任意後見の費用 契約時と開始後を分けた予算の立て方

任意後見の費用は、公正証書を作るときだけで終わりません。判断能力が低下して制度を始めるときの申立費用と、開始後に続く任意後見人・監督人の報酬を分けて見込む必要があります。
特に、親族が無報酬で任意後見人になっても、監督人の報酬まで家族の契約でゼロにはできません。契約、開始、継続の三つの時期に分け、本人の生活費を残す予算表を作りましょう。
- 契約と開始と継続で分かれる支出
- 改正後の公証費用と監督人選任費用
- 本人の生活費を残す数年分の予算表
費用を契約と開始の申立てと継続報酬に分ける

任意後見は、本人が判断できるうちに支援の内容と受任者を公正証書で決め、判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると効力が生じる制度です。契約日と、実際に任意後見が始まる日は一致するとは限りません。
| 費用が生じる時期 | 主な支出 | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 契約を結ぶ | 公証と契約登記 書類取得 契約支援の報酬 | 公証役場と依頼先 |
| 効力を発生させる | 監督人選任申立て 診断書 証明書 必要時の鑑定 | 本人住所地の家庭裁判所等 |
| 開始後の支援 | 任意後見人の契約報酬 監督人の報酬 事務実費 | 契約と家庭裁判所の審判 |
見積書の「任意後見一式」が、どの時期と作業までを含むかを確認します。契約書案の作成だけか、公証役場への調整、将来の申立て支援、開始後の継続業務も含むかで比較が変わるためです。
見守りや財産管理の委任、死後事務委任を一緒に契約する場合は、それぞれの報酬と開始条件も分けます。任意後見の監督人が選ばれる前の支援が全て無料になるわけでも、任意後見契約だけで葬儀等まで当然に任せられるわけでもありません。
公証と登記の費用は改正後の金額を確認する

2026年10月に確認した日本公証人連合会の案内では、任意後見契約公正証書の基本作成手数料は1契約1万3,000円です。古い資料にある1万1,000円をそのまま予算へ使わないようにします。
| 契約時の項目 | 現行案内の基本額等 |
|---|---|
| 公正証書作成 | 1契約1万3,000円。所定の紙枚数を超える加算等あり |
| 契約登記の収入印紙 | 2,600円 |
| 公証人の登記嘱託手数料 | 1,600円 |
| 正本/謄本等の交付 | 電磁的記録は1通2,500円 書面は枚数×300円 |
| 郵送等 | 登記用の書留料金などを別に確認 |
基本作成1万3,000円、印紙2,600円、登記嘱託1,600円だけを足すと1万7,200円です。ただし、この三項目の小計が契約時の総額ではありません。証書の交付、枚数による加算、書留、証明書の取得、専門家の支援報酬等が別に関わります。
本人が病床にあり公証人が出張する場合は、病床執務加算6,500円によって作成手数料が1契約1万9,500円となり、さらに日当と交通費等が必要です。単に公証役場へ行かない場合の全件共通額とはせず、出張の事情を伝えて見積もります。
受任者が複数なら、権限を共同で行使する定めの有無などで契約個数の計算も変わります。正本等を電子で受け取る場合も、登記用の謄本1通は書面交付が必要と案内されています。家族人数だけで総額を計算せず、公証役場へ確認してください。
開始の申立てには診断書と裁判所所定の費用がかかる

任意後見を開始するときの監督人選任は、契約を登記した手続とは別です。裁判所の全国案内は、申立手数料の収入印紙800円、登記手数料の収入印紙1,400円に、裁判所ごとの郵便料等が必要としています。
この1,400円は、契約作成時に公証人へ支払う登記嘱託手数料1,600円とは異なります。同じ登記関連の言葉でも、誰のどの手続に払う額かを分けてください。
申立てには、任意後見契約公正証書の写し、後見等の登記事項証明書、本人の戸籍、所定の診断書、財産資料などを用意します。診断書や証明書の作成・取得費、必要とされた場合の鑑定費用も見込む必要があります。申立てを専門家へ頼む報酬は、これらの実費とは別です。
準備が必要になった段階で本人の住所地の家庭裁判所の現行書式を確認します。契約時に子が自分の地域で聞いた金額や古い切手内訳を、何年後の申立てにもそのまま使えるとは考えないようにします。
本人の生活費を残したうえで数年分の予算を作る

任意後見人への報酬は本人と受任者の契約で決めます。親族が無報酬で担う契約も検討できますが、仕事の範囲、交通費等の実費、長期に続けられるかを合わせて話し合います。
一方、任意後見監督人の報酬は、報酬付与の申立てを受けて家庭裁判所が付与の当否と金額を決め、本人の財産から支払います。全国一律の定額が毎月自動請求される制度ではありません。家族が契約で監督人の報酬を免除することもできないため、費用が生じる前提で余裕を見込みます。
| 継続予算の欄 | 確認する内容 |
|---|---|
| 本人の収入 | 年金 賃料等の継続性と手取り |
| 本人の生活費 | 施設/介護/医療 税 保険 修繕等 |
| 支援の費用 | 契約報酬 監督人報酬 実費を別行に |
| 一時的な支出 | 申立て 入院 転居 不動産管理等 |
| 数年後の残高 | 支援期間が延びても生活費を確保できるか |
計算方法の例として、継続費用を仮に月2万円とすると年24万円、5年で120万円です。月4万円なら年48万円、5年で240万円となります。これは費用の相場や裁判所の予測額ではなく、仮定した月額を年単位で比較する算数の例です。実際の契約額と監督人報酬の見込みへ置き換えます。
本人の財産が少ない場合は、自治体等の支援制度の対象と範囲も照会できます。ただし、任意後見や全費用が助成対象になるとは限りません。利用できると決まっていない助成を収入として先に計上せず、担当窓口で確認してください。
総額を比べる際は、契約時だけ安いかよりも、本人に必要な支援が続くかを見ます。任意後見が始まってから本人の状況が変わる可能性も含め、契約内容と資金計画を専門家へ示して相談しましょう。
見積もりを依頼するときは、任せたい仕事、受任者、契約を併用する予定、本人の収支を伝えてください。発生時期と支払先を分ければ、最初の契約費用と長期の生活資金を同じ予算で確認できます。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

公正証書の基本手数料だけ払えば終わりですか
終わりではありません。契約登記、証書交付、郵送等のほか、専門家へ依頼する報酬、将来の監督人選任と開始後の費用を分けて見込みます。
子が無報酬なら任意後見の月額費用はゼロですか
任意後見人への報酬を無償としても、監督人の報酬や事務実費が関わります。監督人の報酬は家族の契約ではなく、家庭裁判所が決めます。
監督人選任の登記1,400円と契約時の1,600円は同じですか
別の費用です。1,400円は裁判所への監督人選任に関する登記手数料、1,600円は契約時の公証人の登記嘱託手数料です。