特定一般社団法人等の相続税 理事割合と純資産の判定

一般社団法人や一般財団法人には、理事が亡くなった際、法人が財産を受け取っていなくても相続税が課される制度があります。ただし、すべての法人やすべての理事の死亡に適用するものではありません。
対象となる法人かを確かめた後、死亡前の理事の割合と、純資産を割る死亡後の人数を分けて調べます。父・妻・親族でない理事の3人で運営する法人を例に、同じ人数表を使い回せない理由を説明します。
- 課税対象となる法人と除外される法人を分ける
- 死亡前の過半数と過去5年の理事履歴を調べる
- 死亡直後の同族理事数からみなし遺贈額を求める
法人が何も受け取らなくても理事の死亡で課税される場合がある

相続税法66条の2は、一定の特定一般社団法人等の理事等が死亡した場合に、法人の純資産の一部を、その人から遺贈で取得したものとみなします。法人を個人とみなして相続税を課すため、個人名義の持分がないことだけでは課税を否定できません。
一方、公益社団・財団法人、法人税法上の非営利型法人など、法令に定める除外法人があります。まず法人の類型と要件を調べ、対象となる一般社団法人等であっても、後で述べる理事の割合を判定します。
非営利という呼び名と非営利型法人の要件を分ける
利益配当をしていない、活動を非営利と呼んでいるという事情だけで、税法上の非営利型法人に該当するとは限りません。定款と運営の実態を担当者へ示します。一般財団法人も含む制度であり、一般社団法人だけの問題ではありません。
死亡した人は現職の理事だけでなく、理事でなくなってから5年を経過していない人も含まれます。退任済みだから調査不要とせず、退任の日付も確認してください。
死亡直前の過半数か過去5年の合計3年を調べる

特定一般社団法人等の判定は二つの条件のいずれかです。一つは、死亡直前の同族理事が理事総数の2分の1を超えること。もう一つは、死亡前5年以内に、その割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上あることです。
例として、死亡直前の理事が父、妻、特殊な関係もない第三者の計3人で、父と妻が同族理事に当たると仮定します。直前の割合は2人÷3人で過半数です。2分の1ちょうどを、超える場合へ含めないようにします。
| 調べる場面 | 使う情報 | この例での考え方 |
|---|---|---|
| 死亡直前の判定 | その時の理事総数と同族理事数 | 父と妻の2人÷総数3人で2分の1超 |
| 死亡前5年の判定 | 交代の前後ごとの人数と期間 | 過半数の期間を合計。直前だけ変えても終わらない |
| 退任した人の死亡 | 理事でなくなった日 | 5年経過の有無も別に確かめる |
同族理事には親族以外の特殊関係も含まれる
同族理事には、被相続人、配偶者、三親等内の親族のほか、施行令で定める特殊な関係のある人も含まれます。親族の氏名だけを抜き出して終えず、役員や使用人等の関係も確認します。社員や評議員の総数を、そのまま理事の総数へ使うものではありません。
過去の割合は、当時の理事構成で調べます。現在の名簿だけで5年前まで同じ割合とせず、選任・退任等の日付を登記、議事録、役員履歴からつなぎます。
純資産を割る人数は死亡直後の同族理事数に1を加える

ここで、先ほどの割合判定とは基準時点が変わります。みなし遺贈取得額を計算する分母は、死亡直後の同族理事数に1を加えた数です。死亡直前の理事総数や、父の法定相続人の数で割る計算ではありません。
先ほどの例で、同時に死亡した理事等はなく、父の死亡直後の同族理事が妻1人だけであるとします。法令に従い評価した純資産が6,000万円なら、分母は1+1=2、みなし遺贈取得額は6,000万円÷2=3,000万円です。
| 数値 | 使う目的 |
|---|---|
| 死亡直前の同族2人/総数3人 | 特定一般社団法人等に当たるかの判定 |
| 死亡直後の同族1人+1=2 | 純資産を割ってみなし遺贈取得額を求める分母 |
| みなし遺贈取得額3,000万円 | 税額計算へ進める対象額。3,000万円の税金という意味ではない |
法定相続人の人数をこの分母へ入れない
父に子が二人いても、その二人を当然にこの分母へ加えるわけではありません。また、同時死亡がある場合などは通達に追加の取扱いがあるため、この単純例とは分けて確認します。
法人が父から実際に遺贈を受ける財産についても、同じ純資産へ重複して入れない扱いがあります。みなし遺贈と実際の遺贈を、財産の由来ごとに区分して税額計算へ渡します。
帳簿の純資産を税務の評価へ組み替えて相談する

純資産は、貸借対照表の数字を無条件に転記するものではありません。死亡時の資産を所定の時価で評価し、死亡時に存在する確実な債務等を法令に沿って控除します。単なる引当金を、すべて債務として差し引くこともできません。
信託の受託者として持つ財産債務や、死亡した理事から実際に遺贈で取得する財産は別の整理が必要です。基金、未確定の税額、死亡により支給する給与等についても、施行令と通達に従って確認します。
法人の納税分と相続人の実取得を区別する
法人のみなし遺贈額は、同じ被相続人に係る相続人・受遺者の取得財産等と併せた相続税の計算に関わります。法人の3,000万円を子が実際に相続した預金と扱ったり、法人を法定相続人の一人として人数に加えたりしないようにします。
法人に過去に課された一定の贈与税・相続税について控除がある場合もあります。定款、役員の履歴と関係図、死亡日現在の財産債務、過去の課税資料をそろえ、法人が納める税額と個人が納める税額を一緒に確認してください。
法人へ財産を渡すこと自体を検討している場合は、遺贈寄付の基本と税金も参考にしてください。本稿の理事死亡時の課税とは、対象となる事実が異なります。
個別の契約や評価の相談先は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

一般社団法人はすべて理事の死亡で課税されますか
すべてではありません。公益法人や非営利型法人などの除外を確認し、対象となる法人について、理事等の死亡と同族理事の割合などの条件を判定します。
理事を退任していれば課税の対象外ですか
理事でなくなった日から5年を経過していない人も含まれます。退任日と死亡日を確かめ、法人の対象範囲や過去の理事構成も併せて判定します。
死亡前の理事総数で純資産を割ればよいですか
総数では割りません。原則として死亡直後の同族理事数に1を加えた数で純資産を割ります。死亡直前の過半数判定とは時点も使う人数も異なります。