理容所や美容所を相続するには 営業と資格の承継を分ける

親が営んでいた理容所や美容所は、開設者の地位を相続により承継できる制度があります。ただし、店を継ぐことと、自分が理容や美容の施術をすることは別です。親の個人資格まで相続するわけではありません。
開設者、施術する理美容師、店を衛生的に管理する管理理美容師を分け、誰がどの役割を担うかを先に整理しましょう。相続人を一人選ぶ同意と、管理者や設備の変更にも、それぞれ確認が必要です。
- 店の開設者と施術資格を別々に考える
- 承継届と戸籍や全員同意の書類を対応させる
- 管理者と設備の変更を承継だけで済ませない
店を引き継ぐ人と施術する人の資格は別に考える

理容師法11条の3、美容師法12条の2は、届出をした開設者について相続があった場合の地位承継を定めています。一方、理容・美容を業として行うには、その人自身の資格が必要です。
例として、母が美容所の開設者と管理美容師を兼ね、母以外に美容師が二人勤務していたと仮定します。免許のない子が経営を引き継ぐことを考える際も、子が母の代わりに施術できるという話にはなりません。
| 役割 | この例で決めること | 相続だけでは足りない点 |
|---|---|---|
| 開設者 | 誰が店の営業を承継するか | 承継の証明と届出 |
| 施術を行う美容師 | 資格のある人が施術を担当 | 親の免許を子が使うことはできない |
| 管理美容師 | 必要な資格を満たす後任者 | 単に美容師免許があるだけで決めない |
常時二人以上の理美容師がいる店は管理者も必要
常時二人以上の理容師又は美容師が従事する店では、管理理容師又は管理美容師を置く必要があります。管理者には、免許を受けた後の三年以上の業務経験と、指定された講習課程の修了が求められます。
上の例では、母の死亡後も美容師二人が従事するため、管理者を誰にするかを確認します。人数を受付スタッフまで含めて数えたり、店長という社内の肩書だけで管理者要件を満たすと考えたりしないでください。
承継する相続人と全員同意の範囲を戸籍で確かめる

相続人が複数いる場合、全員の同意で営業を承継する相続人を選定するときは、その人が開設者の地位を承継します。誰が相続人なのかを戸籍等で確かめたうえで、所管の承継届と同意書を準備します。
姫路市の案内は、相続人が二人以上なら、届出者が開設者の地位を承継することについて全員の同意書が必要で、遺産分割協議とは関係がないと説明しています。設備を取得する協議書だけで、営業者の承継に関する同意も当然に足りるとは決めないことが大切です。
母の相続人が配偶者と子二人で、そのうち一人の子が継ぐ例なら、相続関係と営業を継ぐ人への同意を対応させます。これは、店の賃借権や預金を誰が取得するかを決める作業とも区別します。
承継届の人と施設と相続開始日を分けて記入する
宇都宮市の美容所承継届の記載例には、届出者の住所・氏名・生年月日、被相続人との続柄、被相続人の住所・氏名、相続開始年月日、美容所の名称・所在地の欄があります。現在の経営者情報と亡くなった人の情報を逆に書かないようにします。
| 宇都宮市の様式の区分 | 対応させる資料 |
|---|---|
| 被相続人との続柄と相続開始日 | 戸籍等又は法定相続情報一覧図の写し |
| 承継する人と相続人の同意 | 相続関係と、必要な全員の同意書 |
| 美容所の名称と所在地 | 既存の確認証と届出控え |
理容所は理容所用、美容所は美容所用の様式を使います。これは宇都宮市の記載欄を基にした説明で、実際の提出書類や添付の扱いは所在地の保健所へ確認してください。
既存店舗の承継届と管理者や設備の変更を分けて出す

承継した人は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて届け出ます。単なる開設者の地位承継なら、新たな開設届や使用前の検査は不要とする案内がありますが、承継に伴う変更まで一切不要になるわけではありません。
| 引継ぎ時の状態 | 承継とは別に確認すること |
|---|---|
| 同じ設備で営業を引き継ぐ | 承継届と既存の検査確認証等 |
| 亡くなった人が管理者・従業者だった | 後任者の体制と管理者・従業者の変更届 |
| 改装や増改築もする | 変更の程度により新開設届等が必要か、図面を示して相談 |
確認証の記載と現況が違う店は改装前に相談する
古い確認証と図面しか残っていない場合は、現況との差を先に調べます。承継届で名前を変えれば、未届の改装や設備上の問題が解消するものではありません。工事を始める前に、変更届か新開設の手続きかを保健所へ相談してください。
2023年12月からの事業譲渡の承継制度と、以前からある相続承継も混同しないようにします。母が死亡した日を、第三者へ営業を譲渡した日として記入する手続きではありません。
営業の届出とは別に賃貸借と予約や売掛金を整理する

保健所への届出が済んでも、家賃、リース、従業者との契約、前受けの施術券、予約への対応は残ります。店の営業上の地位を継ぐことと、個々の財産や債務を相続することを分けて整理します。
例えば、既に代金を受け取った施術券があるなら、残回数と利用条件、誰が施術を続けるかを記録します。予約の案内は、後任の体制が決まってから行い、親の顧客情報を不要に持ち出したり処分したりしないようにします。
税務や個人事業全体の引継ぎは、個人事業主が死亡したときの事業承継で、営業者の届出と別に確認できます。
相続人の合意や店舗の財産・契約を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

美容師免許のない相続人は美容所を継げませんか
開設者の地位の承継と、自分が施術する資格は別です。施術する美容師と必要な管理美容師の体制を整え、承継届等を確認します。
設備を相続した遺産分割協議書だけで承継届を出せますか
営業者の地位を承継する人への同意と、遺産の分け方は区別します。相続関係を示す資料や全員同意書等の必要書類を所管へ確認してください。
相続で承継すれば改装後の検査も不要ですか
地位の承継だけの場合と設備を変える場合は別です。構造設備の変更の程度によって新たな開設届等が必要になることがあるため、工事前に相談します。