共有不動産を修繕するときの同意 工事見積書を保存と変更に分ける方法

共有の実家を修理する際、必要な同意は「修繕」という工事名や金額だけでは決まりません。現状を維持するための保存なのか、形状や効用を変える工事なのかを、見積書の内容から分けて考えます。
雨漏りを止める応急処置と、同時に行う増改築を一式で発注すると、同意の範囲も費用の説明も曖昧になります。必要な工事を止めず、共有者同士で確認すべき部分を残すための整理方法を説明します。
- 工事項目から保存と変更を見分ける考え方
- 持分による決定と費用の分担を分ける方法
- 同意と発注の記録や返事がない人への対応
見積書を応急処置と本工事に分ける

最初に業者へ、故障箇所、放置した場合の被害、今回行う作業を分けて説明してもらいます。応急的に穴をふさぐ作業と、屋根の形を変えて部屋を増やす工事では、同じ雨漏りの相談から始まっても内容が異なります。
保存行為は、共有物の現状を維持するために行うもので、各共有者が単独でできると民法に定められています。ただし「壊れた場所を直す」と呼べば、付随する性能向上や増築まで当然に保存になるわけではありません。
被害箇所の写真、点検報告、見積書の項目、工事前後の状態を残します。緊急の応急処置が必要な場合も、安全を優先して専門業者へ依頼し、ほかの共有者へ状況と支出をできるだけ早く伝えてください。
必要性が争われそうな本工事は、応急部分と注文を分けられるか相談します。先に全体を契約してから同意を集めると、工事代金の支払いと共有者間の紛争を同時に抱えることになります。
保存と軽微変更と著しい変更で同意を確かめる

共有物の形状または効用に著しい変更を加える場合は、原則として共有者全員の同意が必要です。一方、著しい変更を伴わない軽微な変更を含む管理は、持分の価格の過半数で決めるのが基本です。
2023年4月施行の改正後は、軽微な変更が持分の過半数で決められることが明確になっています。国土交通省に掲載された法務省資料では、外壁や屋上防水の大規模修繕も、基本的には著しい変更を伴わないものとする例が示されています。
| 工事内容の区分 | 基本となる決定方法 | 確かめること |
|---|---|---|
| 現状を維持する保存 | 各共有者が単独で行える | 必要な補修の範囲に収まるか |
| 著しい変更を伴わない管理・軽微変更 | 持分価格の過半数 | 形状や用途への影響 |
| 形状や効用の著しい変更 | 原則として全員の同意 | 増改築や用途変更の具体的内容 |
3人中2人が賛成しても、その2人の持分の合計が2分の1なら過半数ではありません。また、高額だから全員同意、少額だから一人でよいと決めることもできません。見積額とは別に工事の性質を確認します。
住んでいる共有者への影響と費用負担を確認する

共有者の一人が住んでいる家では、持分の多数を集めれば生活条件を自由に変えられるとは限りません。共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼす管理の決定には、その承諾が問題になります。
例えば、防水工事のための一時的な作業と、居住部分の使い方を大きく変える計画を区別します。立入りの範囲、工事期間、仮住まいの必要性なども、業者と居住者の双方に確認してください。
工事を決める権限と費用を求める根拠は別に示す
民法253条には、共有者が持分に応じて管理費用等を負担する定めがあります。ただし、過半数で工事を決めたことだけを理由に、相手へ工事代金の全額を請求できるわけではありません。
正当に決定された工事か、支出はどの範囲か、別の負担合意があるかを確認します。自分の希望で追加する設備や、居住者だけが利益を受ける項目も一式にせず、負担根拠を説明できる形に分けます。
同意書と発注書を同じ工事範囲にそろえる

同意を求める際は、工事名だけでなく、見積書の日付と番号、仕様、金額の上限、実施期間、負担方法を一緒に示します。「屋根を直すことに賛成」というメールと、後日の断熱工事を含む注文が同じ範囲とは限りません。
| 残す記録 | 記載する内容 |
|---|---|
| 判断の材料 | 工事前写真、点検報告、項目別見積もり |
| 共有者の決定 | 対象工事、各人の持分と賛否、決定日 |
| 負担の合意 | 立替者、各人の負担、送金期限 |
| 追加工事の扱い | 事前に確認する金額や内容、連絡先 |
本記事の仮定として、防水60万円と断熱20万円を同時に提案された場合、防水だけの承認を断熱まで広げないようにします。工事中に下地の腐食が見つかったときも、追加が必要な理由と見積もりを受け、決めた手順で承認します。
完成後は、請求書、領収書、施工写真を見積書とまとめます。共有者へ渡す精算書には総額だけでなく、対象になった作業と既に受け取った負担金を記載してください。
連絡がつかない共有者がいるときは裁判手続きも確認する

返事がない人を、自分たちの判断で賛成と数えることはできません。民法には、所在等不明の共有者や、相当期間を定めた催告にも賛否を示さない共有者がいる場合に、裁判所の決定を得る仕組みがあります。
どの制度を使えるかは、相手が不明なのか、連絡は届くが返答がないのかによっても異なります。住所を調べた資料、連絡した日、提示した工事内容、相手の反応を弁護士へ示して確認します。
緊急の保存と、本格的な変更工事を同じ手続き待ちにする必要があるかも分けて相談します。危険が迫る場合は現地の安全確保を先行し、何を保存として行ったかが分かる記録を残してください。
修繕のたびに連絡が止まる共有関係なら、今後の管理担当と承認手順、長期的な保有方針を見直す材料にもなります。まず今回の見積書を項目別にして、決める内容を小さく明確にするところから始めましょう。
よくある質問

工事代金が高いと必ず全員の同意が要りますか
金額だけでは決まりません。現状維持の保存か、形状や効用の著しい変更を伴うかなど、工事の具体的な内容で判断します。
共有者の過半数が賛成すればよいですか
管理の基本は人数ではなく持分価格の過半数です。使用中の共有者への特別の影響なども確認する必要があります。
一人が返事をしなければ除いて決められますか
自動的には除けません。所定の催告や裁判所の決定が関わる制度があるため、連絡記録と見積書をそろえて弁護士へ相談してください。