相続税がかからない財産とは 非課税になる範囲と申告の注意点

相続税がかからない財産には、日常の礼拝に使う墓地や仏壇などのほか、限度額までの死亡保険金や死亡退職金等があります。ただし、財産の名前だけで、すべて同じように除外できるわけではありません。
非課税財産を確認する作業と、基礎控除や配偶者の軽減で税額がゼロになるかを調べる作業は別です。財産一覧から何を外し、何を条件付きで計算するのかを整理します。
- 財産そのものの非課税と控除や特例で税額がゼロになることは異なる
- 墓や仏壇も礼拝用と投資や商品として保有する場合で扱いが分かれる
- 保険金や退職金や寄附は取得者と限度額や手続きの条件を確認する
非課税財産と控除で税額がゼロになる財産は違う

財産の種類による非課税と総額の基礎控除を分ける
相続税では、原則として金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を確認します。その中に、法令で相続税をかけないものや、一定部分を非課税とするものがあります。
一方、基礎控除は対象となる財産等から求めた課税価格の合計額と比べるものです。「土地は基礎控除内だから土地が非課税財産になった」と表現すると、制度の違いが見えなくなります。
申告を条件に使う特例は別に確認する
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例により、最終的な税額がゼロになる場合があります。しかし、これらの適用のための申告が必要になることがあります。
申告が必要かどうかの全体像は相続税がかからない場合の申告の要否で確認できます。この記事では、その前段階となる財産の分類を扱います。
日常の礼拝に使う墓地や仏壇は非課税となる

普段の礼拝に使う物であることを確認する
墓地、墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具等で、日常礼拝しているものは原則として非課税です。亡くなった人の家庭で使っていた目的と保有の実態を確認します。
骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや、商品として所有しているものには相続税がかかります。金製の仏具という名称だけで、資産運用目的の保有物も一律に除外できるわけではありません。
非課税財産に関する未払代金は債務控除できない
生前に購入した墓の未払代金など、非課税財産に関する債務は、通常、相続税の課税価格から差し引けません。墓が非課税で、借金だけがほかの遺産から引けるという計算にはしません。
葬式の支出とも区別します。相続税で控除できる葬式費用で確認できる葬儀等の費用と、墓や仏壇の購入費用を同じ欄へまとめないでください。
死亡保険金と死亡退職金にはそれぞれ限度額がある

500万円に法定相続人の数を掛けた額をそれぞれ計算する
相続税の対象となる死亡保険金と死亡退職金等には、相続人が受け取る対象額について、それぞれ500万円×法定相続人の数という非課税限度額があります。一つの共通枠ではありません。
たとえば相続人が妻と子2人なら、保険金の限度額は全体で1500万円、死亡退職金等も別に1500万円です。保険の契約ごと、受取人ごとに1500万円ずつ増えるものではありません。
相続放棄した人は人数の計算と適用可否を分ける
枠を求める法定相続人の数は、放棄がなかったものとして計算します。ただし、放棄した人が受け取る保険金等には、この相続人向けの非課税枠を使えません。
受取人が複数で対象額が限度を超える場合は、受取割合等に応じて非課税額を配分します。詳しくは生命保険の非課税枠と受取人別の扱いを確認してください。
| 財産 | 非課税を判断するポイント |
|---|---|
| 死亡保険金 | 保険料の実際の負担者と受取人や相続人との関係 |
| 死亡退職金等 | 支給の性質と確定時期や受取人 |
| 共通する限度額の算式 | 500万円×法定相続人の数 保険と退職金は別枠 |
| 放棄した人の受取分 | 相続人向けの非課税枠は適用しない |
余った非課税枠を預金へ移すことはできない
法定相続人3人で保険金1000万円なら、保険金の非課税限度額1500万円のうち500万円が使われない計算になる場合があります。しかし、その500万円を預金や土地から追加で引けるわけではありません。
非課税は制度の対象財産の範囲に限られます。死亡退職金の枠が残る場合も同様に、別の財産へ付け替えず、各明細で計算を完結させてから遺産全体へ合計します。
寄附等の条件を確かめ非課税の根拠を記録する

寄附する相手と期限を先に確かめる
相続等で取得した財産を、相続税の申告期限までに国、地方公共団体、特定の公益法人や認定NPO法人等へ寄附した場合、一定の要件で非課税となります。どの団体へ渡しても同じ扱いになるわけではありません。
寄附先の資格、財産の使途等に加え、相続税申告書へ必要事項を記載し、受領証等を添付する手続きを確認します。寄附するつもりだったという意思だけで遺産額から外すものではありません。
一般家庭では使わない制度も対象者を限定して確認する
心身障害者共済制度に基づく所定の給付金を受ける権利、一定の幼稚園の事業用財産など、固有の条件を持つ非課税財産もあります。公益信託へ支出する財産についても法令と対象制度を確認します。
これらを一般の預金や自宅へ広げて解釈しないでください。該当する給付や事業、信託契約があるときに、支払機関等の資料と一次資料から確認します。
何を外したかが分かる財産一覧にする
非課税財産は一覧から痕跡を消すのではなく、名称、取得額又は把握額、非課税とする範囲、根拠資料を残します。保険金なら支払通知、礼拝用財産なら用途、寄附なら受領証等が対応します。
自分の判断だけで非課税と決められないものは、未確認の欄へ残してください。申告の担当者が確認する前に外してしまうと、財産があった事実自体が伝わらなくなります。
差し引いた後で遺産全体の申告と納税を判断する
非課税の範囲を確かめた後、債務等、対象贈与、基礎控除、土地の特例や税額控除へ進みます。保険金が枠内というだけで、預金や土地も含めた申告が不要になるわけではありません。
まず支払通知と財産一覧を並べ、非課税にしたい財産ごとに「なぜ対象外又は限度内なのか」を一行書きます。その根拠が不足する項目から確認を進めると、除外と申告の判断を混同せずに済みます。
よくある質問

仏壇なら高額でも必ず相続税がかかりませんか
必ずではありません。日常礼拝用は原則非課税ですが、投資対象や商品として保有するものは課税対象です。
生命保険と死亡退職金は合計で一つの非課税枠ですか
別枠です。それぞれ対象となる取得者と金額を確認し、500万円×法定相続人の数で限度額を計算します。
非課税財産だけ調べれば申告不要か分かりますか
分かりません。ほかの財産と対象贈与、債務、基礎控除等を合わせて判断します。申告を要件とする特例もあります。