事業承継税制の一般と特例を選ぶ準備 三つの会社例で条件を照合

法人版事業承継税制の一般措置と特例措置を選ぶ準備では、先に後継者の人数、株式を渡す予定日、役員歴を並べます。制度の比較表で特例の割合が高いと分かっても、自社の承継案がその条件に合うとは限らないためです。
ここでは、後継者が2人いる甲社、2028年の贈与を予定する乙社、後継者が新任役員となる予定の丙社という架空の三例を使います。適用できると認定された事例ではなく、候補となる制度と不足資料を分けて相談するための記入例です。
- 人数と承継時期や役員歴から制度候補を分ける方法
- 三社の予定へ必要な証拠と未確認欄を付ける例
- 適用後の届出と納税資金まで相談へ持ち込む準備
三社の予定を人数と承継日と役員歴で固定する

三社とも、株式の贈与によって初めて法人版事業承継税制の適用を検討する設定とします。既に猶予を受けている人の追加取得や、贈与者死亡時の相続税への切替えは、この三例とは別に確認する場面です。
| 架空の会社 | 決めている予定 | まだ確かめていないこと |
|---|---|---|
| 甲社 | 後継者2人へ2027年11月に贈与したい | 各人の議決権・代表権、取得株数、計画の確認 |
| 乙社 | 後継者1人へ2028年に贈与したい | 一般措置の条件、前倒しの可否、将来の制度 |
| 丙社 | 後継者が2026年11月に役員就任し、12月に贈与を受ける予定 | 就任の実行、代表権、年齢、株式配分等 |
この予定表だけでは、会社が非上場中小企業者等の条件を満たすか、資産管理会社の除外に該当しないかも未確認です。先代経営者の条件、納税猶予に必要な担保等も含め、制度の候補を絞る資料として使います。
2026年10月の現行制度では、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、初めて特例の対象となる贈与・相続等の期限は2027年12月31日です。計画と実際の株式取得を、同じ一つの締切にまとめないでください。
甲社は二人の議決権と代表権を同じ表へ置く

甲社では、後継者2人という希望から、最大3人の後継者を対象とする特例措置を候補にします。一般措置は、複数の株主から1人の後継者への承継を対象とする仕組みであり、同じように2人へ使える前提にはできません。
ただし、特例の人数の範囲内というだけでは足りません。2人とも代表権を持つか、各人が総議決権の10%以上を保有するか、各人と特別の関係がある人のうち他の後継者を除いた中で最多となるか等を確認します。後継者側の50%超の条件と、贈与で取得する株数の条件も別にあります。
| 甲社の不足欄 | 用意する資料 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 2人それぞれの議決権 | 取得前後の株主名簿と種類株式の内容 | 誰を各人の特別関係者に含めるか |
| 2人の代表権と先代の退任 | 登記、選任議事録、退任の予定 | 贈与時点の代表権の所在 |
| 各人が取得する株数 | 贈与契約案と配分表 | 各人の保有数と先代の残株数等の要件 |
| 計画に記載する後継者 | 特例承継計画案と支援機関の所見 | 計画の確認と実行案を一致させる |
甲社は2027年11月の贈与を予定しているので、その時までに計画を考えればよいわけではありません。計画提出の9月末が先に来ます。贈与日を決める前に、2人へ渡す株数と経営体制を具体化し、計画提出の準備へつなげます。
乙社は二つの期限を予定表に置いて一般措置を検討する

乙社の初回贈与予定は2028年です。現行の2027年末までという初回の対象取得期限を超えるため、計画を2027年9月末までに出しておくだけで、2028年の初回贈与へ特例を使えることにはなりません。
この予定を維持するなら、現在の一般措置の条件を基に相談を進めます。ただし、2028年の制度が現状のまま続くことや、特例が延長されることを、現時点で保証するものではありません。通常納税や他の承継方法との比較も残しておきます。
| 乙社の比較欄 | 現行制度から確認する内容 |
|---|---|
| 一般措置の候補 | 対象株数は総株式数の最大3分の2まで。既保有株式等を含む具体的計算を確認 |
| 贈与税の猶予割合 | 一般措置も対象税額の猶予割合は100%。全株式や全贈与財産が対象という意味ではない |
| 取得方法を相続へ変える場合 | 一般措置の相続税の猶予割合は80%で、贈与の100%と区別 |
| 特例へ向けた前倒し案 | 経営と株式の実際の移転、計画提出、他の条件を期限内に整えられるか |
税額の割合だけを見て、乙社の株価へ80%又は100%を掛けて猶予税額を出さないでください。対象株数、税額の計算、株式以外の取得財産等で結果が変わります。前倒しする場合も、税制の締切だけのために承継を確約せず、事業の準備と実行可能性を確認します。
丙社は贈与直前の役員と一般の継続三年を分ける

