相続で不在者財産管理人を申し立てる準備 候補者と分割案の作り方

行方不明の相続人について不在者財産管理人を申し立てる際は、所在を調べた記録と、不在者の権利を守る分割案をそろえます。管理人の候補者を決めるだけでは、遺産分割協議の準備は終わりません。
ここでは、申立書の各欄へどの資料を結び付けるかを整理します。選任の申立てと、選ばれた管理人が後に行う権限外行為許可の申立てを分け、分割案の資金不足も先に確かめましょう。
- 所在調査を申立書と資料番号へ結び付ける方法
- 候補者の利害関係と取得分の資金不足の確認
- 選任と権限外行為許可を分けて準備する手順
申立理由を最後の連絡と調査結果の時系列にする

「何年も連絡がない」だけでは、現在の所在をどこまで調べたのかが伝わりません。最後の連絡、戸籍の附票等から確認した住所、郵便の結果、親族に尋ねた結果を時系列に並べ、申立理由の記載へつなげます。
| 申立書で説明する内容 | 付ける資料の例 | 記入時の注意 |
|---|---|---|
| 申立人の利害関係 | D01 被相続人・不在者・申立人を結ぶ戸籍と関係図 | どの相続を進めるためかを記す |
| 住所と所在の調査 | D02 戸籍の附票等、D03 返送郵便 | 調査日と住所の根拠を残す |
| 現地や親族への確認 | D04 現地調査の報告、D05 親族の回答 | 直接確認と伝聞、未回答を区別 |
| 管理を必要とする財産 | D06 財産目録と評価資料 | 不在者固有の財産と今回の遺産を分ける |
D01等は整理のための架空の資料番号で、裁判所の様式番号ではありません。必要書類を全て挙げた表でもないため、提出先の最新案内で不足を確認してください。本人に無断で利用できない情報を取得したり、許可なく建物へ入ったりして調べてよいわけではありません。
大阪家庭裁判所の手引きは、住所を追ったうえでの郵便や現地・親族の調査を具体的に案内しています。返送理由が宛所不明なのか、留置期間の経過なのかも区別します。書類の発行時期や調査の方法は提出先の指示に従い、全国一律の取扱いとして流用しないようにします。
候補者の資料と分割での利害関係を点検する

管理人は、不在者の代わりにその財産を守る立場です。家族の希望する分け方に賛成してくれる人を選ぶ制度ではありません。同じ遺産の共同相続人を候補者にすると、分割で利害が対立するため適任とはいえません。
候補者を記載できる裁判所では、住所等の資料に加え、不在者との関係、財産管理の経験、相続財産から受ける利益、他の当事者との関係を説明できるようにします。候補者を書けば必ずその人が選ばれるわけではありません。
大阪家庭裁判所本庁の手引きでは、原則として申立人から候補者を推薦せず、利害関係のない弁護士を選任する運用が示されています。これは同庁の取扱いです。管轄の裁判所で候補者の提出方法を確認し、家族全員で先に依頼を確約しないでください。
財産目録と評価資料から不在者の取得分を示す

分割案には、不在者が取得する財産と価額を明記します。原則として不在者の法定相続分を確保する内容が必要であり、「帰ってこないのでゼロ」とする案を家族だけで決めても、そのまま許可される前提にはできません。
次は、父の遺産が自宅1,800万円と預金600万円、相続人が子3人だけで、そのうち1人が不在者という架空例です。負債・特別受益・寄与分等の調整はないものとして、法定相続分の価額を一人800万円と置きます。評価額も説明のための仮定であり、裁判所がその額を認めた事例ではありません。
| 案の内訳 | 金額と資料 | 不足の確認 |
|---|---|---|
| 不在者の取得分の基準 | 2,400万円÷3=800万円 | D06で不動産・預金の価額を裏付ける |
| 不在者に配分する遺産の現金 | 預金600万円 | 他の支払いや費用で使う分がないか |
| 自宅取得者から追加する金銭 | 不足200万円 | D07分割案とD08自己資金等の証拠を対応させる |
現金600万円を全て不在者へ渡しても、この仮定では200万円不足します。自宅を取得する人が補うなら、手持ち預金や実行可能な融資条件等から、いついくら払えるのかを示します。「売れたら払う」という予定だけを、確保済みの財産と同じ欄に置いてはいけません。
不動産に抵当権がある、評価に争いがある、預金から債務や費用を払う必要がある場合は、表の前提から変わります。現物や持分を取得させる案も、管理の負担や換金の見通しが伴うため、法定割合の数字だけで可否を決めないようにします。
選任後に権限外行為許可の資料を最終案へそろえる

管理人が選任されても、それだけで遺産分割協議を成立させる権限を得るわけではありません。管理人が持つ通常の権限を超えるため、別に家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。この申立てを行うのは、選任された管理人です。
家族は管理人へ、戸籍と相続関係図、財産目録、評価資料、分割案、代償金等の支払資料を引き継ぎます。管理人が不在者の利益を検討して案の修正を求めることもあるため、家族が作った案を変更できない完成契約として扱わないでください。
許可の対象となる最終案が、相続人の氏名、物件の表示、預金の範囲、金額、振込先、支払時期の各欄で一致しているかを確認します。許可後に取得分や支払方法を変える場合も、当初の許可のままでよいと判断せず、管理人を通じて裁判所へ確認します。
管理口座と報告と費用を分割後も管理する

分割が終わっても、不在者の取得財産を家族が自由に預かって使えるようになるわけではありません。管理人は財産を管理し、財産目録や管理報告書を裁判所へ提出します。管理人の職務は、申立ての目的となった分割の完了だけで当然に終わるものではありません。
管理口座への入金、代償金の受領、登記等の結果を管理人へ報告し、元の目録と増減が対応するよう記録を残します。不在者が現れた場合や死亡が確認された場合等の引継ぎは、その時点の事情と裁判所の手続きに沿って行います。
選任申立てには収入印紙や郵便の費用等のほか、予納金を求められる場合があります。報酬、期間、予納額は事件と裁判所の取扱いによるため、「一定額を払えば分割まで全て終わる」と見積もらないでください。申立人が立て替えた予納金の返還も、当然に保証されるものではありません。
所在の調査資料と分割案を別々に保管せず、申立書の欄から参照できる一式にまとめてください。不在者の取得分、候補者の利害、支払資金の不足を先に示すことで、選任後に引き継ぐべき論点が明確になります。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

共同相続人の一人を管理人にして分割できますか
同じ分割で利害が対立するため、共同相続人を候補者にすることは適切ではありません。候補者の取扱いと選任は提出先の家庭裁判所へ確認します。
不在者へ渡す預金が法定相続分に届かなければどうしますか
評価と債務等の前提を確かめ、代償金を補う資金や取得財産の見直しを検討します。支払予定だけでなく実行を裏付ける資料を管理人へ示します。
管理人の選任と同時に遺産分割も許可されますか
選任だけで分割協議ができるわけではありません。選ばれた管理人が最終的な分割案等を示し、別に権限外行為許可を得る必要があります。