農地を相続してもいらないとき 売却と貸付けや国庫帰属を比べる

相続した田畑を自分では耕せず、手放したい場合でも、すべての農地に同じ方法が使えるわけではありません。売るには買い手と許可、貸すには利用する人と管理の分担、国庫帰属には土地の要件と費用の確認が必要です。
まず農地を一筆ずつ分け、使われ方や権利を表にしましょう。複数の農地があれば、売る土地、貸し続ける土地、国庫帰属を相談する土地を分けて検討するほうが、次の行動を決めやすくなります。
- 耕せない農地の状態と権利の調べ方
- 売却と貸付けで異なる条件と残る負担
- 国庫帰属の審査と費用を比較する方法
三つの出口を比べる前に農地の状態を一筆ずつ確認する

課税明細や登記事項証明書、地図で所在・地番・面積・名義を整理し、現況は農業委員会や現地確認で補います。登記の地目だけを見て、農地法の手続きが不要だと決めないでください。既に貸している場合は契約書も探します。
| 架空の農地 | 確認できた状態 | 最初の照会 |
|---|---|---|
| 甲の田 | 近隣の農家が耕作を希望 | 買受け又は借受けの条件と許可の見込み |
| 乙の畑 | 父の契約で貸付けが続いている | 契約期間と賃料の受取人変更 |
| 丙の畑 | 荒れており境界と賦課金が未確認 | 整備後の利用見込みと国庫帰属の障害 |
この表は制度の説明用です。甲は買い手がいるから即売却、丙は売れないから国が引き取る、と結論づけるものではありません。確認できた事実と未確認の条件を分けて持参するための表です。
農地だけを選んだ相続放棄はできない
農地だけを家庭裁判所で相続放棄し、預金は相続する、という選択はできません。相続放棄は相続人としての立場全体に関わる手続きです。原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内の判断になるため、検討中なら財産全体と期限を先に確認します。
すでに取得した農地の処分を考える場合も、相続登記と農業委員会への届出はそれぞれ別の手続きとして進めます。出口の相談だけで両方が完了するわけではありません。
農地のまま売る場合は買い手と許可の見込みを確かめる

農地を農地のまま売る場合、原則として農地法3条の許可を受けます。農業をしない人でも相続できることと、その人が任意の買い手に自由に売れることは別です。買い手が取得後に適切に耕作できるか、周辺の利用に支障がないかなどを確認します。
甲の田なら、地番と面積、現在の利用状況を示して、相手が購入するのか借りるのかをまず確かめます。価格に合意する前に農業委員会へ相談し、必要な許可や地域の手続きに合わせて契約と引渡しの時期を調整しましょう。
農地以外にして売るには転用の規制も関わります。市街化区域など地域で手続きが異なり、農用地区域では別の確認も必要です。買い手が駐車場として使いたいと言っても、先に舗装や造成を進めてはいけません。
贈与や自治体寄付も引受先の同意と制度確認が必要
近隣へ無料で譲る場合も、相手の承諾と農地法の確認が必要です。自治体が当然に寄付を受けるとも限りません。「価格をゼロにすれば処分できる」と考えず、引受先が取得できる条件と、測量・整備・登記などの負担まで相談します。
貸す場合は借り手と維持管理の分担を決める

所有を残して貸す方法には、農地法3条の許可による貸借のほか、農地バンクが作成する計画を使う方法があります。農地バンクは農地を借り受け、利用する農業者へつなぐ仕組みです。市町村や農業委員会、農地バンクへ相談できます。
ただし、申し込めばどんな農地も借りてもらえるわけではありません。農林水産省は、遊休農地でも簡易な整備で耕作する人を位置づけられる場合を示す一方、営農条件が悪い場合などは借受けできないことも案内しています。丙の畑なら、草刈り後に使えるか、誰が整備費を持つかから確認します。
乙のように既に貸付けが続く農地は、所有者の死亡だけで契約が当然に終了するとは限りません。契約先へ相続を伝え、賃料の受取人や連絡先、残る期間を確かめてから、継続や将来の売却を相談します。
遠方でも残る管理や賦課金を確認する
賃料だけで判断せず、水路などの賦課金、草刈りや設備管理、契約終了時の状態を整理します。貸付期間や賃料の決め方・支払いの時期も一律ではありません。誰がどの負担を持つかを書面で確認できれば、遠方でも続けられるかを判断しやすくなります。
国庫帰属の対象と負担金を処分費用へ入れる

相続等で取得した農地も相続土地国庫帰属制度の申請対象になり得ますが、売れないという理由だけでは承認されません。建物、担保や使用収益の権利、境界の争い、通常の管理を妨げる物や費用などを審査します。共有地なら共有者全員による申請が必要です。
農地バンクの中間管理権が残る場合や土地改良賦課金が発生している場合も、障害となります。丙の畑では「賦課金は払っていないから問題なし」と決めず、土地改良区などへ債務の有無と整理できるかを確認し、法務局の本局へ相談します。
費用は1筆につき審査手数料1万4,000円に加え、承認後の負担金が必要です。田畑の負担金は20万円が基本ですが、一部の市街地や農用地区域等では面積による計算となります。整備や境界確認の費用も含め、「20万円だけで手放せる」と計画しないことが大切です。
納税猶予の農地は処分前に税務を確認する
相続税の納税猶予を受けている農地は、売却や転用、貸し方の変更により猶予の継続へ影響することがあります。一定の貸付けで継続できる場合もあるため、処分契約を結ぶ前に、猶予の対象地と申告資料を税理士・税務署へ示して確認します。
最後は一筆ごとに、買受けの可能性、貸せる期間と残る年間負担、国庫帰属の障害と費用を書き入れます。未確認の条件が最も少ない方法から、申請や相手との具体的な協議へ進めましょう。
よくある質問

農業をしていなくても農地は相続できますか
相続による取得自体には原則として農地法3条の許可は要りません。ただし農業委員会への届出と相続登記は別途必要です。その後の売却や貸付けには、それぞれの制度条件を確認します。
農地バンクに申し込めば必ず貸せますか
必ず借り受けてもらえるわけではありません。整備後の利用者や地域計画、営農条件などを確認します。貸せる場合も期間、賃料、管理や賦課金の分担を確かめてください。
国庫帰属なら農地を20万円で手放せますか
20万円は負担金の基本額であり、農地の区域等によって面積計算になる場合があります。1筆1万4,000円の審査手数料や必要な整備費も別で、土地の要件を満たす審査が必要です。