抵当権者が死亡していたら 完済日と抹消登記の準備

土地の登記に、昔お金を貸してくれた個人の名前が抵当権者として残っていることがあります。その貸主が亡くなっているときは、今の不動産所有者の相続登記とは別に、誰と抵当権を抹消するかを確かめる必要があります。
最初に調べたいのは、借金を返し終えた日と貸主の死亡日の前後です。貸主の名前を相続人へ直してから消せばよい、と一律に進めず、普通抵当権の完済を示す資料から順序を整理します。
- 所有者と抵当権者を登記記録で見分ける
- 完済と死亡の先後から登記の順序を確認する
- 貸主の相続人と返済資料をそろえる
乙区の抵当権者と完済を示す資料を調べる

登記事項証明書では、所有者の記録は甲区、抵当権の記録は乙区で確認します。乙区にある抵当権者は貸した側です。債務者や土地の所有者が亡くなった場合と混ぜず、抹消したい抵当権の順位番号、抵当権者の氏名・住所、債権の内容を書き出してください。
次に、借用書や金銭消費貸借契約書、抵当権設定契約書、返済の領収書、完済を確認した書面を探します。銀行振込が一度見つかっただけでは、利息を含む残債がすべてなくなったとは限りません。貸主側の記録と照合できる状態にすることが先です。
ここでは個人の貸主が亡くなった普通抵当権を扱います。登記が根抵当権なら、融資枠や元本確定の問題があるため、同じ完済の説明をそのまま当てはめないでください。
完済が死亡の前か後かで移転登記を分ける

不動産登記法62条は、登記の申請人になれる人に相続が起きた場合、一般承継人が申請できることを定めています。ただし、抵当権そのものを相続したのか、既に消滅した抵当権の抹消に協力する義務を承継したのかは分けて考えます。
| 貸主が9月20日に死亡した仮の例 | 登記を相談する順序 |
|---|---|
| 8月10日に債務を完済し、抹消前に貸主が死亡 | 消滅済みの抵当権を相続移転せず、貸主の相続人と抹消する手続を確認 |
| 死亡時には残債があり、10月10日に完済 | 相続による抵当権移転の登記を経て、抹消する手続を確認 |
| 送金日は分かるが、完済か一部返済か不明 | 先に債務の消滅原因と日付を確定する資料を集める |
これは相続人の協力を得て進める通常の例です。生前に消滅した抵当権を、書類を省く目的でいったん相続移転してから消す、と自己判断するのは避けます。資料を見せ、どの登記をどの順で申請する案件かを司法書士へ確認しましょう。
協力する相続人と承継の範囲を戸籍等から確認する

貸主の長男と連絡がついたとしても、その人だけに署名を頼めば足りるとは限りません。貸主の生前に債務が消滅した例について、専門家の先例解説は、貸主の相続人全員と所有者による申請を示しています。所有者側の相続人一人で保存行為として申請する説明とは、立場が違います。
死亡後に完済した例では、債権や抵当権を誰が承継したか、既に移転登記があるかも確認します。遺言や遺産分割などの資料がある場合は、その内容を見せて登記上の申請人を判断してもらってください。
| 確認したいこと | 探す資料 |
|---|---|
| 貸主の死亡と相続関係 | 死亡・続柄や相続人の範囲を示す戸籍等 |
| 生前消滅か、相続後の消滅か | 契約書、返済明細、領収書、完済確認の書面 |
| 実際の承継と既存の登記 | 遺言・協議に関する資料、最新の登記事項証明書 |
| 申請に使える書類が残っているか | 設定時の登記済証・登記識別情報、委任に関する書類 |
この表は全件共通の添付書類一覧ではありません。戸籍の範囲や原本の扱い、本人確認の方法は、実際の登記経路に応じて確認します。相続関係を整理する資料には、法定相続情報一覧図の作り方も参考になります。
協力者や完済資料が足りないときは別手続を相談する

貸主の相続人が不明、連絡先が分からない、完済の事実に争いがある場合は、通常の共同申請の準備だけでは解決しません。まず、何が足りないのかを分けます。相続人が分からない問題と、返済が証明できない問題では、調べる資料も次の手続も異なります。
登記識別情報がない場合にも別の本人確認手続を検討できますが、単に死亡戸籍を添えれば代わるものではありません。所在不明者に関する手続や休眠担保権の特則も、要件を調べて使う制度です。古い抵当権だから、あるいは相続人が協力しないから供託だけで必ず消せる、とは考えないでください。
なお、権利が人の死亡で消滅する旨が登記されている場合には、不動産登記法69条による単独抹消の制度があります。通常の貸主死亡と区別するためにも、契約だけでなく現在の登記記録を相談先へ示すことが大切です。
相続に伴う資料整理や専門家への相談先は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

貸主が亡くなれば抵当権は自動で消えますか
通常は死亡だけで抹消できません。死亡による権利消滅の定めが登記されている場合などの特則は、登記内容に応じて確認します。
貸主の死亡前に完済していれば相続移転は必要ですか
通常は抵当権の相続移転を経ず、貸主の相続人と抹消する経路を確認します。完済の事実と日付、協力する相続人を示す資料が必要です。
貸主の相続人一人の署名で進められますか
生前に債務が消滅した例では、貸主の相続人全員と所有者による申請が示されています。実際の承継や登記の状態により確認し、一人を任意に選ばないでください。