セットバック部分の相続税評価 対象面積と評価減の確認方法

相続した土地の前の道が狭くても、それだけで敷地全体の評価が下がるわけではありません。セットバックによる評価減を検討するのは、建て替えなどの際に道路のために後退が必要な部分です。
その範囲は、道路の種類や中心線の位置によって変わります。相続税の計算を始める前に、自治体の建築担当窓口で道路の扱いを確認し、測量図と照らし合わせることが出発点になります。
- 対象は単に道が狭い土地ではなく道路後退の必要がある宅地
- 通常評価額から控除する金額は必要部分の面積割合に対応する
- 道路台帳や測量図を使って面積と既存の私道部分を区別する
セットバック部分は道路の判定から確認する

道路の見た目だけで判断しない
セットバックは、建て替え時などに敷地の一部を道路側へ提供するため、建築可能な範囲を後ろへ下げることをいいます。相続税評価の基本通達24-6は、建築基準法42条2項の道路に面し、将来道路敷きとして提供する必要がある部分を持つ宅地を対象にしています。
舗装された道でも、その区間の指定や幅員によって扱いは変わります。道幅を自分で測った結果だけで、2項道路であることや後退線まで確定させることはできません。所在する自治体で道路種別、中心線、必要な後退位置を確かめます。
道路の反対側に川や崖がある場合などは、一般的な中心線からの後退という説明がそのまま当てはまらないこともあります。敷地の境界と道路の境界も別に確認し、どの線からどの線までが対象かを図面に落とします。
自治体への問い合わせでは地番も用意する
住居表示と土地の地番は同じとは限りません。所在地が分かる地図に加え、登記事項証明書などで地番を用意し、対象となる道路区間を示して問い合わせます。道全体ではなく、その敷地の前の部分について確認することが必要です。
聞く事項は道路の種別、道路幅員と境界の資料、中心線や後退線の扱い、過去の協議の有無です。過去の建築確認時の資料がある場合は、その内容と現況に違いがないかを確認します。
回答を受けた日と担当部署、参照した図面をメモしておきます。口頭の説明だけで必要面積を概算した場合は、どこが未確認かを明らかにして、正式な評価までに埋めます。
評価減は敷地全体ではなく後退が必要な部分に対応する

70パーセントは土地全体の減額率ではない
通達による控除は、後退が不要とした場合の宅地の価額に、セットバックを必要とする部分の地積割合と70パーセントを乗じて求めます。したがって、必要部分を通常の30パーセント相当で評価するという見方ができます。
例として、ほかの調整を済ませた通常の宅地価額を3,000万円、総面積を150平方メートル、後退が必要な部分を15平方メートルとします。このとき控除額は3,000万円×15÷150×70パーセント=210万円、評価額は2,790万円です。計算の仕組みを示す仮定であり、実際の税額ではありません。
敷地全体が70パーセント下がるわけでも、相続税そのものが70パーセント減るわけでもありません。必要面積が変われば控除額も変わるため、補正率を探すより先に面積の根拠をそろえる必要があります。
評価減と建築上の利用制限を分ける
相続税評価を下げられることと、建物を建てられる面積や売却条件は別に検討します。相続税の評価明細で一定額を控除しても、将来の工事や道路整備が完了したことにはなりません。
買主が求める後退の手続き、塀の移設や舗装の費用があるなら、売却時の手取りや日程に反映します。その支出をすべて相続税評価から追加で引けるという意味ではないことも押さえます。
建て替えを予定していなくても、相続開始時点で将来の後退が必要な部分があれば規定の検討対象になります。すぐ建て替える予定がないから対象外、という判断にもしないようにします。
| 項目 | 確認内容 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 名義と権利 | 相続する範囲を確認 |
| 公図と測量図 | 位置と寸法 | 現況と違う箇所を確認 |
| 路線価図や倍率表 | 評価方式と地区 | 相続した年の資料を使用 |
| 自治体の資料 | 道路や区域の指定 | 適用する規定の前提を確認 |
| 現況写真と契約 | 利用状況と権利 | 相続開始時の状態を記録 |
必要面積を図面と自治体の資料で確かめる

道路後退線が分かる資料を集める
公図、地積測量図、境界確認資料、過去の建築確認関係書類などを集めます。公図は位置関係の参考になりますが、必ずしも現地の寸法を精密に示す図面ではありません。面積を判断するには測量資料などと組み合わせます。
自治体で取得した道路台帳や指定道路図と、敷地の測量図を重ね、すでに後退している部分と今後後退が必要な部分を区別します。門や塀がどこにあるかだけでなく、現況写真も確認資料になります。
測量図と登記面積が違う、隣地との境界が決まっていない、後退線の資料が残っていないといった場合は、その不明点を先に示します。土地家屋調査士などによる境界や測量の確認と、税理士による税務上の評価は役割が異なります。
私道の評価やほかの補正と混同しない

同じ道路部分を二重に評価減しない
すでに道路として使われている部分は、今後セットバックする予定の部分と同じ扱いになるとは限りません。私道の評価は通行状況などによって判断する別の規定です。私道だからという理由で、さらにセットバックの控除を機械的に重ねないようにします。
不整形地、間口の狭さ、奥行きなどの補正が関係する土地もあります。どの価額にどの調整を行うかを順序立てて検討し、同じ不利益を重ねて引いていないかを確認します。
倍率地域でも後退部分の扱いを検討する場面がありますが、固定資産税評価額に何が織り込まれているかを確認する必要があります。路線価方式の式を、倍率方式の価額へそのまま移すことは避けます。
既に私道として分かれている場合
登記上道路と書かれているかだけでなく、実際にどのように通行され、どこまでが宅地として使われているかを確認します。相続した土地に道路部分の持分が含まれていれば、敷地本体と合わせて漏れなく把握する必要があります。
道路として提供済みの部分を、今後後退する宅地部分として再び控除することは避けます。反対に、登記の地目が宅地のままでも、現況が道である場合は、資料を確認して正しい評価へつなげます。
税理士へ相談する際には、私道、未後退、後退済みという三つの範囲を色分けした図面を示すと、適用する規定の取り違えを防ぎやすくなります。
申告に残す資料と評価の説明をそろえる

申告書と図面の説明を一致させる
土地の評価明細書には、評価単位、総面積、後退が必要な面積、算定した控除額がつながるよう記載します。計算表だけが残っていて面積の根拠がない状態では、後から評価を説明しにくくなります。
資料のどの部分を見て判断したか、自治体に何を照会したか、現況と資料に違いがあるかを短いメモにします。相続開始時の状態を前提にするため、相続後に工事や測量をした場合は、その時期も分けて記録します。
まずは土地の所在地と地番が分かる書類を持ち、自治体の建築担当窓口へ道路の種別と後退の要否を問い合わせてください。その回答と測量図があれば、評価を相談する際にも確認すべき点が具体的になります。
土地の評価額が分かったら、ほかの財産や債務と合わせて相続税の基礎控除と申告要否を確認します。セットバック部分の評価減だけで申告の要否は決まりません。
よくある質問

道幅が4メートル未満なら必ず減額できますか
道幅だけでは決まりません。道路の法的な扱いと、実際に後退が必要な範囲を自治体の資料などで確認します。
土地全体を70パーセント減額できますか
できません。通達の計算では後退を必要とする部分の地積割合に応じて控除額を求めます。
すでに後退した部分も同じ計算ですか
現況が道路か敷地かなどによって検討が変わります。私道評価との重複を避け、相続開始時の利用状況を確認します。