個人宅建業者が死亡したら 廃業届と既契約の結了

個人で宅地建物取引業を営んでいた親が亡くなると、その免許を子が名義変更して使い続けることはできません。一方、親が既に結んだ契約を終えるために、相続人が進められる業務もあります。
廃業等の届出と、残っている取引の精算は別々に進めます。まず免許の名義と契約書を確認し、新たな依頼を受けることと、死亡前の契約を履行することを分けましょう。
- 個人免許と法人の代表者変更を分ける
- 死亡を知った日から30日の廃業等届を準備する
- 既契約を終える業務と新規営業を区別する
免許証の名義から個人事業か法人かを分ける

屋号や看板が同じでも、免許を受けていたのが親個人なのか、親が代表を務める法人なのかで手続きが変わります。宅地建物取引業者免許証の氏名・商号等と、法人の場合は登記事項を照合してください。
| 免許の主体 | 亡くなった人 | 最初に分ける手続き |
|---|---|---|
| 父個人 | 免許を受けていた父 | 相続人による死亡の廃業等届。免許を子へ移す手続きではない |
| 存続している会社 | 代表者の父 | 代表者等の変更。会社自体の廃業と同一にしない |
| 会社又は個人の事業所 | 専任の宅建士だった父 | 専任者の体制と変更手続き。父個人の資格登録も別に扱う |
会社が残る場合でも、代表者や専任の宅地建物取引士が欠けたままでよいという意味ではありません。誰がどの役割を兼ねていたかを免許権者へ伝え、必要な変更と営業体制を確かめます。
宅建士としての資格登録も別に調べる
宅地建物取引士の登録と、事業を営むための宅建業免許は別の制度です。父が両方を持っていたなら、業者の廃業等届だけで本人の資格登録の手続きも終わるとは考えないでください。
相続人が死亡を知った日から30日以内に廃業等を届け出る

宅建業法11条1項1号では、死亡した業者の相続人が、その死亡の事実を知った日から30日以内に、免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事へ届け出ます。ほかの廃業事由と異なる死亡時の起点を見落とさないよう、死亡日と知った日を控えます。
遺産分割やすべての取引の精算が済むまで待つ届出ではありません。免許番号、死亡の事実、相続人として届け出る関係を説明できる書類を用意し、提出方法と添付資料を所管窓口で確認します。
| 愛知県の案内にある書類 | 確認する内容 |
|---|---|
| 廃業等届出書 | 死亡の事由、免許を受けた主体、届け出る相続人 |
| 宅地建物取引業者免許証 | 資格証や従業者証明書と取り違えず原本を確認 |
| 死亡日と相続人が分かる除籍謄本等 | 死亡の記載と、届出人が相続人であることのつながり |
これは愛知県の提出資料を基にした整理です。国土交通大臣免許か知事免許か、所在地の行政庁によって提出経路や部数等が異なるため、別地域で同じ部数と決めつけないでください。
免許証の紛失も期限内の届出と分けて相談する
免許証が見つからない場合は、紛失の説明や発見時の返納について所管の取扱いを確認します。証書を探していることだけを理由に、期限のある届出を放置しないことが大切です。提出した書類と受付の記録は、保証協会等への手続きにも備えて保管します。
死亡前に締結した契約を終える業務だけを取り出す

宅建業法76条は、亡くなった業者の一般承継人について、既に締結された契約に基づく取引を「結了する目的」の範囲では、なお宅建業者として扱います。結了とは、残っている取引を履行し、終えることです。
この規定があるため、免許を相続できないことと、残された契約を一切扱えないことは同じではありません。ただし、親の免許で新しい顧客から次々に依頼を受け、営業を継続できる制度でもありません。
たとえば、父の事務所に次の三つの案件があったと仮定します。契約書と締結日、残る作業を並べ、76条の範囲へ入るかを免許権者や専門家に説明できるようにします。
| 死亡時の状態 | 整理する作業と確認点 |
|---|---|
| 売買契約が成立し決済待ち | 既契約の履行、決済、預り金等の精算。誰が契約上の立場を承継するかも確認 |
| 媒介契約はあるが売買は未成立 | 媒介契約の範囲と残る業務を示し、どこまでが既契約の結了目的か確認 |
| 死亡後に初めて届いた新規相談 | 新たな契約を親の免許で受けない。後継者自身の免許等を先に検討 |
連絡役と契約に署名する権限を一致させる
家族内で連絡を担当する子が、そのまますべての契約に署名できるとは限りません。相続人の範囲、遺言、分割、委任等に基づく権限と、相手方への説明をそろえます。顧客の預り金と遺産の預金も混ぜず、相手先と金額を契約ごとに記録してください。
保証金の取戻しと契約精算は別々に進める

営業保証金を法務局へ供託していた場合と、保証協会へ加入して弁済業務保証金分担金を納めていた場合では、取戻しの窓口や手続きが異なります。廃業等届を出しただけで、すぐ全額が口座へ戻るものではありません。
免許証や会費の資料から加入先を調べ、廃業届の控え、必要な公告等、取引上の債権の有無を確認します。未収報酬、返還すべき預り金、保証金は性質が違うため、一つの「戻るお金」にまとめないようにします。
後継者が同じ事務所で新たに営業するなら、その人又は法人の免許と営業要件を先に相談します。税務上の廃業・開業や帳簿の区切りは、個人事業主が死亡したときの事業承継も参考に、許認可と別に進めてください。
相続する契約と債務、手続きの担当を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

法人の代表者が死亡した場合も免許は失効しますか
会社が存続している場合、代表者個人の死亡と個人業者の死亡は別です。代表者や専任宅建士等の変更と営業体制を確認します。
死亡廃業届の30日は死亡日から数えますか
個人業者の死亡では、相続人が死亡の事実を知った日から30日以内です。死亡日と知った日を分けて控え、免許権者へ届け出ます。
相続人は父の契約を全部続けられますか
既締結契約の取引を終える目的の範囲では、法76条の取扱いがあります。新規営業を続ける制度ではなく、契約ごとの残作業と権限を確認します。