医療法人の出資持分の相続税評価 定款と払戻し

税額の計算を確かめる資料と計算機

医療法人の定款に、退社時の払戻しは当初の出資額を限度とすると書かれている。それでも、相続税の評価額がその出資額と同じになるとは限りません。何を相続したのかと、現実に払戻しを受けたかを分ける必要があります。

本稿は持分の定めのある医療法人の財産評価を中心に扱います。定款と出資関係の資料を読み、持分を承継する場合と、国税庁の文書回答に示された払戻しの枝を照合します。

この記事でわかること
  • 社員資格と出資持分や払戻請求権を分ける
  • 出資額限度の定款だけで評価額を決めない
  • 現行194の2の株式評価準用へ必要資料を渡す
目次

出資持分の有無と死亡時に取得する財産を先に読む

手続きの期限を確認するカレンダーと資料

医療法人には持分のない形態もあり、すべての医療法人に相続する出資持分があるわけではありません。まず定款で法人の形態と、出資に関する定めを確認します。基金がある場合も、それを持分と同じ財産だと決めつけないでください。

また、医療法人の「社員」は従業員という意味ではなく、社員総会を構成する人の立場です。その資格と出資持分は別に読みます。父が社員だったから子も当然に社員になる、出資が多いからその分だけ議決権を相続する、と判断するものではありません。

分けて読む資料確かめる内容
定款持分の有無、退社・死亡時の扱い、払戻しと残余財産の定め
社員名簿と出資者の記録社員の地位と、誰がどれだけ出資しているか
払戻しに関する書面と入出金持分等を取得するのか、現実に返還された金額があるのか
決算・資産の明細出資持分を税務上評価するための計算資料

医師の資格や診療所の開設手続きを子へ引き継ぐことも別の問題です。診療を続ける手続きが進んでいるからといって、出資持分の相続税評価も済んだことにはなりません。

社員一人一議決権と出資額を混同しない

一般会社の株式数と議決権の関係を、そのまま医療法人の出資額へ当てはめないでください。社員の加入や承継に必要な手続きと、相続財産として取得する権利を、定款と実際の経過から専門家へ示します。

出資額限度という定款でも持分価額は払込額と限らない

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

国税庁の出資額限度法人に関する文書回答は、払戻額等を払込出資額に限る定款であっても、相続人が出資持分等を取得する照会事実では、財産評価基本通達194の2によって評価することを示しています。「出資額限度」という名称だけで当初の金額へ固定できるわけではありません。

説明用に、父の当初出資が200万円で、評価担当者が194の2に基づき計算した承継持分の価額が2000万円だったと仮定します。持分を承継する枝では、定款の限度額200万円があるという理由だけで、2000万円の評価を200万円へ置き換えません。2000万円は例示の計算結果であり、全法人に同じ倍率を掛ける趣旨ではありません。

文書回答の事実と自分の定款を照合する

この回答は、照会された定款や取得関係を前提としています。回答の日付が古いことを理由に直ちに無関係とするのでも、名称が同じだから全件同じとするのでもなく、現行の194の2と具体的な事実を合わせて読む必要があります。

現実の払戻しと持分を受け継ぐ場合を表で分ける

取引記録を保管するファイルと資料

同じ照会は、払戻請求権に代えて出資持分及び社員の地位を取得した場合と、現実に払込出資額の払戻しを受けた場合も分けています。前者は194の2による持分評価の枝で、後者はその照会事実の下で払込出資額による取扱いが示されています。

別々の説明用ケース回答と照合する枝
当初200万円を出資し、持分等を承継する194の2で持分を評価。仮に2000万円なら当初出資へ自動置換しない
請求権に代えて持分及び社員地位を取得する権利名が請求権から始まっていても取得する持分等を評価
出資額限度の照会事実で、当初200万円を現実に払戻し受領する文書回答の実際の払戻しの取扱いを照合
払戻しの約束はあるが未払又は係争中実受領と同じとせず、取得した権利と事実を追加確認

振込があった場合も、誰が、いつ、何の根拠で受け取ったかを確認します。申告に有利な枝へ当てはめるため、実際には残っている持分や未払の権利をなかったことにはできません。

法人に残る他の出資者への利益も別に確認する

持分放棄や少額の払戻しは、法人に残る他の出資者の利益など、別の課税問題を生じさせる場合があります。相続人だけの評価が終われば関係者全員の税務も完了する、と考えず、持分全体の変化を税理士へ伝えましょう。

194の2は株式評価を修正して準用する

合意の内容を確認する契約書類

194の2は、取引相場のない株式の評価規定を一定の読替えなどにより準用します。医療法人の出資を、すべて純資産価額方式だけで評価すると定めているわけではありません。会社の規模や状況に応じた判定を経ます。

類似業種比準価額では「その他の産業」を用いるなどの修正があり、一般会社の配当要素を含む式をそのまま移せません。また、配当還元方式や、純資産価額の計算における一定の80%の取扱いも、通常の株式と同じには適用しません。

決算資料と定款を同じ評価担当へ渡す

出資証書だけで評価額を確定することは難しいため、定款、出資者・社員の記録、決算書と資産内訳、払戻しや承継の書面を一組にします。どの財産を取得したという前提で、どの評価方法を選んだかが分かる計算書を受け取り、申告と対応させてください。

制度の基本は、非上場株式の相続税評価 方法と必要資料も参照してください。

財産や申告について相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

出資額限度法人なら当初の出資額で評価できますか

定款の限度額だけでは決まりません。出資持分等を承継する場合と、照会事実の下で現実に払込出資額の払戻しを受けた場合を分け、現行通達と具体的な取得関係を照合します。

医療法人の出資持分は必ず純資産価額方式ですか

必ずではありません。194の2は、取引相場のない株式の評価規定を修正して準用します。法人の規模や状況を判定し、一般会社と異なる読替えや除外も反映します。

払戻しの約束だけで実際に受け取った場合と同じになりますか

同じとは限りません。約束、未払の請求権、持分等の取得、現実の払戻しを区別し、定款と書面・入出金から取得した財産を確認する必要があります。

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