親が貸したお金を相続したら 回収に必要な証拠と請求の進め方

親が知人へ貸したお金を返してもらう権利も、相続の対象になります。
借用書が見つからなくても、送金や返済の記録、やり取りから貸付けを確認できることがあります。
ただし、相続人の一人が当然に全額を請求できるわけではありません。まず残額と請求する権限、時効を確認し、回収と相続税の評価を分けて進めます。
- 貸付金を返してもらう権利は通常の金銭債権として承継する
- 借用書だけでなく送金と返済や当時のやり取りを保存する
- 回収の遅れだけで相続税評価をゼロにせず時効も確認する
親が貸したお金を返してもらう権利も相続の対象になる

預金の相続と同じ分け方とは限らない
一般の貸付金のように金額で分けられる債権は、原則として法定相続分に応じて各相続人へ承継されます。
銀行預金の遺産分割に関する扱いとは、分けて考える必要があります。
例として、父が友人へ100万円を貸し、相続人が子二人だけで、遺言等がないとします。
単純な貸金債権であれば、子は原則として各50万円の返還を求める権利を承継します。一人が連絡係になっても、当然に100万円全額の権利を得るわけではありません。
相続人が借主なら自分の債権部分との混同を確認する
借りた人自身が相続人である場合は、債権者と債務者が同じになる部分が生じます。
この部分の混同などを確認する必要があり、ほかの相続人の請求権まで全額消えるという意味ではありません。
ほかの相続財産との分け方や、貸付けなのか贈与なのかが争われる場合は、分割を決める前に資料を示して相談してください。
借用書と送金や返済の記録から残額を確かめる

振込だけでは贈与との区別がつかないこともある
借用書には貸した金額だけでなく、返済期限、利息、分割払いの条件を確認します。
見つからない場合は、親の通帳や銀行の取引履歴、メール等のやり取りを保全します。
送金した事実だけでは、貸付け、贈与、立替えのどれだったか決まらない場合があります。
「返す」「返済を待ってほしい」といった当時の認識が分かる記録は、元のデータを残してください。
利息と担保や保証の契約も調べる
元の貸付額から、すでに返済された金額を差し引き、死亡日現在の残額を出します。
約定利息や遅延損害金、担保・保証の有無も確認しますが、家族の推測で条件を後から作らないようにします。
| 資料 | 確かめる事実 |
|---|---|
| 借用書や契約書 | 貸付額 返済期限 利息 担保 |
| 通帳や振込明細 | 交付額と返済された額 |
| メール等のやり取り | 貸付の合意や返済意思 |
| 相続関係資料 | 誰がどの割合の権利を承継するか |
取引先が分からない段階では、親の財産の資料と照会先を参考に、支出と返済入金の名義をたどります。
借主へ請求する前に相続人と時効を確認する

死亡によって時効がリセットされるわけではない
親の死亡で、貸付金の時効が初めから始まり直すわけではありません。貸した時期、返済期日、最後の返済や債務の承認、裁判手続きの有無を確認します。
民法改正前の契約かどうかでも確認事項が変わります。
死亡から一律5年、最後に手紙を送った日から一律10年などと決めず、期限が近い可能性があれば早く弁護士へ記録を見せます。
催告と裁判手続きの効果を分ける
借主へ連絡するときは、親の死亡、自分の承継分、請求する残額、その根拠と返済先を説明します。
一人がまとめて受領するなら、ほかの権利者からの委任など、全額を受け取る権限を確認します。
内容証明郵便などによる催告と、訴訟や支払督促は、時効への効果が同じではありません。
催告を繰り返せばいつまでも権利を保てるとは考えず、争いがあるときは裁判上の対応も相談します。
回収と相続税の評価は別に進める

単なる返済遅延だけで評価ゼロにしない
貸付金は、原則として死亡日現在の返済されるべき元本と、既に経過した期間に対応する利息などを基に評価します。
まだ入金されていないから財産に入れなくてよい、という判断はできません。
回収不能や著しく困難な金額を除く取扱いはありますが、返済が遅れている、借主が赤字だ、という事情だけで自動的にゼロになるわけではありません。
死亡日現在の借主の資産、担保や法的整理など、客観的な根拠が必要です。
資料が不足するときは申告期限前に相談する
回収交渉が終わらないまま、相続税の申告期限が来ることもあります。原則10か月の申告期限から逆算し、残額や評価の不明点を税理士へ伝えます。
最初に、契約、入出金、相続関係、時効に関係する日付を一つにまとめてください。
回収を諦めるときも、債権の放棄と家庭裁判所でする相続放棄を同じ手続きと考えないようにします。
よくある質問

借用書がなければ返してもらえませんか
借用書がなくても、送金・返済記録や当時のやり取りなどから貸付けを確認できる場合があります。資料の十分さは個別に判断します。
相続人の一人が全額を請求できますか
当然には請求できません。通常の貸金債権の承継割合と、全額を請求・受領する権限があるかを確認します。
返済されない貸付金に相続税はかかりますか
未回収でも相続財産の確認が必要です。回収不能等による評価の取扱いは、死亡日現在の客観的な事情に基づき判断します。