相続土地国庫帰属の不承認が気になるとき 井戸と境界と通路の記録例

相続土地国庫帰属の相談前に井戸らしい蓋や通路が見つかっても、すぐに撤去を頼むのではなく、写真と図面で未確認事項を整理します。一か所を直しても、別の境界や利用関係が解決していなければ、申請できる状態になったとは判断できません。
ここでは、甲の井戸らしい蓋、乙の北側境界、丙の通路がある架空の更地を使い、相談資料の作り方を説明します。写真番号や資料番号も説明用の仮定で、実際に撮影した写真や相談事例ではありません。法務局の回答や審査結果も作っていません。
- 同じ敷地図に三か所と写真や資料を対応させる方法
- 目で見た事実と未確認事項を相談の質問へ変える手順
- 回答を記録して撤去や測量の発注範囲を決める考え方
一枚の敷地図に三か所と写真番号を対応させる

父から更地一筆を相続したと仮定します。現地では北西に古い蓋があり、北側の境界標の一つは見つからず、東側には隣家の人が歩く細道がありました。家族が井戸と呼んでいたことと、地下に何があるかを確認したことは別の事実として扱います。
敷地図の上で位置を甲・乙・丙とし、写真は全景P01、蓋P02、北側P03、通路P04に分けます。登記事項はD01、公図はD02、昔の工事写真はD03、父の通路に関するメモはD04というように、資料にも番号を付けます。
| 同じ現場の三か所 | 確認できた事実と根拠 | まだ分からないこと |
|---|---|---|
| 甲 北西の蓋 | P02に蓋が写る。D03にも付近の工事写真がある | 井戸か別の設備か、深さ、内部、埋戻しの有無 |
| 乙 北側境界 | P03で確認できる標識とD02の線を対応させる | 一つの標が未発見。隣地との認識も未確認 |
| 丙 東側通路 | P04に細道があり、D04に通行のメモがある | 利用者と合意の内容、権利や利用範囲 |
この三行は、相談のための記録例です。国庫帰属の全要件を確認するチェック表ではありません。ほかの権利や土地の状態、相続による取得の資料などは、法務省の現行チェックシートでも別に確認します。
撮影日と、どちらへ向けて撮ったかも残してください。敷地図は写真の位置を伝える補助資料なので、所有範囲が未確認の線を、自分で確定した境界として描き直さないようにします。
井戸と境界と通路の未確認事項を質問に変える

資料が並んだら、「通る土地ですか」という一問だけでなく、三か所それぞれについて、何が不足しているのかを尋ねます。法務省の土地要件には、境界等の却下に関わるものと、管理や処分への影響を審査する不承認に関わるものがあるため、問題の名前だけで工事を決めないことが大切です。
井戸らしい蓋は内部を未確認のまま記録する
甲ではP02とD03を示し、「地下設備の種類や状態について、手元の資料に何を補えばよいか」を質問にします。昔の工事写真で埋戻しまで確認できないなら、その限界も伝えます。
地下に物があるだけで一律に同じ結論となるわけではなく、通常の管理や処分を行うために除去が必要かなどの要件と現況が関わります。全ての土地で特別な掘削調査を先にする制度とも限らないので、必要な確認の方法を相談します。危険な蓋を自分で開けて調べる前提にはしません。
境界標がないことと隣地との争いを区別する
乙の質問は、「P03とD02で認識する境界を示せるか、足りない位置の資料は何か」です。標が見つからないことと、隣人が別の線を主張していることは分けます。後者が分かった場合は、争いのある区間と連絡の経緯も記録します。
確定測量を全件で先に終えると決めず、既存資料と現地のどこが不足するかを示してください。自分で標を移したり、図面の数字に合わせて設置したりはせず、必要な調査が分かった段階で土地家屋調査士等へ相談します。
使われている通路は登記と合意の両方を調べる
丙ではD01の権利欄だけでなく、P04とD04を合わせ、「誰が、どの範囲を、どのような合意で利用しているか」の確認先を整理します。登記に通行の権利が見当たらないことだけで、他人の利用に問題がないとは判断できません。
父のメモが承諾の存在を示すのか、単に使われていると書いたものかも未確認として残します。相談前に通路を塞げば解決するとは考えず、利用者や関係資料の確認、権利の争いがある場合の法律相談へつなげます。
相談の回答と追加資料を同じ三行へ追記する

