します。全国共通の現行掲載様式には、公証人の所属、証書番号、証書作成年月日、登記番号を書く欄があります。古いメモではなく、原資料から正確に転記します。
| 申立書で読む欄 | 対応する資料 | 読み合わせる内容 |
|---|---|---|
| 申立人と本人の関係 | 戸籍等と契約書 | 本人・配偶者・四親等内親族・受任者等の立場 |
| 本人の住所と実際の生活場所 | 住民票等と施設・病院の情報 | 住所と入院・入所先が異なる場合の記載 |
| 任意後見契約 | 公正証書と登記事項証明書 | 証書番号、契約日、登記番号 |
| 任意後見受任者 | 契約書と本人確認等の資料 | 契約上の受任者と申立人を取り違えない |
契約で選ばれている任意後見受任者は、監督される側です。今回の申立てで家庭裁判所が選ぶ監督人と同じ人として書かないようにします。また、代理権目録に含まれない事務まで、監督人が選ばれれば自動で追加されるわけではありません。
判断能力と必要な支援を診断書と事情説明へつなぐ

任意後見監督人の選任では、契約が登記され、本人が精神上の障害によって事理を弁識する能力が不十分な状況にあること等を確認します。家族が介護を負担しているという事情だけで、選任の条件が決まるわけではありません。
申立書の理由欄は診断書の診断名と対応させ、動機欄では預金管理、保険金受取り、施設入所契約など、実際に必要な事務を示します。事情説明書には、現在の生活場所、病歴、誰がどの程度お金を管理しているかを記載し、同じ出来事の時期や担当者が食い違わないようにします。
たとえば、父が施設の支払い内容を理解しにくくなり、長女が月々の請求を預かっている場合を考えます。診断書、施設の請求、現在の管理状況、契約の代理権目録をそろえ、「何の手続きに代理が必要か」を説明します。家族が診断名から判断能力を独自に確定するものではありません。
申立人の資格と本人の同意を候補者の適格性から分ける

申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者です。本人以外の請求では本人の同意が必要ですが、本人が意思を表示できない場合は例外があります。「家族の多数が賛成した」ことと「本人の同意」を置き換えないでください。
事情説明書は、本人へ説明したか、賛成・反対・不明か、理解できているか等を分けて尋ねています。反対の意思があるのに、単に診断書があるから同意不要と扱うことはできません。説明の方法や本人の状態を、事実として裁判所へ伝えます。
| 別々に確認する事項 | 注意する条件 |
|---|---|
| 申立てをする人 | 法定の申立資格と本人との関係 |
| 任意後見受任者 | 契約上の代理を引き受ける人と選任上の支障 |
| 監督人候補者 | 推薦しても裁判所がその人を選ぶとは限らない |
| 監督人の資格制限 | 受任者等の配偶者・直系血族・兄弟姉妹は就任できない |
任意後見監督人については、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人等、破産者、本人に対して訴訟をし又はした人等、行方不明者という民法847条の資格制限も確認します。親族であること自体を全て禁止とせず、法律が定める関係と事情に沿って点検します。
財産目録と収支予定表を資料番号で対応させて提出する

財産目録には、本人の預金や不動産等を資料と対応させて記入します。本人が別の人の相続人で、遺産分割が終わっていない財産は、本人固有の預金等と混ぜず、相続財産目録の対象も確認してください。
収支予定表は、月額だけでなく、年額、入金・引落口座、頻度、根拠資料を対応させる様式です。掲載様式は、資料の写しへ「収1−2」のような対応番号を付す方法も示しています。同じ年金を複数の欄へ重ねたり、年払いの税を毎月その額で払うように記入したりしないようにします。
| 説明用の仮定 | 月額 | 必要な追加資料 |
|---|---|---|
| 父の年金収入 | 14万円 | 年金通知と入金口座 |
| 施設費等の定期支出 | 18万円 | 施設契約と請求、ほかの生活費 |
| この二項目だけの差額 | 毎月4万円不足 | 預金残高、臨時費用、報酬等を別途確認 |
この4万円は説明のための一部の収支差であり、家裁が決める監督人報酬を含む確定予算ではありません。税金、医療費、臨時支出なども追加し、本人の生活を続けるためにどこから資金を出すかを示します。
提出先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。国の案内は申立手数料800円、登記手数料1,400円、連絡用郵便切手等を示しています。郵便料や追加資料は提出先で異なり、鑑定が必要な場合の費用も別に確認します。
申立て後は、書面での照会や事情の聴取等に対応します。申立書を出した後の取下げにも家裁の許可が必要です。選任されるまでに権限が必要な事務や支払期限がある場合は、家族で処理できると決めつけず、契約の範囲と利用できる対応を早めに相談してください。
関連する基本事項は、親の相続準備 元気なうちに確認する書類と進め方も参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

任意後見の公正証書があれば監督人の申立ては不要ですか
不要ではありません。任意後見監督人が選任されて初めて契約の効力が生じます。契約と登記、本人の判断能力や必要な支援を示して申し立てます。
本人が申立てに反対しても家族だけで進められますか
本人以外の請求では原則として本人の同意が必要です。意思を表示できない場合の例外と、反対している場合を混同せず、本人の状態や説明の経過を伝えます。
任意後見人の子を監督人に推薦できますか
任意後見受任者又は任意後見人の直系血族は、任意後見監督人になれません。候補者は法律の資格制限を確認し、最終的な選任は家庭裁判所が行います。