個人事業主が死亡したときの売掛金 請求と入金と申告を照合する

亡くなった父の取引先から、事業を引き継いだ子の口座へ代金が入ることがあります。その入金を、まとめて子の新しい売上にすると、父の申告や相続財産の一覧と食い違うおそれがあります。
請求書ごとに、売上の権利が確定した時点、死亡時の未収額、実際の回収をつなげて確認します。父の取引と子の取引、作業途中の契約を分けるための台帳を作りましょう。
- 請求日や入金日だけで売上の帰属を決めずに確認できる
- 父の所得と相続した売掛金を対応させられる
- 回収入金を子の新しい売上へ重ねない資料整理ができる
死亡日と売上の確定時点を請求書ごとに確認する

所得税の収入金額は、原則として収入すべき権利が確定した金額で判断します。入金前でも収入になる場合があり、請求書を発行した日だけで決めるものでもありません。
売買、請負、継続サービス等で、権利が確定する時点は契約や取引の性質によって異なります。納品書、検収資料、契約条件を請求番号に対応させます。
父が10月1日に亡くなり、子が事業を引き継ぐ架空例を考えます。次の三取引を、同じ「10月の入金」として処理しないことが出発点です。
| 取引 | 内容 | 先に確認すること |
|---|---|---|
| A | 父が9月20日に納品済みで未入金20万円 | 契約上の権利確定と父の計上状況 |
| B | 子が10月10日に新たに受注・納品した15万円 | 子の事業としての収入時期 |
| C | 父の死亡時に作業途中の契約 | 完成・検収・出来高請求の条件と承継範囲 |
小規模事業者等の現金主義の特例を適法に使っていた場合は、別の確認が必要です。父が青色申告だったことだけで、現金主義を選んでいたと決めないでください。
父の売上と相続した債権を対応させる

Aについて、死亡前に権利が確定し父の売上として計上する条件を満たすなら、父の準確定申告の計算へ対応させます。同時に、死亡時点でまだ回収していない債権として、相続財産の確認も必要です。
父の所得税の売上と相続税の財産は、異なる目的の数字です。父の所得へ入れたから相続財産から外す、又は相続財産に入れるから父の売上を消す、という処理にはなりません。
一方、Bは子が承継後に行った新たな取引です。父の名義が印刷された請求書を誤って使っていても、その名義だけで父の売上とは決めず、実際の契約と仕事の内容を調べます。
Cは、日数で機械的に父と子へ分けないようにします。権利の確定条件、契約変更の有無、父が既に請求できた部分と子の履行部分を、資料に基づいて申告担当へ確認してください。
相続した売掛金の回収を新しい売上へ重ねない

Aの債権を子が取得し、20万円を回収したという前提なら、相続により引き継いだ債権の消込みと、子の新しい売上を分けて帳簿へ反映します。入金額だけを会計ソフトの売上欄へ入れないようにします。
| 台帳の欄 | Aの記入例 | 照合資料 |
|---|---|---|
| 死亡時点の未収 | 20万円という前提 | 父の売掛金元帳 |
| 取得者と回収権限 | 子が取得した根拠を確認 | 遺言・分割資料等 |
| 回収日と金額 | 実際の入金後に記入 | 通帳と取引先の支払明細 |
| 処理の区分 | 承継債権の回収 | 子の開始残高と消込み記録 |
誰の口座へ回収するか取引先へ正式に通知する
回収口座は、子が事業を継ぐという事情だけで勝手に変更しないようにします。遺産分割の状況や回収を行う権限を確認し、取引先が求める資料と手順で変更を伝えます。
振込名義や合算入金で請求番号が分からなければ、支払明細を取り寄せます。A20万円とB15万円が35万円で入っても、父由来の債権回収と子の売上入金を、それぞれの行へ分けて消し込みます。
値引きと回収不能は根拠を残して申告担当へ渡す

回収額が請求額より少なければ、振込手数料、値引き、返品、契約上の争い等のどれに当たるかを確認します。差額を根拠なく経費へ振り替えず、取引先とのやり取りを残してください。
長期間入金がない場合も、滞納していることと回収不能であることは別です。相続時の債権評価では、債務者の状況、担保、破産等の事実や回収見込みを示して税理士等へ相談します。
台帳には、請求番号、契約、権利の確定時点、父の売上計上、死亡時の未収、取得者、回収、差額理由を残します。判断できないCは「確認中」のまま担当と次の照会先を書きます。
父の準確定申告が必要なら、原則として相続開始を知った日の翌日から4か月以内の申告・納税も進めます。売掛金が全部回収できるまで待つこととは、期限を分けて管理しましょう。
関連する資料の準備は、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類も参考にしてください。
よくある質問

死亡後に入金した売掛金は全て子の売上ですか
入金日だけでは決まりません。原則として権利が確定した時点と契約を確認し、父の売上、承継債権の回収、子の新規取引を分けます。
父の準確定申告に計上した売掛金は相続財産から外しますか
所得税の売上と死亡時の財産は別の判定です。父の所得に計上した未収債権も、相続財産として確認します。
死亡日をまたぐ仕事は日割りで分けますか
一律の日割りでは決めません。完成、検収、出来高請求などの契約条件と実際の履行を、資料に基づいて確認します。