法務局・地方法務局の本局にある相談窓口へ、予約方法を確認して資料を持ち込みます。甲・乙・丙の位置図、写真、登記、公図、取得の経緯を示す資料と、三つの質問をまとめておけば、どの現況について尋ねているかを共有できます。
相談後も同じ三行を使い、回答日、担当窓口、説明を受けた範囲、次に確認する資料を書き足します。下表は回答の内容を示すものではなく、実際に聞いた後に記入する欄の例です。
| 行と質問 | 回答後に書く欄 | 確認を終えるまで残す状態 |
|---|---|---|
| 甲 地下設備の状態を何で示すか | 追加資料の名称、取得先、追加写真の番号 | 内部未確認、除去の要否は未判断 |
| 乙 北側を現地でどう示すか | 不足する位置、隣地への確認事項、調査の範囲 | 未発見の標と認識の不一致を別管理 |
| 丙 通路利用を何で確認するか | 合意資料、利用者への確認、法律相談の要否 | 利用関係の整理が未了 |
例えば甲の追加写真をP05として用意できても、それで乙と丙の確認まで済んだことにはなりません。D04の内容を尋ねた回答が得られたら、元のメモを残し、回答の記録を別番号で足します。
「資料として受け取れる」との説明と、「土地の要件を満たして承認される」との判断も違います。事前相談は承認の保証ではないため、説明の範囲を広げず、なお審査で判断される点を記録します。
撤去と測量の発注は三か所の残作業を見て決める

見積もりを依頼するときは、資料一式を示し、何を確認・整備するための作業なのかを特定します。甲の設備について見積もりが出ても、乙の境界と丙の通路が未確認なら、「土地を国へ渡す工事一式」としてまとめて発注する前に立ち止まる必要があります。
発注判断の欄には、必要な確認が済んだか、作業範囲は決まったか、関係者との調整は残るか、ほかの障害を解消する見込みはあるかを記します。法務局への追加相談や権利の確認が先なら、その作業を未完了として残してください。
工事が必要と分かった場合も、撤去前後の写真、施工位置、作業内容が分かる資料を残せるか、見積範囲へ含めて確認します。工事によって元の状態が見えなくなった後では、どこに何があったかを説明しにくくなるためです。
三か所の整備や調査費が分かったら、ほかに必要な費用も含め、売却や隣地への譲渡を検討する場合と比較します。工事の完了だけで国庫帰属の承認が確定することはなく、申請中も所有者の管理は続きます。
最初にする作業は、敷地図の甲・乙・丙へ、今ある写真と資料の番号を置くことです。空欄を推測で埋めず、「次に誰へ何を確認するか」を一行ずつ決めて相談へ持参しましょう。
よくある質問

三か所を確認すれば土地の要件を全て満たせますか
満たせるとは限りません。この記事は一つの架空現場で相談資料を作る例です。ほかの権利や土地の状態、取得の経緯などは現行チェックシートで別に確認します。
井戸の内部が分からなければ先に掘削調査を頼みますか
一律に先行させず、現在の写真や工事資料と未確認事項を法務局へ示します。追加で何をどう確認するかを相談し、必要な調査の範囲を決めてください。
事前相談で説明を受けたら工事後の承認は確実ですか
確実ではありません。回答で確認できた範囲と、なお審査される事項を分けます。一か所の見積もりが出ても、残る境界や通路の確認を完了扱いにしないことが大切です。