二世帯住宅の小規模宅地等の特例 建物の登記と生活実態を確認

玄関や水回りが別の二世帯住宅でも、それだけで小規模宅地等の特例が使えないとは限りません。最初に確認するのは、建物が区分所有として登記されているか、誰がどの部分に住み、土地を誰が取得するかです。
建物の見た目や「二世帯」という呼び方だけで判断すると、対象となる土地の範囲と取得者の要件を取り違えます。建物の登記事項証明書と図面を用意し、相続開始時の居住状況を重ねて確認してください。
二世帯住宅は名称より建物の登記と居住関係を確かめる

特定居住用宅地等の要件を満たすと、330平方メートルまでの土地等の価額を80%減額できます。減るのは対象となる土地等の評価額で、建物や相続税額そのものが一律80%減になる意味ではありません。
持分共有と区分所有登記を見分ける
土地と建物の所有者、亡くなった親の居住部分、子の居住部分、土地を取得する人を表にします。建物の持分を親子で共有している状態と、各階等を区分所有として登記している状態は違います。所有者名が複数載っているだけで区分所有と決めないでください。
同じ住所や玄関の構造だけで判断しない
住民票が同じ住所でも、特例の全要件を示せるわけではありません。反対に、内部で行き来できない構造だけで対象外と決まるものでもありません。登記の法的な区分と生活実態を別の資料で確認することが、判断の出発点になります。
区分所有登記がない一棟では親族の居住部分を確認する

区分所有建物である旨の登記がない一棟では、親族が住んでいた部分についても制度上の一定の扱いがあります。完全分離型かどうかだけを判定基準にしないことが大切です。
建物内部で行き来できるかだけで決めない
例えば、父が1階、別生計の子が2階に住み、玄関が別でも区分所有登記をしていない一棟だったとします。国税庁の注記では、一定の親族の居住部分も含めた敷地の範囲や、親族の居住する部分についての取扱いを定めています。各部分の面積と利用を確かめます。
土地取得者の保有と居住の継続を確認する
その子が土地を取得する場合、相続開始直前から申告期限までの居住と、相続開始時から申告期限までの土地保有など、取得者の要件は別に残ります。登記が区分所有でないことだけで、どの親族が相続しても使えると考えないでください。
区分所有登記がある場合は親が住んだ部分の範囲を調べる

区分所有として登記されている一棟は、区分所有登記がない一棟と同じ範囲で扱うことはできません。親が住んだ専有部分と、子が住んだ専有部分を図面上で分けます。
親の居住部分と子の専有部分を分ける
父が1階の専有部分、別生計の子が2階の専有部分に住む場合、子を当然に父の居住部分の同居親族として扱うことはできません。国税庁の注記では、区分所有建物の場合に同居等を判定する居住部分の範囲を区別しています。
生計が同じ親族の居住部分は別の要件で判断する
一方、生計を一にしていた親族の居住用宅地という別の区分や、配偶者など取得者による違いもあります。「区分所有だから敷地全体に絶対使えない」と逆に広げるのも不正確です。親子の生計と土地の取得者を示して、どの要件を検討するか税理士へ確認します。
| 建物の状態 | 確認する判定の軸 |
|---|---|
| 区分所有登記がない一棟 | 親族の居住部分も含める扱いと取得者の居住・保有要件 |
| 区分所有登記がある一棟 | 親の専有部分と子の専有部分、生計関係、取得者 |
| 共有登記 | 持分共有か区分所有かを登記で確認 |
| 施設入居や賃貸併用 | 入居条件と入居後の利用、用途別の面積 |
老人ホームや賃貸併用は追加の事情を切り分ける

二世帯住宅でも、親が施設へ移った、建物の一部を第三者へ貸していた、といった事情があれば、登記の区分だけでは結論が出ません。各部分の使用状況を時系列で調べます。
入居後の利用と生活実態を確認する
老人ホーム等への入居では、要介護・要支援認定等、施設の類型、入居後の元の住居の利用などの条件があります。施設に移ったから当然に自宅扱いが消えるとも、二世帯住宅だから条件を問わず残るとも考えないでください。
貸している部分と事業用部分の面積を分ける
賃貸部分や事業部分がある場合は、床面積、契約、取得者を分け、居住用と別の特例の対象面積を確認します。建物全体へ居住用の80%減を無条件に適用しないことが必要です。相続前後の図面と利用記録を同じ状態の資料として揃えます。
施設へ入った親の要件は、老人ホーム入居後の自宅と小規模宅地等の特例で確認し、二世帯住宅の登記の問題と分けて資料を集めます。
登記と図面や居住の資料を相続税申告へつなぐ

申告では、対象の宅地、適用要件、選択した面積が分かる明細と、所定の添付資料を確認します。特例により税額がなくなる場合でも、適用のために相続税申告が必要です。
取得者ごとの要件を表にする
建物の登記事項証明書、各階の図面、土地の登記と評価資料、家族関係、居住・生計の資料を用意します。土地を取得する人ごとに、相続開始前と申告期限までの条件を並べると、途中の売却や転居が影響するかを確認しやすくなります。
相続後の登記変更で過去の要件は決まらない
後から登記方法を変えれば、過去の相続開始時の要件も必ず変わるわけではありません。将来の対策として登記を見直す場合も、費用や他の税制への影響を含めて相談します。まずは現在の建物の全部事項証明書と各階図面を取得してください。
よくある質問

玄関が別の二世帯住宅は対象外ですか
玄関が別というだけで対象外とは限りません。区分所有登記の有無、居住部分、土地の取得者の要件を確認します。
区分所有登記がなければ必ず80%減になりますか
必ずではありません。対象となる敷地の範囲に加え、取得者の居住や保有などの要件と申告が必要です。
住民票を同じ住所にすれば同居の要件を満たしますか
住民票だけでは決まりません。建物の登記と実際の居住状況などを確認し、申告期限までの条件も満たす必要があります。