相続税の税務調査はいつ来るか 調査の流れと確認される財産

相続税の税務調査は、申告した財産や税額が適正か、申告が必要なのに提出されていない相続がないかを確認する手続きです。税務署から連絡があったことだけで、申告漏れや追加の税金が確定するわけではありません。
まず、税務調査としての連絡なのか、申告内容の自主的な確認を求める行政指導などなのかを確かめます。そのうえで、申告書の控えと財産資料を照合し、必要なら税理士へ対応を相談します。
この記事では、調査の時期の考え方、確認される財産、通知から結果説明までの流れを整理します。何年後なら必ず来ないという判断より、申告の根拠を後から説明できる状態にしておくことが大切です。
- 相続税の実地調査と電話や文書の照会の違い
- 事前通知から結果説明までの流れと確認される財産
- 資料の準備と修正申告や追加税額を検討する際の注意点
相続税の税務調査と税務署からの照会は区別する

自宅などで財産資料を確認する実地調査のほか、電話や文書、来署依頼などで申告内容を確認する接触もあります。連絡を受けた時は、相手の所属と担当者名、連絡の目的を記録してください。
連絡の目的と調査か行政指導かを確かめる
税務署が税額を認定する目的で行う調査と、納税者に自主的な見直しを求める行政指導では、手続きの位置付けが違います。電話が来たという形式だけで、どちらかは判断できません。
提出した申告書のどの項目を確認する連絡か、回答に必要な資料は何か、回答の期限はいつかを確かめます。代理を依頼している税理士がいる場合は、通知や照会の内容を共有してから回答方法を相談します。
調査対象の割合と申告全体の確率を混同しない
国税庁の令和6事務年度の全国公表資料では、相続税の実地調査は9512件、簡易な接触は21969件でした。令和6事務年度は2024年7月から2025年6月までの期間で、公表資料は2025年12月のものです。
実地調査は、申告額が少ないと想定される事案や、申告が必要なのにしていないと想定される事案などを対象に実施されています。調査対象で申告漏れ等が見つかった割合を、そのまま全家庭の申告漏れの確率として読むことはできません。
同じ一年の申告件数と調査件数を単純に割っても、調査が過去の申告を含むため、その年の申告者が調査される確率を正確に示すわけではありません。特定の財産額以下なら調査がない、という結論にも使えません。
参照元:国税庁|令和6事務年度における相続税の調査等の状況 / 国税庁|調査手続の実施に当たっての基本的な考え方
税務調査が来る時期は一律には決まっていない

専門家の記事では、申告から1〜2年後に連絡が来ることがあると説明されています。ただし、これは実務上の目安です。必ずその期間内に調査される、2年過ぎれば対象外になるという規則ではありません。
時期の目安を資料を捨てる期限にしない
申告から時間がたってから、財産や資金の移動について確認される場合もあります。自分の家庭について連絡が来る年や月を予測するより、申告書と評価資料、取引履歴、贈与の記録を保管します。
税務署が税額を更正・決定できる期間の制限と、財産の経緯を調べる際に必要になる古い資料の期間は別です。贈与や預金の原資を確認するため、死亡前の取引を調べることもあります。
申告の時期、相続開始の時期、不正の有無、制度の特則によって扱いが変わるので、「過去5年の通帳しか関係しない」と一律には決めません。必要な保管期間は税理士へ確認してください。
実地調査には原則として事前通知がある
実地調査は原則として事前に通知され、日時、場所、対象となる税目や期間、確認する帳簿書類などが伝えられます。予定が合わない場合は、その事情を担当者へ申し出て調整を相談できます。
一方、証拠の隠蔽などを防ぐ必要がある場合には、事前通知を行わないこともあります。すべての調査が突然の訪問でも、すべてが必ず事前連絡付きでもありません。
税務代理人への通知について同意している場合などは、税理士への通知で足りる取扱いがあります。依頼済みの税理士がいる家庭は、自分に直接電話がないことだけで調査がないと判断しないでください。
調査では預金の動きと財産の帰属や評価を確認する

申告書へ記載した金額だけでなく、記載されていない財産がないかも確認されます。資料を整理する時は、死亡日時点の財産と、生前にその財産がどう形成され移動したかを分けます。
大きな現金の引出しは使い道を資料で説明する
死亡前に預金を引き出しても、使わず自宅へ残していたなら、その現金は相続財産となります。口座残高を減らしたことだけで、課税対象の財産が減ったとは限りません。
例えば、父が300万円を引き出し、うち80万円を医療や生活費へ支払い、残りを自宅で保管していたという仮定なら、出金額の全額を支出済みとは扱えません。支払いの内容と手元に残った資金を、領収書や家族の記録で確認します。
この例は医療費80万円を一律に死亡時の債務として控除できるという意味ではありません。生前にすでに払った生活費と、死亡時に残っていた未払金は別に整理します。
家族名義の預金と生前贈与は別の論点を確認する
子や孫の名義でも、実質的には親が持っていた預金は、親の相続財産に含まれる場合があります。誰が資金を出し、誰が管理し、贈与の合意があったかを確認します。
有効に成立した贈与でも、一定の期間と条件に該当すると相続税の計算へ加算する場合があります。贈与契約書があるから、財産の帰属と加算の確認を両方省けるわけではありません。
確認をする時は、口座ごとに入金の原資、管理者、送金の目的を整理します。親が残した一覧にない金融機関がある場合は、親の財産の調べ方と照会先も確認してください。
不動産と保険と海外財産も申告内容に照らす
土地の面積、道路との関係、賃貸や居住の状況などは評価額に影響します。自宅の土地の特例も、取得した人と利用の条件に合っているかを確認します。
生命保険や退職金、契約上の権利など、通帳へまだ入金されていないものも課税に関わる場合があります。国外の預金や証券、不動産を持っていた家庭では、国籍や居住歴などに応じて課税範囲を確認します。
国内口座に入っていない、現物が日本にないという理由だけで除外しないでください。財産の範囲や評価に迷う項目を、資料と一緒に税理士へ伝えます。
調査当日はわかる事実と未確認の点を分けて答える

