古物商が亡くなったら 許可証の返納と家族の営業再開

個人の古物商が亡くなった場合、店を相続することと、古物商の許可を引き継ぐことは別です。許可証を返す手続きを急ぐ一方、家族が店を続けるには、新たな許可の準備が必要になります。
父の中古工具店を母と長男が整理する架空例を使い、返納する人、10日の期限、理由書の記入欄、在庫と預かり品の扱いを順に確認します。
- 個人名義と法人名義の許可の違い
- 死亡時の返納義務者と10日の期限、返納理由書の記入
- 在庫の整理と家族の新規許可を分ける方法
父個人の許可と会社名義の許可を分ける

最初に許可証の「氏名又は名称」を読みます。父個人が許可を受けていた場合、店の在庫や設備を相続しても、子が父の許可番号で営業を続けることはできません。亡くなった人の許可証を返すことと、次に営む人が新しく許可を受けることを分けます。
一方、許可が株式会社等の法人名義で、父は代表者だった場合は、法人そのものが死亡したわけではありません。代表者や役員、管理者等の変更として必要な手続きを管轄警察署へ確認します。個人事業の死亡と同じ理由で法人の許可証を返してしまわないでください。
例えば、父個人の許可で中古工具店を営んでいて、同居する母と別居の長男が残された場合を考えます。返納を行う人、店の財産を取得する人、今後の営業者が、すべて長男になるとは限りません。まず許可名義、父の死亡日、主たる営業所、営業を続けたい人を一枚に書き出します。
同居親族等が10日以内に許可証と返納理由書を出す

許可を受けた人が亡くなったとき、古物営業法8条3項は、同居の親族又は法定代理人が遅滞なく許可証を返納すると定めています。施行規則7条の期限は、返納理由が発生した日から10日以内です。「死亡を知った日から」や「遺産分割が終わってから」と置き換えないようにします。
この例では、同居の母が法定の返納義務者に該当するかを確認し、主たる営業所を管轄する警察署へ連絡します。別居の長男が今後の店を継ぐ予定でも、その予定だけで返納義務者と同じになるわけではありません。同居親族等がいない場合や、本人が窓口へ行けない場合も、家族の状況を具体的に伝えて提出方法を相談してください。
| 返納理由書の欄 | 書く内容と照合先 |
|---|---|
| 届出者の氏名・住所 | 提出する人の情報。亡くなった父の氏名をすべての欄へ転記しない |
| 許可の種類・番号・年月日 | 父の許可証に記載された古物商の区分、許可証番号、許可年月日 |
| 許可証の氏名又は名称 | 許可を受けていた父の氏名 |
| 返納理由の発生年月日 | 死亡日。提出日と分けて記入する |
| 返納理由 | 「許可証の交付を受けた者が死亡した」の選択肢 |
千葉県警察の記載例では、死亡は返納理由の4番で、法8条3項による返納として記載する形です。管轄の現行様式を取り寄せ、受理年月日等の警察が記入する枠には書かないよう確認します。
警視庁の案内では、返納理由書と許可証のほか、ホームページを利用した取引をしていた場合の該当届出書が示されています。地域の提出方法と、死亡や続柄を確認するために求められる資料を窓口へ確かめ、提出した控えと返納日を残します。
許可証が見つからない場合も先に相談する
許可証の所在が分からなくても、見つかるまで死亡の連絡を延ばす理由にはなりません。死亡日、許可番号が分かる控え、探した場所を伝え、紛失している場合の記載や提出物を確認します。既に10日を過ぎていても放置せず、管轄署へ現在の状況を説明してください。
在庫の所有と営業再開の許可を別々に決める

店にある物がすべて父の遺産とは限りません。例えば、中古工具の販売在庫、修理のため客から預かった工具、販売を委託された品を、仕入帳や預り証、委託契約で分けます。客の所有物を、相続した在庫と一緒に売ってしまうことは避けます。
| 店にある物 | 所有や権限を調べる資料 | 次に決めること |
|---|---|---|
| 父が買い取った販売在庫 | 仕入帳、請求書、支払記録 | 誰が取得するかと、具体的な処分方法 |
| 客からの預かり品 | 預り証、修理受付票、連絡記録 | 所有者への連絡と返却方法 |
| 委託販売中の品 | 委託契約、預り台帳、精算記録 | 売却や返却を指示できる人と未精算額 |
古物営業法2条には、古物の売却だけを行うもの等を古物営業から除く定めがあります。ただし、それを根拠に、父の店にある物をすべて自由に売買できるとは判断しないでください。自分の所有物を処分する行為なのか、新たな買い取りや委託を受けて商売を続けるのかで、確認する事実が異なります。
長男が在庫を取得して店を再開するなら、販売予定、買い取りの有無、委託品の有無を管轄署へ説明します。新しい許可が必要な取引を、父の許可の名義を借りて続けることはできません。許可待ちの間は、新規の買い取りや受託の受付を止める範囲も含めて相談します。
新規許可の準備と父の取引記録を引き継ぐ

営業を続ける人は、本人の欠格事由、営業所や管理者、インターネット販売の予定等を整理し、自分の許可申請を準備します。同じ店舗を使う場合でも、父の申請書をそのまま子の名へ書き換えれば足りるわけではありません。現行の申請書と必要資料を、営業所の所在地を管轄する警察署へ確認してください。
返納と新規申請の予定が見えたら、顧客への連絡、預かり品の返却、未収代金と未払金、店の賃貸契約、取引帳簿の保管担当を決めます。新しい許可申請の控えと、父の許可証を返した控えは、別の手続きとして保管します。
営業財産の調査では、店の現金や商品だけでなく、父の個人口座と借入れも並べます。調べ始める際は、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類も参考になります。借金が分からず相続放棄も検討している場合は、在庫を売るなどの処分へ進む前に弁護士等へ相談し、財産を扱ってよい範囲を確かめてください。
手元の資料と未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

古物商の許可は家族が相続できますか
個人名義の古物商許可を、そのまま相続人が使うことはできません。亡くなった人の許可証の返納と、店を続ける人の新規許可を分けて進めます。
古物商が亡くなったとき許可証は誰が返しますか
法律上は同居の親族又は法定代理人が返納します。期限は返納理由の発生した日から10日以内です。同居親族等がいない場合や提出が難しい場合も、管轄警察署へ早めに相談してください。
許可証が見つからなくても届出を待ってよいですか
見つかるまで連絡を待たず、死亡日や許可番号、紛失の状況を管轄署へ伝えます。代わりに必要な記載や提出資料を確認し、既に期限を過ぎている場合も放置しないでください。