遺産分割協議書をなくしたら 控えの取得と再作成の注意点

遺産分割協議書の原本をなくしても、既に有効に成立した合意がそれだけで当然に消えるわけではありません。まず、他の相続人や作成を頼んだ専門家に原本・控えが残っていないかを確認します。
そのうえで、次に行う銀行手続きや登記に何を提出する必要があるかを尋ねます。同じ合意内容を証明し直すことと、財産の分け方を変更することは別なので、紛失を機に日付や取得者を安易に書き換えないでください。
協議書をなくしても成立した合意が当然に消えるわけではない

遺産分割協議書は、相続人が合意した分け方を残し、後の手続きで示す書面です。「書面が見つからない」と「合意が成立していない」は同じ問題ではありません。
合意の成立と手続きで出す書面を分ける
共同相続人間の有効な合意が成立していたなら、原本をなくしたことだけを理由に当然無効となるわけではありません。銀行や法務局へ何を提出できるか、裁判などで合意をどう証明するかを別に検討します。コピーやメールの記録も、内容を調べる手がかりになります。
内容の争いがある場合は再作成を急がない
分け方に争いがある、署名が本物ではないと言われている、相続人が漏れていたなどの場合は、単なる紛失とは違います。控えを見て同じ文章を作れば解決するとは限らないため、成立時の事情を残して弁護士に相談します。
協議書に載せた財産の特定に迷う場合は、親の財産の調べ方も参考に、元の財産目録と取得した資料を照合します。
他の相続人と作成を頼んだ専門家へ控えを尋ねる

最初の照会先は、ほかの相続人と書類の作成を依頼した専門家です。原本を相続人の人数分作っていれば、自分の分をなくしても別の原本が残っている可能性があります。
原本が何通あるかを確認する
同じ題名の書面でも、修正前の案や署名前の原稿ではないかを確かめます。財産の表示、取得者、署名押印、契印などを比べ、銀行や登記に使った版を特定します。作成者には保管の有無だけでなく、原本還付の経緯や提出先も尋ねてください。
提出先の閲覧や返却の扱いを問い合わせる
登記に添付した書面を法務局で閲覧する場合は、利害関係や保存期間、閲覧できる範囲などの条件があります。法務局が協議書の新しい原本を発行してくれるわけではありません。申請した登記所へ、何を証明すれば閲覧できるかを問い合わせます。
提出先が求める原本と写しの条件を確かめる

控えが見つかったら、次に行う手続きの提出先へ見せて、使える書面か確認します。内容の確認に使えるコピーが、そのまま名義変更の添付書類として足りるとは限りません。
控えを内容確認に使う場合と手続きに使う場合
相続税申告、相続登記、銀行の払戻しでは求められる形式が異なります。登記では原本の提出と還付の方法、税務では写しの提出、銀行では所定の確認手順をそれぞれ確認します。一つの銀行の扱いを、すべての提出先の決まりとして使わないでください。
原本還付の扱いも提出先へ確認する
印鑑証明書の発行後の期間も、登記と金融機関を同じに考えないことが大切です。登記で原本の返却を希望する場合は、申請時に原本還付を申し出る必要があります。登記完了後の依頼には応じられないため、提出前に方法を確認してください。銀行等でも返却の可否と方法を確かめ、郵送日や返却予定日を記録します。複数の手続きを同時に進めるなら、原本がどこにあるかを一覧にします。
| 手元の状況 | 先に確認すること |
|---|---|
| 他の相続人に原本がある | その原本を提出できるか・返却の方法 |
| コピーだけがある | 実際の提出先の原本・写しの要件 |
| 提出済みで戻っていない | 原本還付の依頼と現在の保管先 |
| 合意内容も争われている | 再作成前に成立経緯を弁護士へ相談 |
再作成では元の合意内容と現在の作成日を区別する

再び書面を作る必要がある場合は、元の合意内容を確認する書面なのか、新しく分割を変更する合意なのかを明確にします。日付、署名する人、表題は、作成の目的に合わせて専門家へ確認してください。
同じ内容の確認と新しい分け直しを分ける
昔の内容と同じだからといって、現在作成した書面を事実と違う過去の日付で作ることは避けます。元の協議成立日と、今回それを確認した日をどう示すかを検討します。他の相続人の印影や署名を画像から流用して、原本らしい書類を作ってはいけません。
元の相続人が亡くなっている場合は承継関係を確認する
元の相続人が既に亡くなっているなら、その人の相続関係も調べます。誰が確認に関与し、どの内容を承継しているかで必要な対応が変わります。取得者や代償金を変更するなら再分割に伴う贈与税等の問題もあるため、単なる再発行として処理しないでください。
原本と電子控えの保管先を相続人で共有する

原本が整ったら、その書面を使って実行した登記や払戻しの記録もまとめます。後で新しい財産が見つかったとき、どの範囲の合意をしたかを確認する資料になるためです。
財産目録と実行記録を一緒に保管する
原本の保管場所と、相続人ごとの所持状況を記録します。電子コピーは内容確認に役立ちますが、原本が必要な手続きの代わりになるとは限りません。保管を専門家へ頼んだ場合は、連絡先や保管期間も残しておきます。
個人情報を含む書面の共有範囲を決める
協議書には財産額、住所、印影などの個人情報が含まれます。共有する人と方法を決め、誰でも開ける場所へ置かないでください。まずは最後に協議書を使った提出先と他の相続人に連絡し、原本が戻っていないかを確認しましょう。
よくある質問

協議書をなくすと遺産分割は無効ですか
紛失だけで既に成立した有効な合意が当然に無効になるわけではありません。合意の証明と、手続先が求める書面を別に確認します。
法務局で原本を再発行できますか
法務局が民間の協議書の原本を再発行する制度ではありません。添付書面の閲覧には利害関係等の条件があるため、申請した登記所へ確認してください。
同じ内容なら昔の日付で作り直してよいですか
事実と異なる作成日は避けてください。元の合意を現在確認する書面なのかを明確にし、記載方法と署名する人を専門家へ確認します。