遺産の使い込みの時効を整理する記入例 二つの出金と認識日を照合

使い込みが疑われる出金が二つあるとき、合計額に一つの期限を付けると見落としが生じます。出金の時期だけでなく、親と自分が何をいつ知ったかを、取引ごとに対応させる必要があるためです。
ここでは2022年と2018年の二つの出金を、父の返還要求と死亡後に子が得た資料へ照合する架空例を使います。期間の候補を記入する方法であり、実際の請求権の成立や満了日を確定する例ではありません。
- 新旧二件の出金と父子の認識を分ける台帳
- 請求根拠ごとに期間候補と保留を残す方法
- 催告の到達と次の手続きを別に管理する表
二つの出金と父と子の認識を一枚に並べる

父が2026年10月1日に亡くなり、子が10月10日に取引履歴を受け取ったとします。履歴D01には、取引Aとして2022年6月15日の30万円、取引Bとして2018年8月20日の80万円の出金がありました。
| 資料 | この例で分かること | 未確認のこと |
|---|---|---|
| D01 取引履歴 | A30万円とB80万円の出金日 | 誰が何に使ったか、権限や同意 |
| D02 父の返還要求の控え | 2024年9月20日付でAの相手へ返還を要求 | 実際の到達日、返事、相手の承認等 |
| D03 死亡の戸籍 | 父の死亡日2026年10月1日 | 請求権の承継割合は別に確認 |
| D04 子の取得記録 | 子が10月10日に履歴を取得 | 父のBへの認識は分からない |
出金しただけでは使い込みは確定しません。ここでは返還請求を検討する準備として、支出先・父の同意・父自身の費用だった可能性を別欄で調べます。AとBを合計110万円と記す場合も、それぞれの起点欄は残します。
D02の日付は父が何を認識していたかの資料です。返還要求を出したという事実と、相手へ到達したこと、相手が返す義務を認めたことは、同じではありません。
取引Aは新法の二つの起点と不法行為を分ける

Aについて、2022年6月に不当利得返還請求権が発生し行使でき、父が2024年9月に権利行使可能と知ったと仮定すると、現行法の二つの期間を別に置きます。父の控えに何が書かれているかで認識の評価は変わるため、ここでは候補です。
| Aの請求根拠 | 起点の仮定 | 期間の候補と確認 |
|---|---|---|
| 不当利得の主観期間 | 父が2024年9月に権利行使可能と知った | 5年なら2029年9月が候補 |
| 不当利得の客観期間 | 2022年6月から行使可能 | 10年なら2032年6月が候補。上の5年との早いほうを検討 |
| 不法行為の主観期間 | 父又は法定代理人が2024年9月に損害と加害者を知ったという別の仮定 | 3年なら2027年9月が候補。不当利得5年より先に来る |
| 不法行為の客観期間 | 2022年6月の行為 | 20年なら2042年6月が候補。短期との早いほうを検討 |
この表は年月の見通しを示すだけで、正確な満了日や完成猶予・更新を計算したものではありません。特に「返還を求めた」ことから、二つの請求の認識要件が常に同時に満たされるとは断定しません。
子の2026年の把握で上書きしない
父に生じた請求権を承継するなら、父の生前から進んでいる期間は死亡でリセットされません。子が2026年に知ったから一律そこから5年、という行を作らず、D02を示して父の認識と過去の手続を確認します。
取引Bは改正前の発生と不足を保留欄へ残す

Bは2018年8月の出金で、2020年4月1日の改正前です。仮にその時に不当利得返還請求権が生じていれば、期間について改正前の規律を検討します。現行の「知った時から5年」をそのまま追加して計算しません。
| Bの台帳欄 | 現時点の記入 | 相談する不足 |
|---|---|---|
| 権利発生と行使可能 | 2018年8月という候補 | 贈与・委任等の原因と出金の使途 |
| 不当利得の期間 | 旧法の原則10年なら2028年8月が一候補 | 正確な起点、経過措置、既存の猶予・更新事由 |
| 父の認識 | 不明 | 当時のメモ、法定代理人、過去の要求 |
| 相手の返金や承認 | 未確認 | 返信、返金、債務を認めた経緯 |
2028年という候補が出ても、請求権の成立や起点が未確認のまま、そこまで待てるとは判断しません。不法行為の3年・20年の検討も別に残し、古い20年の期間には改正附則35条の経過措置があることも確認します。
AとBは同じ相手の出金でも、適用する規律や資料が違います。相手の一通の返答が、どちらの債務をどの範囲で認めたものかも区別してください。
催告の到達と次の手続を別の行で管理する

例えば子が弁護士と相談し、2026年11月2日に通知を発送し、11月4日に到達した場合を、今後の記録方法として考えます。これは実際に催告した記録ではありません。対象取引と請求の内容が特定されているかを、送った文面で確認します。
| 通知後の記録欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 対象 | AとBのどちらを、どの権利に基づいて求めたか |
| 発送と到達 | 発送11月2日、到達11月4日という仮例。受領証・配達資料を対応 |
| 期間への効果 | 催告で猶予される期間と正確な次期限を弁護士へ確認 |
| 次の作業 | 追加履歴、相手の回答、裁判上の請求等を誰がいつ進めるか |
| 承認等の確認 | 相手の返事や一部返金がどの取引へ対応するか |
催告による完成猶予は原則6か月で、その間の再催告で延長し続けられません。6か月以内なら何をしてもよいという意味でもなく、裁判上の請求、調停、承認等で要件と効果が異なるため、次の対応を空欄のままにしないことが大切です。
父が2024年に出したD02にも、到達や返信による効果があったかを別途確認します。認識日の資料だから期間への効果はない、又は要求したから永久に止まる、のどちらにも決め付けません。
最初の相談にはD01〜04、A/Bの台帳、通知の控えと到達記録を一組で渡します。資料収集や遺産分割の話合いを続けている間も、返還請求の期間が自動的に止まるとは考えないでください。
台帳では、不明な起点を日付で埋めるより、何が分からず、どの資料で確認するかを残してください。AとBの違いを保った一覧が、期限と請求方法を具体的に相談する材料になります。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

二つの出金を合計して一つの期限を付けられますか
避けたほうがよい整理です。出金時期、請求根拠、権利者の認識、過去の要求や承認を取引ごとに分けます。
父が返還を求めた日が分かれば時効は確定しますか
その日が示す認識と、通知の到達・相手の承認等の効果は別です。文面と返信も調べ、請求根拠ごとに確認します。
不当利得の5年だけを見ればよいですか
客観的な10年や改正前の扱いに加え、不法行為を主張するなら別の3年・20年も検討します。例のAでも3年の候補が先に来ます。