土地と建物の所有者が違う相続 名義と利用契約を一組で確認する手順

実家の土地と建物は、一つの場所にあっても所有者が同じとは限りません。父が土地を持ち、母が建物を持つ家で父が亡くなった場合、母の建物まで父の遺産として分けることはできません。
最初に、土地と建物の名義、今回亡くなった人が持っていた権利、その土地を使う契約を一組で確認します。税額の試算や家族の取り分を決める前に、権利の一覧を作る手順を説明します。
- 土地と建物を別々の資料で確認する方法
- 今回の相続で承継する範囲と土地利用契約の整理
- 居住を続ける案や一括売却に必要な権利一覧
土地と建物を別々の登記事項で調べる

土地の登記事項証明書には地番ごとの所有者と持分、建物には家屋番号ごとの所有者などが記載されます。住居表示と地番は一致するとは限らないため、住所だけで探した資料が敷地全体を含むか確かめます。
固定資産税の通知先、建築費を出した人、家族が「親の家」と呼んでいたことだけでは、土地と建物の所有者を確定できません。登記と納税通知書、購入・建築時の契約を照合し、食い違いは未確認として残します。
| 調べる単位 | 確認する欄 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 敷地の各筆 | 所有者と持分、担保権 | 庭や通路が別の筆になっている |
| 建物 | 所有者と持分、床面積 | 増築部分が登記と合わない |
| 私道など | 持分と通行の根拠 | 実家の土地と別の名義になっている |
| 土地を使う権利 | 契約相手、地代、期間 | 登記されていない契約もある |
敷地が二筆に分かれ、一筆は父単独、もう一筆は叔父との共有ということもあります。同じ家のための土地だからとまとめず、権利者ごとに確認することが後の売却準備にも役立ちます。
今回亡くなった人の財産と他人の財産を分ける

相続では、亡くなった人が持っていた財産上の権利義務を承継します。父の死亡時に母が生存し、建物を単独所有しているなら、その建物は母の固有財産として分け、父の遺産分割の対象から外します。
本記事の例として、土地と私道持分は父、建物は母の名義だったとします。父の相続で検討するのは、父の土地や私道持分などを誰が取得するかです。母の建物を子へ移すなら、父の遺産分割とは別の法律関係と税務の確認が必要になります。
既に母も亡くなっていて母名義が残っている場合は、母の相続をまだ処理していない可能性があります。父の相続だけで全体を一度に直せると決めず、死亡の順序、各相続人、過去の協議書を司法書士等へ示します。
相続税の申告が必要かどうかを調べる際も、家全体の価額をそのまま父の遺産へ入れず、父の権利範囲を確認します。名義と実際の取得経緯に疑問があれば、その事情も税理士へ伝えてください。
土地利用の契約と建築時の合意をつなぐ

土地と建物が別名義でも、必ず有償の借地権があるわけではありません。地代や権利金の支払い、契約書、建物を建てたときの了解、税の負担記録を確認し、使用貸借か賃貸借かなどを整理します。
親の土地を子が地代も権利金も払わず借りて家を建てた場合、国税庁は使用貸借による使用権の価額をゼロとし、将来相続する土地は原則として自用地として評価すると説明しています。別名義だから借地権割合を引ける、という判断はできません。
ただし、この税務上の評価と、住み続けられる民法上の契約関係は別です。誰が貸主で誰が借主だったか、どちらに相続が起きたか、期間や目的をどう決めていたかを確認します。
固定資産税相当の額を負担していた場合も、その支払いだけで通常の賃貸借と断定しないでください。元の契約や当時の事情を確認せず、新しい名前の契約書を作って過去の関係を置き換えることは避けます。
住み続ける案と名義をまとめる案を比較する

土地と建物の取得者が別になる案では、相続税や各人の取得額だけでなく、住み続ける条件を検討します。建替え、増改築、第三者への売却、土地の返還などが必要になったとき、誰の協力が必要かを書き出してください。
例えば、姉が所有する家の敷地を弟が相続する案なら、土地を使う期間と対価、税金の負担、建物を売る際の協議、どちらかが亡くなった後の取扱いが論点になります。家族の了解を前提にしたままでは、次の相続で認識が引き継がれないおそれがあります。
| 比較する案 | 確認する負担と条件 |
|---|---|
| 土地と建物の所有者をそろえる | 代償金等の資金、移転原因、税務と登記 |
| 別名義のまま住み続ける | 利用契約、修繕・建替え、将来の承継 |
| 土地と建物を一括して売る | 各権利者の協力、価格配分、契約と引渡し |
既に他人が所有する建物をまとめる案は、その所有者の意思なしに実行できません。相続人同士の協議で決められる範囲と、別の所有者へ合意を求める範囲を分けます。
売却や申告に使う権利一覧を完成させる

一括売却を相談する場合は、各土地・建物について「現在の名義」「今回の取得予定者」「利用する人」「利用契約」「担保」「不足資料」を一行にまとめます。土地の売主と建物の売主が違うことを、不動産会社へ最初から伝えてください。
土地だけ売る場合も、建物所有者の利用関係が残る土地なのかが価格と契約条件に影響します。建物を先に解体する案では、所有者の同意、利用者の権利、解体後の土地利用や再建築の条件を確認します。
権利一覧の未確認欄は空白にせず、「建築時の口頭合意のみ」「送金の名目を確認中」などと記載します。司法書士には登記と承継経緯、弁護士には利用や返還の争い、税理士には評価と移転時の課税というように、同じ一覧から相談事項を分けられます。
まず土地と建物を別々に調べ、今回の相続の対象へ印を付けてください。家全体をどう残すかを話し合うためにも、誰の何を動かす必要があるかを明確にしておくことが大切です。
よくある質問

父が固定資産税を払っていれば建物も父の遺産ですか
支払っていた人だけでは所有者を確定できません。土地と建物の登記事項、取得時の契約や資金の事情をそれぞれ確認します。
土地と建物の名義が違うと土地評価を下げられますか
名義の違いだけでは判断できません。使用貸借なら土地は原則として自用地評価となるなど、実際の利用契約と税務上の取扱いを確認します。
土地と建物を別々の人が売主として売れますか
各権利者の合意と必要な登記等を整えて検討できます。利用権、担保、売買代金の配分、引渡しの条件も不動産会社や専門家と確認してください。