調査では、亡くなった人の仕事や生活、家族関係、財産管理などの聞き取りと、通帳や契約、現物などの確認を行います。調査の日数や質問の順序は案件ごとに違います。
当時の事情は記憶だけで断定しない
誰が入金したか、何に使ったか、家族が口座を知っていたかなどを聞かれた時は、資料から確認できることと自分の記憶を分けます。わからない点は、確認してから回答すると伝えてください。
家族が同じ説明をするために、事実と違う話をそろえる必要はありません。知っていた時期や関わっていた範囲が人によって違うなら、その違いをそのまま記録します。
資料を示した場合は、何を見せたかを控えておきます。追加の資料を求められたら、対象と必要な範囲、回答予定を担当者と確認すると、次の作業を進めやすくなります。
質問の記録は内容を読んでから確認する
質問への回答を記載した書類について確認を求められた時は、自分が話した内容と一致しているか読みます。推測を確定した事実のように記録していないか、日時や金額に違いがないかを確かめてください。
認識と違う部分があれば、その点を伝えて訂正や補足を確認します。内容が理解できない場合は、税理士へ相談します。税理士が立ち会っていても、家族だけが知る当時の事実については本人の説明が必要となることがあります。
調査結果は根拠を確認して修正申告や納付を検討する

調査後、申告内容を直す必要があると説明された場合は、対象財産、金額、計算、法的な理由を確認します。指摘された額と、追加で納める税額は同じではありません。
指摘された財産を加えて税額を再計算する
例えば、漏れていた預金500万円が見つかったとしても、それをそのまま500万円の追徴税として支払うわけではありません。課税価格、基礎控除、法定相続分による計算、実際の取得額、特例などを反映して税額を算定します。
追加税額がある場合、修正申告などの対応と納付を進めます。相続人ごとに税額が変わることもあるため、誰の申告をどのように直すかを確認してください。税金を多く申告していた場合は、更正の請求など別の手続きを検討します。
加算税は修正の時期と経緯によって変わる
税額を少なく申告していた場合には過少申告加算税、申告していなかった場合には無申告加算税が問題になります。隠蔽や仮装がある場合は、重加算税の対象となることがあります。
自主的に直せばいつでも加算税がゼロになるわけではありません。調査の通知前か後か、税務署が更正などをすることを予知していたかなどによって扱いが違います。通知を受けた日と経緯も記録して税理士へ伝えてください。
納付が遅れた分については延滞税も確認します。税額の本体、加算税、延滞税を分けると、追加負担が何によって生じたかを把握できます。
納得できない指摘は申告する前に内容を相談する
修正申告は納税者自身の申告です。提出した後に自分の申告内容へ直接不服申立てをすることはできず、税額が過大であれば一定期間内の更正の請求などを検討します。
税務署が行った更正や決定などの処分には、不服申立てができる場合があります。両者は異なる手続きなので、事実や評価に納得できない点があれば、修正申告を提出する前に理由と資料を整理して相談してください。
参照元:国税庁|税務調査手続に関するFAQ / 国税庁|不服申立てができる場合とできない場合
申告時の資料と財産を調べた記録を保管しておく

税務調査への準備は、何も指摘されない説明を作ることではありません。申告した内容と、判断に使った資料をたどれるようにします。申告が不要と判断した家庭も、その根拠は残しておきます。
申告書と評価資料と送金の説明をまとめる
| 資料 | 後から確認する内容 |
|---|---|
| 申告書と提出の控え | 記載財産と税額 特例の適用 |
| 残高証明と取引履歴 | 死亡時の残高 生前の資金移動 |
| 不動産の評価資料 | 所有持分 道路 利用や居住の状況 |
| 贈与契約と送金記録 | 契約の時期と財産管理 |
| 債務と葬式費用の資料 | 内容 金額 負担した人 |
紙の資料と電子データが分かれている場合は、保管場所を一覧へ残します。家族の端末にだけある記録は、将来も参照できる方法を確認してください。暗証番号などを財産一覧と一緒に広く共有する必要はありません。
税理士へ頼んでも調査がないと保証されるわけではない
税理士が作成する書面添付制度には、申告書の計算や確認の過程を説明する役割があります。意見聴取で疑問が解消され、実地調査に至らない場合もありますが、書面添付が調査の省略を保証するわけではありません。
税理士へ調査対応を依頼する時は、通知内容、申告書、財産の資料、未確認事項を共有し、立会いなど依頼する範囲と費用を確認します。最初に通知の内容を記録し、資料と申告を照合することから進めましょう。
参照元:国税庁|書面添付と意見聴取制度
相続税の税務調査でよくある質問

申告から2年たてば相続税の調査は来ませんか
2年を過ぎたら対象外という規則はありません。調査の時期は案件ごとに違い、更正等の期間制限と必要な資料の確認範囲も分けて考えます。
税務署から電話が来たら追加の税金が確定していますか
電話だけで確定したとは限りません。税務調査か行政指導などかを確認し、求められた内容と申告資料を照合します。指摘があれば根拠と税額を確認します。
税理士に申告を頼めば税務調査を受けませんか
税理士へ依頼しても、調査を受けない保証はありません。申告の根拠を整理し、連絡が来た時に通知内容と資料を共有して対応を相談します。