丙社は、2026年11月に初めて役員へ就任する後継者へ、同年12月に贈与する予定です。この予定どおりなら、贈与日まで引き続き3年以上の役員であるという一般措置の贈与の条件は満たせません。過去の従業員としての勤務期間を役員歴へ加えないでください。
一方、2025年1月1日から2027年12月31日までの対象となる特例措置の贈与は、役員要件が「贈与の直前に役員であること」とされています。丙社では特例を候補として、就任、代表権、年齢、株式要件等の未確認欄を埋めていきます。
| 丙社でそろえる証拠 | 確認する時点 |
|---|---|
| 役員選任の議事録・就任承諾と登記等 | 予定だけでなく、贈与直前に役員であるか |
| 代表者の選定・先代の退任資料 | 贈与の時に後継者が代表権を持ち、先代が持たないか |
| 本人の生年月日と配分案 | 贈与日に18歳以上か、取得時の議決権等を満たすか |
| 会社と計画の資料 | 会社の条件と期限内の特例承継計画を確認 |
役員に就いた直後なら無条件で適用できるという結論ではありません。相続の場合の役員要件や、相続開始翌日から5か月を経過する日の代表権の条件とも混ぜず、この例では生前贈与の時点へ合わせて照合します。
三社とも未確認資料と継続担当を付けて相談する

三社とも、候補を絞った後に、適用後の管理と納税資金を確認します。一般も特例も納税猶予であり、5年を過ぎれば自動的に税金がなくなる制度ではありません。死亡や次の後継者への贈与等による免除には、別の条件と手続きがあります。
雇用についても、特例は未達時の理由の報告等によって猶予を継続できる仕組みであり、何も確認しなくてよいわけではありません。一般の雇用確保要件と区別し、将来の採用・退職の見通しを検討します。資産管理会社等の条件も適用後に問題になります。
| 会社 | 相談へ持ち込む未確認事項 | 継続の準備 |
|---|---|---|
| 甲社 | 2人の権限・議決権・取得株数と計画 | 各後継者の報告・届出を誰が管理するか |
| 乙社 | 2028予定と一般の対象株数、通常納税との比較 | 予定年の制度再確認と将来売却時の資金 |
| 丙社 | 就任の実行と贈与時の権限・株式条件 | 新体制で資料作成と届出を担う人 |
承継期間中の年次報告・継続届出と、期間経過後の3年ごとの税務署への継続届出を予定表へ残します。近く売却・退任する予定があれば、猶予が続く前提で資金計画を作らず、税理士へ最初に伝えてください。
三行の表に、資料の保管先、確認担当、次の相談日を追加すると、相談後に何を集めるかが明確になります。制度を先に決めるのではなく、未確認の条件を確認してから実行案を固めましょう。
自社に近い行へ予定日と人数を記入し、まだ証拠を確認していない箇所は未確認のまま相談してください。一般と特例の比較を、実際の株式移転と長期の管理を判断する資料へつなげることが大切です。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

後継者が2人なら特例を必ず使えますか
人数だけでは決まりません。各人の代表権、議決権10%以上等、取得株数、計画と会社の条件を確認します。この例は適用の認定結果ではありません。
計画を出せば2028年の初回贈与にも特例を使えますか
現行制度では、計画提出期限と初回の対象取得期限は別です。2028年の初回贈与は現在の特例対象期間外で、将来改正を前提に適用を約束できません。
新任役員では一般も特例も対象外ですか
一般措置の贈与は直近継続3年以上の役員が必要ですが、2025年1月1日以後の対象となる特例贈与は直前役員の条件です。代表権や会社等の他要件は別に確認します。